押し付ける
「……普通に謝罪しろ。ネスティスだけじゃなく、そいつにも迷惑を掛けたと。彼女は魔法ギルドに……行ってないか」
ネスティスは主に盗賊ギルドへ通っている最中だな。だからといって、盗賊ギルドに行かせるのも……
「盗賊ギルドに通ってるらしい。そんな話が聞こえてきた。それと職人のところだな。あそこの爺は怖くて」
ストーカーか? 魔法ギルドは下層にあるし、見かける事もあるだろうが、コイツが盗み聞きにした可能性があった事を思い出したぞ。
爺というのも、ジジの事だろうな。俺よりもネスティスに日常会話を楽しんでいそうだ。
……そうだ!! その手があった。
「盗賊ギルドに迷惑を掛けたら駄目だぞ。ギルド間の抗争はなし。ネスティスに火の粉が掛かる」
「分かっている。魔法ギルドに注意されているから。そこで勇者に教えている先輩にも怒られた」
協会からギルドへ注意が行ったんだろうな。そこでネスティスとの接触を禁じられたりしたのか。
「だったら、話を聞ける場所、人間が一人いるんだが」
「ま、まさか……」
「俺もお前がいう爺という人物に心当たりがある……というか、知り合いだ。勇者からも彼の話は出ている。俺以上に日常会話をしてる可能性があるぞ」
爺さんはネスティスを孫のような感じで見てるし、彼女も慕っている。
【廃坑】後も武器やガントレットの調整等を頼んでいるとも聞いている。トレードマークは入れてないらしい。
ラーンを爺さんに押し付けるのが一番だ。
すでに圧を感じてるし、孫にちょっかい掛ける奴を爺さんが許すはずもなく、暴言と暴力で追い返すはず。
「ちょっと……」
「爺さんが認めたら、彼女に依頼を一緒に受ける事を提案しても良いぞ。まぁ……楽にして、仲良くなろうという甘い考えはなしだ」
「……分かった!! その言葉に二言はないな。やってやる。勇者以上にあの爺と仲良くなってやるからな」
ラーンはようやく立ち上がる。爺さんも選ぶ権利があるからな。ネスティス以上になる事はないと思うぞ。
「言っておくが、物で釣ろうとするなよ。逆効果になるだけだ」
相談役として、一応アドバイスはしておこう。
俺が安酒を用意したのは、長い付き合いがあるからだ。
爺さんから認められるのには根気が必要。俺達【無法者】メンバーと付き合うのも、時間が掛かったと思う。
ネスティスだけが例外だとも言える。爺さんのツボに入ったのか。懐にスポッと入れただけだ。
彼女とは別の勇者も装備に関して訪ねてきたらしいが、追い返したらしいからな。
プライドが高いの嫌いそうだし、物で釣った可能性もある。ラーンにもそれは突き刺さりそうだ。
「…………忠告は受け取っておく」
相談室から出る直前、ラーンも素直に返事した。溜めがあったのは、俺の思った通りの行動をするつもりだったんだろう。




