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『転生論』 ☨東雲 クライスト☨

俺は死んだ。何故死んだのか理解できるのは、神様に会ったからである。

中学生の頃に理由もなく、神社に行き、何か能力がほしいと願ったからである。そこで出会った神様に授かったのである。授かった当初は何を授かったかどうかわからずに波動が出せるようになっているかや、空を飛べるかどうかなどを試してみたが、ダメだった。

 当初はあれは嘘だったと思っていたが、こうして死んでみると能力は死んだ後にこうして死んだことを理解できるという能力だったようだ。

 そもそも俺が死んだ理由は会社の帰りに、駅のホームで足を滑らせて電車に轢かれて死んだからである。

 だが現在の俺は五体満足で立っている。

少し気持ちの整理がついたところであたりを見渡してみる。

真っ白な世界の中に一本の白い道があるだけだった。

その白い道はしっかり見ていないと見失って足を踏み外してしまいそうだった。

 俺はその白い道を歩く以外の選択肢はなかった。道を踏み外して落ちてみるというのも興味深いが、指示されている道を通るというのが俺の生き方だ。だから俺は道を歩きはじめる。

 道を踏み外さないように歩くというのは、下をしっかり見て歩くということになる。すると今までの俺の生き方を振り返ることができるのではないか?と考えた。

 俺の人生は生まれた時から普通で、何もかもがまわりに合わせろと親に言われ続けていたので、高校も中堅高校、大学も中堅大学。そして普通に会社に入社。そして特に目立ったことをするまでもなく、昇進することもなく、先ほど死んでしまった。

今までの俺の生き方を振り返り終わると、ちょうど道の終わりだった。

道が終わってしばらくたつと、俺の体がだんだんと縮んでいく。

嗚呼……俺の人生もここまでか……。

もう死んでいるが、こうやって消えるのは不本意だ……せめて五体満足で消えたい……そんな願いは叶わず、俺の意識は消えていった。



‐‐‐



意識がはっきりしている。だが体がうまく動かせない。なんだこれは……? 俺の能力は拷問を受けるためだけの能力だったのか? 悔しいがこの状況を受け入れるしかない。

「おめでとうございます! 元気な男の子です!」

 何を言っているのかがわからない。俺は成人しているし三十路になりかけているんだ。これは何かがおかしい。

もしかしたら、俺は若返っているのか? いや、天性の可能性も捨てきれない。

まぁいい、この際だからこんな不思議体験をすることまでが俺が授かった能力なんだろう。どうせなんだ、前の生き方とは違う生き方をしてみようじゃないか。


 

そうして俺は二回目の人生を歩み始めた。幸い俺の昔の知識は忘れていないようで、塾に行く必要もなく、特に人一倍勉強するでもなく俺はエリートコースを歩む。

もちろん俺は一流大学を首席で卒業し、一流企業に就職することができた。

だが、二十五歳の誕生日を迎えた瞬間、突然心臓が止まって死んだ。

何故だ? 何故俺は死んだんだ? この能力は生き返る能力ではなくて、この世にとどめられる呪いじゃないか!

 俺はまた、白い空間に飛ばされていた。

 何故? 何故? 俺は死んだのか? 畜生! あんなにエリートコースを歩んでいたのに!

どうせこの道を進めばまたやり直すことができるはずだ。そう思い込んで俺は道を踏み外さないように下を見ながら道を歩む。

歩いている時間というのはすごく暇だ。過去を振り返るにはちょうどいいかもしれない。

なんで俺は一流企業に入ろうと思ったんだっけ? そもそもなんでこんなエリートコースを歩もうと考えたのだろう? 考えても考えても答えが出てこない。俺はエリートコースを選んで幸せだったのか? いや、幸せであるはずなんだ!

そんなことを考えているうちに道の終わりが見えてきた。

終点につくと、やはりおれのからだが縮み始める。

今度は幸せに生きる。そう決めて意識を失った。

「ねぇねぇお母さん、幸せって何だろう? 」

「うーん、皆から愛し、愛されることじゃないかな?」

「ふーん。難しいね!」

この能力で幼い状態に戻ると、精神まで幼くなってしまうが、僕にとっては冷たくあたらずに済むので好都合だった。

幸せとは、愛し、愛される事だったのか?

今思い返してみると、俺の人生は友人も少なく、恋人もできずに、周りとのかかわりは最低限。そんな程度で幸せだとはいいがたい。

なら僕は、幸せな人生を歩んでやろうじゃないか!



そうして俺は、幼馴染を見つけて、そいつと添い遂げたいと感じ、俺は出来るだけそいつのサポートをしつつ一流の生活をして、そいつと結婚することができた。

どうせなら店もやってみたい。そう思い店も開いた。

そして二十五歳の誕生日の日、やはり俺は倒れた。

何故だ? 俺は確実に幸せだったはずだ! なんで俺はここで死ななきゃいけないんだ!

目を開けたらいつもの白い空間が広がっていた……。

はずだったが……。

そこには今までの俺と幼馴染の思い出が三百六十度全部に広がっていた。

ああ、つまりはこの呪いは、思い出を振り返ることができることだったのか……だがしかし、納得いかない。

あんなに幸せだったのに、道をたどればまたやり直してしまう! 嫌だ!

ふと落ち着いて考えてみると道を踏み外してみたことがない。若返るよりこのまま消えたほうがましだ! そう考えて、思いっきり飛び降りてみた


「あなた? あなた? 大丈夫なの? 」

ああ、俺の妻の顔が見える?何故だ?

「ああ、大丈夫だ、誕生日のサプライズだよ」

「そんなサプライズ嬉しくないわよ! いきなり倒れちゃうのよ? 大丈夫なわけないじゃないの! 」

「ああ、確かに俺はここにいる。それだけで十分だ」

訂正、あの能力は俺が納得いくまで人生をやり直すことができるという能力だったようだ。


そして俺たちは幸せに生き、幸せに死にましたとさ。






あとがき

俺、強く生きたいです。


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