EX話 サマーバケーションじゃなくてサマーバカ
よっしゃ!好き放題やるぞ!
夏だ!海だ!夏祭りだ!
と行きたいところだが、僕の夏は冷房ガンガンの部屋で寝るのに限る。いや僕だって遊びたい。けど、外の気温を見てみろ。
41℃だぞ。陽炎が立ち込めてる。スティーブの上に生卵を落としたら目玉焼きになる温度だぞ。
悪いけど、僕は目玉焼きになりたくない。遊ぶのなら、部屋で遊べばいいだろ。
「みんな!海にいきましょう!バカンスよ!」
僕にとっては、まあまあ最悪気味な一声だった。
「…この暑さと日差しだよ?死にたいの?」
「おいおい、お前干物になりたいのかよ?
俺水着なんて持ってねぇよ。」
「買えばいいわよ!」
エリはニッコニコの笑顔で、キッドをぶっ叩く。
「五十一番街に新しく出来たビーチが、凄いらしいのよ。なんか…とにかくすごいの!」
君の語彙力の方が凄いよ。
「それで、君はそこに行きたいと?」
エリはドヤ顔をしながら頷く。
「それに、団体だと割引と特典があるらしいし…ね?」
「…はあ、面倒ごとが起こらないと良いのですが…」
アンサーはため息をつき、冷房庫からアイスを引っ張り出す。
「皆さんが行くのなら、僕は待っていましょうか?
正直、海は少し苦手で…」
濃いめのカルピスをぐいっと飲みながら、ユウは言う。
「え〜いきましょうよ一緒に〜。」
「……たまには良いんじゃないか?
僕だって暇だし。依頼も最近ほとんど来てないし。」
エリの目が、キラキラに輝く。
「やった!
なら早速いきましょう!もう予約は済ませてあるから!」
はっや。
てな訳で、海に来た。
ひっさしぶりにこの海原を見た。前は真冬だったから、寒いくらいにしか思っていなかった。けど、今来てみれば風が爽やかで、これだけで来る甲斐はあったと思う。
海パンとラッシュガード、ビーチサンダルを着用し、砂浜を歩く。
うん、暑い。
さっさとパラソルを立てて日焼け止めを塗ろう。
「ここがビーチか。テーマパークに来たみたい!テンション上がるなー!」
スティーブがパラソルを思いっきり地面に突き刺す。
「……深くないか?」
「大丈夫、ぼくなら抜ける。」
埋まりすぎてる気もしなくもないが、まあいい。
僕はそこにレジャーシートを敷く。
すると、どこからともなくエイヤが現れてそこに寝転んだ。
「塗って。」
地味に露出が多いから大変そうだ。
「しょうがないな。」
日焼け止めを手に少し出し、エイヤの背中につける。
「んっ…。」
…無心だ無心。面だけは良い女だから、こう言う時が困りものだ。
「……お"っ。」
「そういういたずらやめてくれないか?やりづらいんだけど。」
「あバレた?」
その後はもう無心で彼女の体に塗りたくった。
「……前は?」
彼女の紅い瞳が、日陰から僕を見る。
「流石に規制が掛かるから。」
「メッタ。まあいいや、ありがと。」
そう言うが、彼女はどこうとしない。
「……どかないのか?」
彼女は「わかってないね」と言わんばかりにこちらを見つめ、人差し指を振る。
「アタシが日差しに当たりに行くとでも?
ここからどく気はないからね。」
「…ならなんで塗ったんだよ。」
「念の為。日焼けしたくないから。」
…早速嫌になってきたな。
その後、日陰に根っこが生えたエイヤを放置して、僕はキッドに塗ってもらって、海へ。
「…冷たっ。」
海水は、思いの外冷たい。
足首が濡れる。スリッパと足の間に、嫌な感触が漂うが、これも粋。
ばちゃっ。顔に水がかけられる。
「隊長!目の前に白いモンスターが!」
「やってしまいなさい隊員!」
レヴェルとキッドが、水鉄砲をこちらに向けている。
レヴェルはまだ子供だからいい。ただキッド、君は僕と同い年じゃなかったか?5歳近く年下を隊長呼びしてていいのか────
また顔に水がかけられる。こいつら顔しか狙ってこない。
「……がおー。」
僕は水を思い切り蹴って2人に飛ばす。
「ギャッ!モンスターが攻撃してきました隊長!」
「抵抗は無駄よ!大人しくお縄につきなさい!」
「僕は怪獣なのか犯罪者なのかどっちなんだ。」
後ろから、水が掛けられる。
「婦警登場よ!」
ハートのサングラスをかけたピンク頭が、大量の水風船を抱えて立っていた。僕は死を覚えた。
「お縄につきなさぁーーい!!」
婦警はダッシュで突っ込んで、僕もろとも大きな水飛沫をあげて海へダイブ。
「ごぼぼぼぼぼ………」
「ごぶざぶじばざばばばび!」
「……びびびび、びぬ…」
辺りには魚が泳いでいる。その中、僕とエリは水中は沈んでいった。
「やばい!ソルとエリが死んじゃう!医者!」
「おーい医者ァ!」
「医者ですが何か?」
「お前は科学者だろうが!」
「…………この水深…膝じゃないですか。」
「………確かにそうね。」
「…じぬ。」
酷い目にあった。
階段の前に母さんと父さんが立ってるのが見えた。
もうあのピンク頭の所にいたら命が足りない。さっさと違うとこに行こう。
少し離れた場所は、釣りのスポットになっている。
シャムルが座り込み、釣り糸を垂らしている。
「……なに?」
「猫は魚が好きなのかって。」
「…あたし猫じゃにゃいから!これそういうカチューシャ!」
「今にゃって言ったのは?」
「もうほっといて!」
そう言った途端、何かがかかった。
「やっぱ今のなし!手伝って!」
僕はシャムルを後ろから支え、一緒に引っ張る。かなり強い引きだぞ!?
「そういうことじゃないって!綱!投網でもない!
そこに置いてるタモだって!」
黒い虫取り網みたいなので、上がってくる魚影を捉える。
「今!」
シャムルの声と共に、網の中に魚をぶち込む。
引き上げてみると……
びしょ濡れの黒髪が姿を現した。セイレーンかなにかか??
「……シリウス、あんた何やってんの????」
「ここは海水浴場じゃないのか?」
「それはあっちだ。」
彼女はどこか不満そうな顔をしながら、とぼとぼ歩いて行った。
もう嫌だ。どいつもこいつもメチャクチャだ。
水の近くに行ったらヤバいやつに絡まれる。
皇楓とヘヴン、ベンジャミンのまとも組の元なら、まとも組ならマシなはずッ!
「やっぱ君たちが一番落ち着くよ。」
「─みんな元気だねぇ。ベンさんたちは泳がないの?」
「……錆びる。」
「……カナヅチだ。」
「…ごめん。」
4人で体育座りしながら、太陽を見る。
「君たち、ドリンクを買ってきてやったぞ。好きなものを選びたまえ。」
ヴラドが盆にカラフルなドリンクを乗せてやってきた。
「気が利くな。ありがとう。」
皇楓は烏龍茶を手に取り、口をつける。
「あら?美味しそうなの持ってるじゃない。」
駄目だこりゃ。もう泣きそうだ。
「あたしも飲み物を買って来てあげたのよ?そんなに捕食者を前にしたウサギみたいにプルプルしなくていいじゃない。」
「……ならなんでその飲み物にはカップル用のストローが刺さってるんだ。」
「気にしたら負けってやつよ。」
気にするだろ。普通。こいつには普通ってもんが通用しないのか。
エリは僕を押し倒して、口の中に片方のストローをぶち込む。
待て、この体勢、あらぬ誤解を招きかねない。
「……若いっていいね。」
「待て。せめて人に見られない場所でやれ。」
「ここでおっぱじめる気か?随分と開放的じゃないか。」
そう言うことじゃない。違うって。
無理やり立ちあがろうとしても、向こうのほうが力が強いんだ。体を押さえられてる以上、僕は動けない。
口の中に、甘いジュースが流れ込む。
フルーツの甘味が、乾いた口の中に染み渡る。
「ふふっ、美味しいかしら?
あたしのジュース❤︎」
随分語弊のある言い方な気がするな。
どうやったら抜け出せるんだ。皇楓たちの方を見る。どうにか、視線でヘルプを送るんだ。
皇楓は申し訳なさそうな顔をして、視線を落とした。
ヘヴンは頬をかきながら視線を逸らし、ヴラドは肩を軽く動かした。誰も止められないってか?
…いや、こいつの弱点、知ってた気がする。
それは……
「んっ!?!?!?」
くすぐり。
丁度脇腹あたり。
「……あ"っ!ちょ…やめ…」
一瞬にして、エリの力が弱まる。
その先に、さっと抜け出し逃げる。
「…………お"……ほぉ"…」
なんでくすぐった程度でこうなる。
「……アンタたち…ここでしたの?」
「はぁ…そんなわけがないだろ。」
はぁ……もう疲れた。寝たい。近くのテーブル席に座り、半分くらい飲んだジュースに口をつける。
「なあソル、あっちでビーチバレーやろうぜ。」
「ごめん、ちょっと疲れてて。」
「ソル、いいでしょ?お願い!」
「俺からも頼むよ。な、いいだろ?」
キッドとレヴェルが、目を輝かせる。隣の仮面は置いといて、レヴェルは子供だ。さすがに子供の言うことを無碍にするほど腐ってはないさ。
「しょうがない。」
そう言って立ち上がった。
ビーチバレーを見た瞬間、僕は度肝を抜かした。
上へと飛び上がったボール。それをスティーブが尻尾で叩きつける。
破裂音と共に、ボールが片方のコートへ突き刺さる。
これを取れるやつはいるのか?
「なら、私のターンだ。」
ベンジャミンさんがサーブを打つ。
彼の手にボールが触れた瞬間、相手コートの地面にことっと落ちた。
「はあ?今のは卑怯でしょ。ノーカンノーカン。」
「なら、貴公たちも能力を使うといい。」
ボールは、再びベンジャミンさんの手に渡る。
彼の手がボールに触れた瞬間、ボールは地面に…落ちなかった。
ボールが地面と触れ合う1秒にも満たない瞬間、シャムルがボールをギリギリでレシーブ。
ボールが次々と繋がれ、アタッカーのエイヤへと。
クラゲの触腕がうねり、ボールを叩く。
真下へと突き刺さったボールからは、煙が上がっていた。
「……なんでボールが無事なんだ。」
「ソル殿もするか?」
いわれたまま、僕はコートに入る。
試合はそのまま続行。
バカみたいなボールが次々と飛び交い、僕の元へ。
「決めろ!」
バレーは初めてなんだが…とりあえず、飛び上がってスパイクをしてみる。
力を全力でこめる。腕が白い光に包まれる。
「えい。」
「あれやりすぎ────」
ボールが地面に突き刺さり、白色の爆炎が上がった。
コートはもはや原型を留めていない。というより、今まで無事だったのが奇跡だった。
砂の山から、みんなが顔を出す。
「…ボールは?」
「多分……消し飛んだ。」
「結局、お前が一番やらかしてるじゃねぇ!」
後一話夏イベ書こうかな、と思ってたけど4章がいい感じに固まったので本編描きます。楽しみにしてた人いたらすまんの。
夏イベなのに夏休み終わりかけなんだよなぁ()
あとアナログで挿絵を自作しようかなとか思ってるけど需要があるんだったら教えて欲しいです。




