第二部 第一話 再会
大学一年、四月。
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。」
満開の桜。
教育学部の講堂には、新入生が集まっていた。
結城奏斗、十九歳。
転生してから十九年。
今日から大学生だった。
周囲を見渡す。
全国から集まった学生たち。
高校では一番だった者。
全国大会の優勝者。
海外留学経験者。
ここでは誰もが何かを持っている。
(また一からだな。)
自然と笑みがこぼれた。
昔なら、不安だった。
今は違う。
知らないことだらけだからこそ、楽しみだった。
「教育心理学研究室はこちらです。」
案内に従って歩く。
廊下の先には、一人の教授が立っていた。
「君が結城くん?」
「はい。」
「高校の研究は読ませてもらった。」
奏斗は驚く。
「ありがとうございます。」
教授は穏やかに笑った。
「面白かった。」
「完成度じゃない。」
「問いが良かった。」
「それが研究では一番大切だ。」
高校時代、顧問が言っていた言葉と同じだった。
「ようこそ。」
「研究の世界へ。」
大学生活は、高校までとは全く違った。
答えを覚える授業は少ない。
「なぜ?」
「本当にそう言える?」
「他の考え方は?」
毎日問いを投げられる。
それがたまらなく面白かった。
ある日の図書館。
認知科学の本を読んでいると、一人の女子学生が向かいへ座った。
「あの。」
「はい?」
「ここ、いいですか?」
「どうぞ。」
彼女は厚い専門書を広げる。
教育心理学。
しかも奏斗が読んでいた本と同じ著者だった。
「その本。」
奏斗が話しかける。
「面白いですよね。」
彼女は少し驚いた顔をした。
「知ってるんですか?」
「最近読み始めました。」
「私もです。」
少しだけ会話が弾む。
「一年生?」
「はい。」
「私は二年です。」
「そうなんですね。」
その日は、それだけだった。
数週間後。
研究室。
教授が新しい共同研究を発表する。
「今年は学年を越えてペアを組んでもらう。」
名前が読み上げられていく。
「結城奏斗。」
「はい。」
「橘彩乃。」
「はい。」
奏斗が顔を上げる。
返事をしたのは。
図書館で会った、あの女子学生だった。
「よろしく。」
「よろしくお願いします。」
二人は軽く頭を下げる。
教授は笑った。
「君たちは興味分野が近い。」
「きっと面白い研究になる。」
奏斗はまだ知らない。
この出会いが、自分の研究人生を大きく変えることを。
そして。
高校で出会った朝比奈ひまりが、数年後、本当に自分へ挑みに来ることを。
今度は高校生ではない。
研究者として。
一人のライバルとして。
「転生者の私に挑んでくる無謀で将来有望な少女」の物語は、まだ始まったばかりだった。
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