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イマジナリー・ライク・ア・ジャスティス  作者: もちもちアゲイン
第四章 それでも、あなたはわたしの側にいてくれた
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第五十話 不朽永劫、生の前に夜明けを迎えん

 「…それで、エイヤをどうする?

 彼女の行動を制限することは、俺たちにはできないぞ。」


「とりあえず、エイヤを探そう。彼女が単独で行動するのには、何か理由があるはずだ。」

 皇楓は槍を手に取り、立ち上がる。


「俺に任せてくれ。

 あの姿、おそらく彼女は『覚醒』した。

 覚醒能力に立ち向かうには、同じ覚醒能力をぶつけるしかない。そして、この中で覚醒能力者なのは俺だ。」


 だが、エイヤがどこに向かっているのか、それが分からない。

 分かるなら僕も向かいたいが…


「俺に彼女が向かう場所に心当たりがある。」


「しかし、大丈夫ですか?

 エイヤは貴方を強く嫌っています。裏切ったとなると、彼女は貴方を本気で殺しに来る可能性がありますよ。」


「心配はいらない。それが、俺の作戦だ。」


 ────────────────────────────

 十九番街路地裏。

 吹き出者連合の拠点がある場所だ。

 彼女は、吹き出者連合の一員だった。俺たちから離脱したのなら、彼女が利用するのは奴らだ。


 しかし、いつもはやかましい連合の基地は、静寂に帰していた。

 基地の扉をノック。

 普段なら、ノックすれば反応を返す。

 しかし、一切の人の気配を感じない。


「誰かいないのか?」


 …………


 扉を蹴破る。ボロボロで薄い素材だから、一撃で破壊できた。


 扉が抜けた瞬間、血腥い臭いで吐きそうになった。


「…酷いな。」

 吹き出者たち、皆全員の死体がそこにあった。

 抵抗した痕跡が見られる。戦闘の末の結果、皆殺しにされた、と言うことだろう。

 ある者の死体は頭が握り潰され、ある者の死体は胴体が引き裂かれ内臓が引き摺り出されていた。


 しかし、1人の男だけ、まだ息がある。

「お前…誰…だ。」


「ここで何があった。」


「……『永劫の長夜』が…みん…なを…」


「…奴はどこに行った?」

 返事を返さないまま、男は事切れた。


「…………安らかに眠れ。」


 男に手を合わせ、目を瞑る。

 近くにあったまだ綺麗なブランケットを男に被せ、俺はその場を後にした。


 血塗られた足跡。ブーツのものだ。

 …おそらく、エイヤのものだ。


 足跡は路地裏に続く。そして、あるビルの前で止まっていた。

 扉は開いている。

 足を踏み入れると、そこも血まみれだ。


 目の前に、なにかがある。

 …これは、紙切れ?

 拾い上げようとした刹那。

 俺は槍を振い、触腕を切断する。


「………ストーカーって、やっぱ終わってるよね。

 クソガキ、アンタに選択肢をあげる。

 ここで全部忘れて無様に立ち去るか、アタシにバラバラに引き裂かれるか。選ばせてあげる。」


「お前……一体何人手にかけた?」


 エイヤの目に、光が灯る。

「……アタシとやる気?」


 俺は彼女を睨む。


「……叛逆の罪は存じているだろう。」


「アンタも、アタシの大切な人を踏み躙った罪を覚えてるよね?」


 両者、一拍置く。


「お前も、正義からは逃れられない。」

「アンタも、正義からは逃れられない。」


 ビルの壁が破られる。

 彼女の傘に仕込まれる短刀、それが、俺を狙い来る。

 的確に大動脈や臓器を刺しに来る。彼女は、本気で俺を殺す気だ。


 槍で短刀をいなす、が、触腕が俺を穿つ。

 想像を絶する痛みと共に、俺は壁へ叩きつけられる。

 鉄筋コンクリートを叩き破るほどの馬鹿力、それを受けて体が無事なだけで奇跡だ。


「……死ね。」

 エイヤはこちらに中指を立て、触腕の先から深紅の光、分かりやすく言うなら、レーザーを放つ。

 神の如き黄金の光が盾となり、俺を守る。

 が、このままでは防戦一方、彼女の札が出し切られていない以上、俺の不利は確実だ。


「防ぐことしか出来ないアンタが、アタシに勝てるわけないでしょ。大人しくここでアタシに殺されろ。」


「……それじゃあ、何も変えられない。」

 エイヤの背後。黄金の龍の大顎が開かれる。

 噛みつきではない。

 口内に、輝かしい光が満たされる。

 技名をつけるとするなら。

「山龍砲。」


 彼女が振り返った時には、地が閃光で満たされていた。


 光が晴れた。

 エイヤの頬から、薄ら血が流れる。

 恐らく、直撃の瞬間、触腕を巻いて一時的なシールドとしたか。


「エイヤ、俺はお前が何をしているのか知りたいだけだ。」


「…アンタには関係ないこと。アンタは、『妹が居なくても、お前は生きていける。』って言ったよね。

 アタシ、あの子なしじゃ生きる気ないから。」


 エイヤは止まることを知らず、口を開き続ける。


「アンタたち英雄は、みんな自分の大層な正義を持ってる。

 やれ自由を守るため、笑顔を守るため、世界を均衡にするため。みーんなアタシより偉くて、浅はかで、バカなんだ。

 現実を知らないクソガキに教えてあげる。

『理想を抱いた人間から死んでいく。』

 現実を見ろよ。アタシたちがどんなに人を救おうと、手から命はこぼれ落ちていく。掴んでも掴んでも、煙みたいに消えていく。

 認めろよ。正義のヒーローなんかいないんだよ。

 自分を騙してる偽善者なんだよ。アタシたち。」


 彼女の言っていることは、的を射ている。


「───そうだな。

 確かに、俺たちが救えない命は無数に存在する。

 けれど、偽善だとしても、救うと言う行為。人を救ったという事実、それがある限り、俺たちはヒーローを名乗れる資格がある。

 俺だって、救いたい人を救えなかった。守るはずの盾の後ろに、何も残らなかった。

 けれど、俺の身は生きている。救えなかった分、救えばいい。それが、俺の正義だ。」


 彼女の瞼が、ピキピキと小刻みに揺れる。

「……なら、アタシの正義を教えてあげる。

 アタシはね、みんなを救うとか、大義名分、名誉、理想、そんなものドブに捨てればいいって思ってる。

 あの子だけ、『ヒ(・)ル(・)マ(・)』だけ、『た(・)っ(・)た(・)一(・)人(・)のための正義』さえあればいいの。

 だから、ゲームはここでおしまい。」


 目を瞬いた時、俺は血を吐き出した。

 俺の胸が、背後から貫かれていた。右肺……か。

 背中が蹴り飛ばされ、俺は地面に打ち付けられる。

 立ち上がることも遥かに遠く、一度死んだ我が身を、また捨てる。その事実が、突きつけられようとしている。

 触腕が俺の両腕両足を掴み上げ、俺を宙へ縛り付ける。

 エイヤは、俺を睨んでいた。


「……どんな痛みが好み?」


 俺の両腕が触腕に引っ張られ、ギチギチと音を立てる。

 骨が折れる、筋肉が張り裂ける、血管が破裂するのがわかる。


「こんなもので、俺は痛がらないぞ。」


「あっそ。なら、ここでバイバイ。」


 新たな触腕が、俺の胴を掴む。

「……無策で、お前と戦うわけないだろう。」


 首筋に隠していた、『手榴弾』のピンを口で抜く。


「アンタ、正気…!?一蓮托生って、アタシが死ぬと思ったの?」


 この手榴弾の効果は、違う。

 俺たちの視界から、色が消えた。


 …ベンジャミンさんとアンサーの合わせ技、時間停止グレネード。そして、俺は停止に対する耐性を持つ特性腕時計を付けている。

 効果時間は短い、それまでに脱出しなければ。

 が、エイヤの瞳が動く。

 …覚醒能力者は、他の強力な能力に対する高度な耐性を持つ。

 俺は自身の耐性と、腕時計の耐性の乗算で無効化できている。しかし、彼女も、すぐに破ることができる。


「…小細工が…通じると…で…も?」

 エイヤが、じりじりと動く。


「あぁ。通じるとは思っていない。『時間稼ぎ』さえ出来ればいいんだ。」


「グルァァァァッーーー!!!」

 俺は、一つの作戦を緻密に構築するタイプだ。


 グレネードに仕込んでいたGPS、それの反応が止まった瞬間、スティーブに俺を追うように言っていた。

 スティーブの飛行速度なら、この距離程度数十秒だ。

 地面に金属の拳が打ち付けられる。


「………元からアタシに勝つ気なんてなかった、ね。」

 スティーブなら、彼女に勝てる。


「エイヤ、かんねんしろ。両手を頭の後ろでくんで、武器をおろせ。」


「……スティーブ君、鬼ごっこでもしようか。」

 エイヤは中指をスティーブに立て、触腕で自身を包み込んだ。

 スティーブが腕を振るった時には、彼女の姿は消えていた。


「おくびょうものめ…」


 スティーブは俺の方を見て、手を差し伸ばした。

 が、両腕両足の骨がバキバキな今、立つことはできない。

 スティーブは耳元に指を当てる。


「もしもし、エイヤに逃げられた。

 うん、大丈夫、彼は今のところ無事。うん、わかった。」

 無線通信で、スティーブはみんなに連絡を取ったようだ。


「すぐに助けが来ると思う。ぼくはエイヤを探すよ。」

 スティーブはそう言って、どこかへ飛んで行った。


 …痛みに悶える中、俺はエイヤの残した『クラゲ』と目があった。身構える、が、主人が離れた今、このクラゲに意味はない。


『…ふわふわ。』

 クラゲはなにも言わずに揺蕩っている。


 このクラゲは確か、彼女の記憶を元に形作られていると聞いた。それが真実なら、役に立つ情報を得られるかもしれない。

「…こっちに来てくれ。」


『…ふわふわ。』

 無言のまま、クラゲはこちらへやってきた。

 俺の顔の真上で、クラゲは止まった。

「可能なら、お前の主人の記憶を見せてくれないか?」


『………。』

 クラゲの触腕が、俺の頬に触れた。

多分またクソみたいな投稿頻度になるけどお兄さん許して

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