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10 対峙

「イヴの兄たちに直接会って話をする!?」


 部屋の中にヴェルデの声が響き渡った。イヴがヴェルデの屋敷を訪れてから数日後、ローラはヴェルデとフェインと三人で今後について話をしていた。


「そんなのダメに決まっているだろ」


 ヴェルデは少し怒気を孕んだ声でローラに言う。だが、ローラは怯むことなくヴェルデをじっと見つめた。


「私はいつイヴのお兄様たちが狙ってくるかわからない状況に怯えるより、自分から名乗り出て話し合いたいのです。そうすることで、もしかしたら和解できるかもしれない、彼らを代々続く呪縛から解き放てるかもしれない。その望みに欠けてみたいんです」


 ローラの言葉を聞いて、ヴェルデは渋い顔で首を振った。


「そんなの無理に決まっている。奴らは深く考えもせずにただイライザの言葉を信じローラをずっと狙い続けてきたんだ。そんな奴らが話し合いに応じるわけない。ローラが会いに行けばすぐに殺そうとするだろ」


 ヴェルデがそう言うと、フェインも確かにな、と口を挟む。


「ヴェルデの言う通り、奴らはきっとローラの話に耳を傾けようとはしないだろう。でも、ローラが直接会いに行くことで事件は早めに解決するんじゃないのか」

「フェイン!」

「まあ最後まで聞けって。ローラを危ない目に合わせたくないのはわかる、俺だってそうだよ。でも、いつ奴らが攻撃してくるか、ローラを狙ってくるかわからない状況の方がよっぽど危ないと思わないか?それよりはこちらから出向いた方が俺たちのローラへの守りも強化しやすくなる」


 フェインの言葉に、ヴェルデはグッと言葉を詰まらせる。


「こっちで状況をコントロールした方が安全だ。それに、その方がヴェルデも全力でローラを守れるだろ、目の前で奴らがローラに向かってくるなら正当防衛で堂々と攻撃できる」

「私も、その方が安心です」


 フェインにローラが後押しすると、ヴェルデは渋い顔をしてから大きくため息をついた。


「……わかった。ローラが奴らに会いに行くのを認めるよ。でも、ローラのそばからは絶対に離れないし、奴らが少しでもローラに牙をむけば俺は容赦しない。それは絶対だ」


 ヴェルデがそう言うと、ローラとフェインは目を合わせて微笑んだ。





「それでこうしてのこのこと俺たちの前に姿を現したってのか」

「探す手間が省けたな」


 ローラはヴェルデとフェインに守られるようにして、イヴとイヴの兄二人の前にいた。


「どうして……どうしてこんな危ない目を!あんたもどうして許したんだこんなこと!」


 イヴが怒ったようにヴェルデに言うと、ヴェルデは苦虫を嚙み潰したような顔でイヴを見る。


「ヴェルデ様は悪くないんです。私が望んだことですから。だからヴェルデ様を責めないでください」


 両手を胸の前で握り締め、ローラは懇願するようにイヴへ言うと、イヴは眉を顰めて視線を逸らす。


「どうか私の話を聞いてくださいませんか。あなたたちが私を狙う理由はイヴから聞きました。あなたたちはずっとイライザの呪いのような言葉に縛り付けられている。でも、もう解放されてほしいんです。長いしがらみから解放されて、自分自身のために生きてほしいんです」


 ローラの言葉に、イヴの兄の一人が顔をゆがませた。


「解放されてほしい?だったら今ここで死んでくれよ。あんたが死んでくれれば俺たちは解放される。あんたのせいで俺たちの先祖がどれだけ悲惨な思いをして暮らしてきたと思う?俺たちもだよ。本来なら王家でぬくぬくと幸せに暮らせたはずなのに、地面を這いつくばってなんとか生きてる。あんたさえいなければこんなみじめな生き方はしなくて済んだんだ」


「ローラのせいだ?ふざけるな、お前たちの先祖の自業自得だろ!お前たちだってその呪縛から逃れてきちんと自分を生きていればもっと違う、新しい世界があったかもしれないのに、それをしなかっただけだろ!ローラが目覚める前も、目覚めた後もどれだけの絶望を抱えて生きていたと思うんだ!」


 ヴェルデが怒号を飛ばす。


「ローラ、やっぱり話をしても無駄だったろ。まともなのはイヴだけだ。こんな奴ら今ここで駆逐した方がいい」


 パチッと火花が飛び、ヴェルデの周りに魔力が浮かび上がる。一触即発かと思ったその時。


「ははは、相変わらずすごい魔力ですね、ヴェルデ」


 突然、イヴの兄たちの背後から聞き慣れない声がした。



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