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イマジナリー・ライク・ア・ジャスティス  作者: もちもちアゲイン
第四章 それでも、あなたはわたしの側にいてくれた
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第五十二話 鉄の拳、甘い夢を砕く

投稿頻度終わっててすんません。



帰ってきたら皇楓は、もはや生きていることが奇跡と呼べるほどの有様だった。

エイヤは、それほどまでに強くなったしまった。


「……次は私が向かおう。過去を覗けば、何処へ向かったのかわかる。」

ベンジャミンさんが立ち上がる。


「……ダメだ。ベンジャミンさんやスティーブが向かえば、彼女はきっと姿を現さない。

…彼女は勝てないからな。」


エイヤはクレバーだ。真っ向勝負から勝てない相手と、相見えるほど馬鹿じゃない。スティーブやエリ、僕に単純な戦闘能力で勝てないこと、ベンジャミンさんの能力がどれほど危険か。それくらい、理解している。


「恐らく、彼女は俺に勝てる絶対的な自信があったから現れたんだ。」


リスク管理というやつか。

エイヤは自身を上回る相手と戦う時に、無策では挑まない。

………まさか。


────────────────────────────────


「やっと現れたか。エイヤ。」

スティーブ君の拳が、硬く握られる。


「………あれ?鬼ごっこは飽きちゃった?」


スティーブ君の頭が震える。これは、彼が怒った時の合図。


「黙って戦えッ!」

巨大な拳が何発も振るわれ、その尾が、巨体が、アタシを追う。

けど、アタシには当たらない。

クラゲちゃんの間をテレポートすれば、こんなの簡単に避けられる。予備動作バレバレ。


「…戦うよりも先に、見つけないとね。」


スティーブ君はアタシを消し炭にするつもりらしい。

その大顎から真っ赤な熱線が放たれる。

街を溶かし、引き裂き、燃やし尽くす。


けれど、『アタシ』はそこに立っていた。

「…どういう。」

スティーブ君の拳が『アタシ』に振るわれる。けれど、立っている『アタシ』を通り抜けるだけ。

だって、そこにアタシはいないから。

そこにアタシがいるって記憶に、この子は惑わされてる。


じゃあ、終わりにしよう。

「は?」

スティーブ君の全身に、クラゲちゃんの触腕が結びつく。

一本なら引きちぎられる。けど、5本、10本なら?


「ばかッ!離──」

スティーブ君の大顎と翼に触腕が巻きつく。もう、彼は動けない。


「スティーブ君は触手プレイって好き?アタシは嫌い。」

スティーブ君の頭に腰掛け、彼の肩をトンと叩く。


「アンタに教えてあげる。

アタシのこと。」

クラゲちゃんの針が、スティーブ君へ触れた。


────────────────────────────────

「ごほっ…けほっ…」

ヒルマは咳が出て口を覆う。

苦しい。痛い。辛い。助けて。そう呻く彼女を、アタシは抱きしめるしかなかった。


「ヒル、大丈夫。アタシがいるからね。」

彼女の口から血が溢れ出す。けど、アタシには何もしてやれない。変わってあげられたら。何度そう思っただろうか。


瞬間、アタシに花瓶が投げつけられた。

咄嗟にクラゲちゃんの触腕で、それを弾き飛ばす。

アタシには、これで精一杯だった。

「うるさいうるさいうるさい!!!黙らせてよ!!!」

泣きながら、女がヒステリックに暴れ回る。

アタシの…母親だ。


「……うるさいのはアンタだよ。一体この子がどれだけ苦しんでると思ってるの…?」


「もうやだ!!!やだやだやだ!!!どっかいって!!!私の前から消えて!!!」

もう一度、アタシにコップが投げつけられる。

中に入っていた紅茶は熱々。

アタシの首に、降りかかった。

「……あっつ…」


「…ねぇね…大丈夫…?」

痛い。熱い。痛い。


「……平気だよ。」

大丈夫、作り笑いには慣れてる。


「もう出ていって!!!やめて!!!」

毎日こんなんだ。泣き叫びながら暴れ回り、ついには包丁を手に取りアタシたちに向ける。


「うるせぇ!!黙れ!!ここが誰の家だと思ってる!!」

ぼろぼろに古びた扉が蹴破られ、父さんが母親を殴り飛ばした。

ゴツ、バキ、生々しい音を立てながら、大の大人が殴り合う。

アタシは、ただヒルマの目と耳を塞いであげるだけだ。

こんなん見てたら、甘い夢なんて見れない。


「やだぁぁ!!!もう嫌ぁぁ!!」

泣き喚く女は、ついに体当たりで扉を叩き割り、アパートの部屋を飛び出していった。


「………ッチ。」

父さんの顔はあざだらけ。正直、うちの父さんはそこまで体が強いとは言えない。錯乱している母親に、殺されてもおかしくはなかった。


「エイヤ……ヒルマ……すまん。」

彼はそう漏らし、部屋から出ていった。

何日待とうとも、彼らが帰ってくることはなかった。

二十日後に隣人から聞かされたが、この2人は路地裏で死んでいたらしい。

アタシは聞いた瞬間、飛び出した。

言われた場所。そこには、滅多刺しにされた父さんと、自身の腹に包丁を突き立てていた母親の姿だった。

まあ、無理心中ってところだった。


それでもアタシは───────────


「グルァァァーー!!!!」


スティーブ君の右腕が、何十にも巻かれた触腕を引きちぎる。どんな馬鹿力だよ。

アタシの見せた記憶を、ぶち破られたのは初めてだ。やっぱり、只者じゃない。


「……失った者同士、わかるよね?同じだよね?

アタシもアンタも、取り返したいだけ。だから、ほっといてよ。」


「………ほっとけるか…!

ぼくはお前と違う。僕は、助けを求める。」

スティーブ君は、体を引きずりながら、立ちあがろうとする。


「…違うでしょ。

アンタは逃げた。父親が殺されたくなかったから。

1人で抱え込んでみんなを裏切った。

助けを求めなかったじゃん。あの時、正直に助けてって言えば彼は死ななかったよね?」

これを言ったら、彼は必ず怒る。それは、人間関係なんざ1ミリも習ってないアタシでも容易に理解できる。


「………うるさいうるさいうるさい!!!黙れ!」

アタシは、思い出した。

「黙れ。」この言葉が、心底嫌いだった。


「……ぼくは父さんが放っておかなかった!みんなのこともだ!だから、ぼくはセレモニーで利用されかけてるおまえたちを助けようとした!」


「けどお前はどうだ!みんなに背を向けて、1人で解決しようとしてるだけじゃないか!」


「……そう、だよ。

アタシは、1人であの子を救う。だって、アンタたちは絶対に反対するだろうから。

……四十四番街。そこの住人を皆殺しにする。

そうやって、炙り出すの。」


数秒の間、クラゲが漂うような沈黙が流れた。

「人を蘇らせる力を持つ奴を。

そこに、いるから。

止めてみな。できるもんなら。」

渋でも出そっかなって考えてるけど需要ってあるのかしら…

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