ラーン=アメン
「……しました」
そんな必要はないのに、変に動揺してしまった。
相談者は【無法者】メンバー……というわけじゃない。アイツ等はそんな事する必要がないし、有名人だから、フロアが騒いでるはずだ。
俺を【道化師】だと知ってるのは数少なく、【無法者】メンバーと所長のジェフ。ジジの爺さんと……指で数えるぐらい。
「僕の顔に何かついてるか? というか、見るからに普通……凡才な感じだな。本当に彼女の……勇者の相談役か?」
初対面であろう相手に失礼な言葉を投げる奴。
魔法ギルドの期待の新人、ラーン=アメン。そして、ネスティスのストーカー……は言い過ぎか。彼女に片想いをしてそうな少年だ。
俺が【道化師】として、ネスティスとパーティーを組んでたところ、不審者だと疑って、絡んできた。挙げ句の果てには喧嘩を売ってきて、パーティーに加わろうとしたぐらいだ。
俺が正論パンチを浴びせ、【黒猫】が奇襲で彼を気絶された。後は協会かギルドが身柄を引き取ったはず。
あれからどうなったのかなんて、全く気にしてなかった……というか、忘れていた。
ネスティスもあれからラーンの話題は……今までも全くなかったからな。
ラーンがネスティスに不評を買ったのは俺を……【道化師】を馬鹿にしたから。それが一番デカイと思う。
後は彼女よりも弱かった。期待の新人、ランク2のハンターながらも、修行に来ていたネスティスに模擬戦で倒されているからだ。
逆にそのせいでネスティスはラーンに気に入られるキッカケになったんだろうが……
俺は相談室の入口から一歩下がり、ドアを閉めた。
相談者はいなかった。見なかった事にしよう。
真面目にするつもりだったが、失礼な奴を相手にする必要はなし。
受付嬢達も納得するはずだし、美人秘書ならその言葉にコップの水を浴びせてもおかしくない態度だからな。
「待て待て待て!! 待ってくれ」
ドアの向こう側から必死な声が聞こえてきた……が、物事を頼む台詞じゃない。
それを無視して、戻るのもアリなんだが……一回だけチャンスをやろう。
「待ってくれ……ですか? 人を馬鹿にしたような態度をとって? 礼儀知らずを相手に何かを教えるとでも?」
「くっ!! ……待ってください。馬鹿にした態度を取って、スミマセンでした。……これでいいだろ!!」
最後の一言は余計だが、話は聞いてやるか。やり過ぎると、協会の評判も悪くなるかもしれない。




