置き手紙
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「ふぁ……爺さんも了承してくれて助かった。後はアイツ次第……連日で来ないでくれよ。逆にネスティスが文句を言いに来る事は……ないよな」
今日もイズン支部の協会へ出勤。ラーンの件が早々に片付いてくれる事を祈りつつも、不安材料は残っている。
受付嬢がネスティスに別の相談者が俺に来た事を教える可能性がある。相談事は秘密厳守であり、ないと思いたい。けど、フレア辺りは……フレアはその時は所長室の方へか?
「爺さんが本当に奴を弟子入りを許可するか次第だからな。よからぬ事も考えてはいそうな感じもあるけど」
俺の提案を渋々了承したものの、最後には怪しい笑みを浮かべていた気もする。
結局、爺さんが今やってる事を聞かなかったが、それに関係しているのか?
「まずはアイツの事を聞かないとだな。……バレてるぞ」
近くを歩いていた数人は『バレてるぞ』の言葉に?な顔をしながら通り過ぎていくが、視線の先、離れた場所で驚いた顔をして、立ち止まっている相手がいる。
昨日、俺をつけていた少年。盗賊のジルオールだ。
盗賊の情報網で俺の家を知ったのか、隠れもせずに家の前で堂々と立っていた。
昨日と同じ服装。見えているから、【気配遮断】も使ってない。変装さえしてない。
目にした時は驚いたが、表情に出すのは癪だから、そのまま無視する事に。
気付かれてない事に喜ぶわけじゃなく、残念そうな顔をして、前みたいについて来る。
それ以外には何もしない。攻撃も仕掛けてこないし、声も掛けてこなかった。
俺が尾行に気付くと、満足した顔でその場から人の波をすり抜けながら走り去っていく。いた場所に紙を置いて。
誰もその行動に怪しむ事もなければ、見る事もしてない。
多分、俺宛に残した手紙のような気がする。
「……罠か? こんな道端でそんな事は……俺が拾うしかないか」
道端でそんな物を落とせば、別の誰かが拾うかもしれない。罠の可能性を考慮すれば、俺が拾うしかない。
それとも、俺以外が拾えないように仕掛けや魔法を使用したのか。
「あっ!?」
先に通行人に拾われてしまった。通行人に何も起こる様子はない。下手したら、近くのゴミ箱に捨ててしまうんじゃないか?
通行人は大切な物かを確認するためか、折り畳まれた紙を広げた。その時、通行人の動きが止まった。
「紙を広げた時に発動する道具か」
誰にも聞こえない程の小さな声で呟く。さっきはジルオールに気付かせるためだったが、本当は目立ちたくない。
「ここで助けに入れるのは俺しかい……ない」
通行人は普通にポイ捨てして、歩き去っていくんだけど……顔をムスッとした顔になっていた。
そのお陰でジルオールが残した紙を拾えたわけなんだけど……
「一体何が書かれてたんだ?」
残念。また今度。
確かに内容がこれだったら、拾った通行人が腹を立てても仕方ないな。
俺も拾い損だ。ちゃんとゴミ箱に……いや、所長に提出だ。




