第六話 元英雄の吹き出物たち
「アタシら今後、どうすんの?
てか、今いないメンツにどうやって説明する?」
ごもっともな意見だ。
アンサーがメガネをくいっとしながら答える。
「今やるべき事は3つでしょう。
1つは、住む場所の確保です。野宿でもしてみてください、殺されますよ。」
「…シャドウ・リヴァイアサンにねぇ。
あの悪名高いムカデに目を付けられてるんだから、襲撃でもされたらあたしら一貫の終わりだよ。」
シャムルがポケットに手を突っ込みながら言う。
「2つ目、逃走です。軍団長を破壊した今、間違いなく、メカ社はさらなるツケの請求を求めて兵を送り込んできます。
それに、大きなダメージを負った組織、無関係な者たちまで、私たちを潰しに来るでしょう。」
「…スパークルの様な愉快犯にとっては、今の俺たちは格好の餌だろう。」
皇楓は目を瞑り、呟くように答える。
「そして3つ、同盟勢力が必要でしょう。
住居なし、その上、上位勢力に目をつけられている。まぁ、こんな最悪の状況で味方してくれる勢力なんて、そうそういないでしょうが。」
「『天翔け屋』とかに依頼すればいいんじゃねぇか?」
キッドは首を傾げながら問う。
「天翔け屋が動くほどの法外な量の依頼金、どうやって用意するつもりなのでしょうか。」
アンサーの言葉が、瓦礫の上に重く落ちる。
誰もすぐには返せなかった。
生き残ったという事実だけが、逆に状況の悪さを際立たせている。
「金がねぇ、場所もねぇ、味方もいねぇ……」
キッドが空を仰ぐ。
「……ヒーローって、もっとキラキラしてなかったか?」
「してたよ。」
シャムルが即答する。
「だから壊れたんでしょ。」
一瞬の沈黙。
その空気を割るように、エイヤが瓦礫に腰掛けたまま口を開いた。
「同盟ねぇ……」
気だるそうに髪をかき上げる。
「“勢力”と組むってことは、借りを作るってことだよ?
しかも今のアタシら、踏み倒せる立場じゃない。」
「だが、背に腹は代えられない。」
皇楓が前に出る。
「敵が増える一方で、味方ゼロは論外と言える。」
アンサーが頷く。
「現実的な選択肢は、三つに絞られます。」
指を一本立てる。
「一つ。今の私たちのような、弱体化した中小勢力を吸収、あるいは庇護する形で主導権を握る。」
「二つ。思想陣営に接触し、末席として庇護を受ける。」
「三つ──」
一拍置く。
「“敵の敵”と手を組む。」
「うわ、一番嫌なやつ。」
シャムルが即座に顔をしかめる。
「だが、効果は高いと言えます。」
アンサーは淡々と続ける。
「例えば、現在メカ社と水面下で対立している勢力。
彼らにとって、私たちは“実績付きの爆弾”です。」
「……使い捨て前提ってことだろ。」
キッドが低く言う。
「ええ。」
アンサーは否定しない。
否定したくても、できない。
「ですが、使い捨てられる前に立場を作れれば、生存率は跳ね上がる。」
皇楓が目を細める。
「候補は?」
アンサーは、少しだけ言い淀った。
「──『ホットネスト・ファンクラブ』
もしくは、非公式ですが……『吹き出者連合』」
「うわぁ……」
シャムルが肩をすくめる。
「犯罪者と異端者の掃き溜めじゃん。」
「だからこそです。」
アンサーは静かに言う。
「彼らは、失う物が少ない。
そして──」
視線が、抉れた街の向こうを向く。
「上を、恨んでいる。」
「この中でも、吹き出者連合なら、加入に審査はいりません。
今すぐにでも行くとこを勧めます。」
「ここにいない連中には、まあ正直に言う他ないでしょうね。
嘘をついたところで、いずれバレます。」
エイヤは立ち上がり、服についた土を払いながら言う。
「アタシはパス。吹き出物らに顔割れてるからね。
あとは頑張って。」
そう言うと、エイヤはどこかに歩き出してしまった。
「おいエイヤ!」
キッドが呼び止めようとするものの、エイヤは振り返らない。
「アタシの方でも色々動くから。
安心してて。」
ただそれだけ残し、歩き去った。
「彼女は合理的判断をしたまでです。
止める必要はないでしょうね。」




