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イマジナリー・ライク・ア・ジャスティス  作者: もちもちアゲイン
第三章 リターン・トゥ・サイド・オーダー
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第四十七話 ザ・ラスト・イービル

 


「……クソッ!」

 僕も、こう漏らすしかなかった。

 ヘンリーは、ヘンリーはもう助からない。その事実が確定してしまった。

 それにだ。ポールが不死身となってしまった以上、勝つことはほぼ不可能だぞ!?

 なにか、なにか対策はないのか?

 記憶を探れ。なにか一つくらい使える記憶はないのか…!?


「…まだ可能性はあるわ。」

 レイラの声が、空気を裂いた。


「ヘンリーが作ってたのは、あくまでプロトタイプ。

『完全な不死性』は得られないわ。」


「それってどういう…」


「端的に言えば、再生はするけど、超高エネルギーで消し飛ばして仕舞えば殺せる可能性は十分にある。

 そして、それを実行できるだけのエネルギーはある。」

 彼女は、スティーブのボディに触れる。


「…つまり、ポールを消し飛ばせるってこと?」


「…彼にもう誰も傷つけさせてはだめよ。」

「だから、塵すら残さずやってしまいなさい!」


 スティーブは拳を叩き合わせる。やる気は100%のようだ。

─────────────────────────────────


 ……けほっけほ…。

 先と共に、血が吐き出される。

 ただその血を拭い、顔を上げる。拳が迫っていることを、知りもせずに。

 鈍い音と共に、あたしは吹き飛ばされる。

 あたしはほとんど限界に近い。あと耐えれて数分かしら。

 ポールはあたしを押し倒し、首に手を当てる。


「………命乞いをしろ。

 その後は…貴様ならわかるだろう。」


 あたしは舌を出し、両手で中指を突き立てる。

「…フッ、クソ喰らえよ。」


 ポールはその途端、あたしの首を掴んで持ち上げる。

 …痛い。息ができない。


「自分がどれほど愚かか、ここで分からせてやる。」

 そう言って、あたしの服のチャックに手をかけた。

 瞬間、あのドラゴンの叫び声が聞こえた。


「グルァァァァァッーー!!!」

 ポールは壁に激突。

 スティーブが、あたしに覆い被さるようにこの場に立った。

 …ヒーローは遅れて登場するって言うのは、この世界の条理。よく覚えておくことね。


 スティーブはあたしを掴み上げ、ソルの前まで置いた。

「…エリ、随分と無茶をしたな。」


「……お互い様…でしょ?」

 ソルはあたしに肩を貸してくれた。

 そして、軽く彼の拳とあたしの拳を付き合わせた。


 あたしがポールのことを見た時には、もう上半身が消え失せていた。

 人外となって、強靭になりゆく彼の体を、拳一発で。

 スティーブの拳が、赤く燃える。

 …化け物には、化け物をぶつけるのよ。


 その巨大な掌で、残った下半身も、握り潰す。

 ポールは肉塊になった。でも、肉の塊が集まって、体を形成し続ける。


 スティーブは、その隙すら見逃さない。

 肉塊を噛み潰し、地面に叩きつけてぐちゃぐちゃにする。

 途端、スティーブに付着した肉塊が形を成し、スティーブの内部へ攻撃を開始する。

 スティーブはのたうち回り、苦しむ。


「させないわよ!」

 レイラのギターが鳴り響くと、肉片たちがスティーブの機体から這い出す。


「おのれおのれおのれッ!」

 肉体が再生した瞬間、スティーブは突撃し、工場の中へ突っ込む。

 鉄筋とベルトコンベアを叩き折り、ポールを地面へ打ち付ける。

 上へ覆い被さったスティーブの口に、真っ赤なエネルギーがチャージされる。


「……ハッ!」

 ポールの口が裂けるように開き、スティーブを背後へ、熱気立つ溶鉱炉へ叩き落とす。

「グルァァァァァッッ!!!!」

 真っ赤な鉄が跳ねる。

 彼が落ちたところには炎が立つ。

 両手両足を振り回し、踠きながらもスティーブは熱の中へ沈んでいった。


 真っ赤な泡が、溶けた金属から浮かび上がる。

「……消えてろ、スクラップ風情が。」


 もはや人としての限界を失い、でろでろのゾンビの様な姿になったポールが、こちらへにじり寄る。

 ソルが一歩前に出て、剣を構える。

 しかし、ポールは動じず、その腕を広げる。


「斬れるものなら斬り殺してみろ。

 太陽なぞ、墜ちるに決まっている。」


「……どういうこと…貴方が得た『不死性』に、そんな異形化なんて力はないはずよ。」


「……レイラ、貴様は私を出し抜ける頭脳を持っていると思っていたのだがね。」

 ポールは頭を押さえ、笑い始める。


「あの化け物の小指を見つけて処分しろなんて命令、出されるはずがないだろう。なんせ『アスター』の存在そのものが秘匿されているのだったから、当時の執行官『荒領』のみしか存在を知らない奴を、どうやって今の治安局が掴めると思ったのだ?」


 ポールは私たちを指差す。

「……貴様らの仲間、アンサーだったか?奴には感謝したい。

 こんな力を造ったのだ。彼は天才に値するよ。

 感謝を伝えておいてくれ、と言いたいところだが、ここで死ぬんだったな。私が直接言いに行くとしよう。

『私の為に、怪物を殺してくれてありがとう』とな!」

 彼が剣を振るうよりも速く、ソルの首を掴み上げる。


「最期の言葉を言え。聞いてやる。」


「……最期に見るのが、そのお前の醜い顔か。」

 ソルは歯を見せて笑う。


「やっぱり僕は運が悪いな。」

 その笑いは、決して死へ屈しなかった。

 ポールがソルへ拳を振るおうとした瞬間。


 下から、重金属音が響いた。


 地面が、大きく揺れる。

 何かが、いや、『彼』が帰っ来た。


「ポールッ!お前を焼き尽くしてやるッ!」

 スティーブの拳が、地面を突き破った。

 ポールを地面へと叩きつけ、腕を捩じ切る。

 そして、ポールの顎を掴み、思い切りこじ開ける。辺りに、顎の骨を砕く鈍い音がこだまする。


 スティーブの尾から真っ赤な光が迫り上がる。

 背、首、口へとエネルギーが集約される。

 熱線が、ポールの口へと流し込まれた。

 ……なんて最悪なキスなのかしら。

 ポールの首が燃え尽き、体が爆散。肉塊も全て、塵すら残さず灰燼へ帰した。

 残ったのは、目だけが動くポールの頭だけであった。

 スティーブは、その目を見つめて動かなくなった。

 そして、その頭部をゆっくりと咥える。


 ポールの目が泳ぐ様に動き、何度も瞬きを繰り返す。

 その目が、真っ赤に輝く。

 再び放たれた熱線が、秒と経たずにその首を消し飛ばした。


 熱が、焦げた金属が、工場の中を漂う。

 翼の一振りで、空気が軽くなる。


「…………帰ろう。」

 スティーブは、あたしたちへ振り向いた。

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