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イマジナリー・ライク・ア・ジャスティス  作者: もちもちアゲイン
第三章 リターン・トゥ・サイド・オーダー
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第四十五話 ストップ・ディス・モンスター

 

 みんなが納得する意見をまとめた結果、深夜2時まで話し合うことになってしまった。

 作戦はこうだ。

 まずカムプライムとライトニングライアー、僕とベンジャミンさんでスティーブを抑え込む。

 そして、ヴラドとシャムル、ヘヴンの3人がポールをとっ捕まえる。

「他のみんなは支援を頼む。

 カムプライムからの情報によると、ポールらしき人物がいるところに大量の治安官が固まってる。そいつらを全員倒すんだ。」


「任せろ。支援は俺の得意分野だ。」


「へっ、前大活躍したから、今回は脇役か。まあいいぜ、乗った!」


「だるいからさっさと終わらせて。」


 こんなんだが、みんなやる気十分。

 さあ、スティーブを迎えに行こう。


「最後に。

 みんな、死ぬなよ。」


「あら?あたしは治安官程度に殺されないわよ♪」


「……今死にそうですが、まあ大丈夫ですよ。」


 ───────────────────────────────

 約束の場所、二十三番街に着いた時、街はまだ落ち着いていた。

 人気はなく閑散としている。普段なら活気ある街だけど、住民は皆避難している。

 道端には乗り捨てられた自転車や、放置されたランドセルが落ちている。人を失った街が、無言で佇んでいた。


「……スティーブが来るまで後どのくらいだ?」


 ベンジャミンさんは懐中時計を握りながら答える。

「わからない。しかし、気配は近付きつつある。」


 静寂の中に、轟音が響いた。

 ジェット噴射…スティーブではないが、只者ではない。

 僕は剣の指紋認証に指をかける。


 しかし、ベンジャミンさんがそれを制止した。

「大丈夫だ。彼らは仲間だ。」


 空から、黒の装甲が降りた。

 モノアイのレンズは蒼く光り、ジェットパック、ウィングが畳まれる。


「君らか。シリウスが言っていた協力者は。

 私の名はカムプライム。」

 カムプライムは傷だらけの手を出して握手を求める。僕はそれに答え、彼の手を握った。

 そこに人の温かみはなかった。あるのは、冷たい金属の質感だけだ。


「ライトはすぐに来る。」

 彼がそう言った途端、真隣で雷鳴が響き渡った。


「ちょりっす〜、あれ!あの白髪クンじゃん。」


「君は…」

 金髪、派手な装い、この喋り方。執行官、蒼雷公だ。


「あーし金なくてさ、副業よ副業。隠れてやってんのよ。

 執行官ってちょービンボーでさ、2ヶ月給料未払いなわけ。

 ただでさえ安っすいのに。もう他のところで仕事しないと生活すらままならんの。」


「君も苦労しているんだな。」


「そ。

 こっちでは『ライト』って呼んでよ。あーしの本名だからさ。」

 ピカピカの笑顔を見せながら、ライトはカムプライムをつついた。


「プラニキ〜、ドラゴンちゃんまだな訳?前コテンパンにやられてるから仕返ししたいだって。」


 彼女がそう言った途端、耳をつんざく咆哮が轟いた。


「…来たぞ。

 私たちの役割は足止めだ。全力でこなそう。」

 ベンジャミンさんはそういうと、鎧の中から長剣を取り出した。


「あぁ、ヘンリー。約束、果たすぞ。」

 指紋認証に触れ、鞘から剣を引き抜く。

 直後、僕たちをドラゴンの影が覆った。


「ソル殿…背中は任せるぞ。」


「…あぁ、僕からも任せるよ。」


「…始めるぞ。」

 瞬間、世界から色が失われる。

 こちらに飛びかかろうとするスティーブは空中で静止。


「一応は1分間の停止だ。

 これから小刻みに停止を挟む。着いてきてくれ。」


 言葉と共に、スティーブの顎がぴくりと動く。

「…やはりあまり効果はない。」


「………………グルァァァァァーーーー!!!!!」

 周囲の空間に、ヒビが入るように色が戻る。

 停止を破られた。


「グ…」

 ベンジャミンさんは胸を押さえて地面に膝をつく。

 その隙をスティーブは見逃さない。

 巨大な拳が、ベンジャミンさんを打ち抜こうとする。

 しかし、カムプライムが許さない。

 彼の右手はハンマーへと、左手は銃へと変形し、スティーブの懐へ。

 胴体を殴り付け、右方向にスティーブは倒れ込む。


 瞬間、スティーブはカムプライムを掴み上げ、地面へ叩きつける。

「ライト!」


「わーってるって!」

 背後からライトが背中に飛び乗り、スティーブの体に直接電流を流す。

 スティーブは唸り声を上げる。同時、カムプライムを掴む力が弱まる。

 そこを彼は見逃さず、スティーブの手に銃撃を浴びせ、掴みから脱出する。


「2人とも退がれ。」


 僕はそういうと、スティーブ目掛け走る。

「グルァァァァァ!!!」

 スティーブは叫び声を上げ、僕を両腕で叩き潰そうとする。

 大丈夫、見抜けている。


 スティーブの股下へ滑り込み、ゼロ距離から全力で突き刺す。

 僕が力を込めると、剣からエネルギーが爆発し、スティーブの胸に大きな傷をつける。

 覇導観で作った技……『ソーラーエクリプス』とでも名付けよう。


 中の配線や内骨格が、細い隙間から覗かせる。

 しかし、スティーブは一瞬で空へ飛び上がる。

 スティーブの口が開かれ、僕の方へ向けられる。


 熱線が僕へ命中する直前、世界から再び色が消えた。

「…ありがとう、ベンジャミンさん。」

 僕は地面を蹴って立ち上がり、できるだけ熱線から距離を取る。


 ────────────────────────────

「ハァハァ…奴はどこまで迫っている!」

 その声に応えるものはいなかった。


 刹那、男の首に銃口が突きつけられる。

「……貴様は、もう袋の鼠だ。

 窮鼠猫を噛むとも言うが、その歯はもう折ってある。」


 暗闇の路地から、1人の少女が歩いてくる。

 真隣に風穴が空いたのは、男には見えなかった。

「ポール、久しぶりじゃん。覚悟してよ、無事には帰さないからさ。」


 男は助けを求めて逆方向に目をやる。

 しかし、広がるは黄昏の森。闇以外、その目に吸い込まれなかった。


「君は詰み。

 観念したら?もう助けはこないよ。」

 男は諦めたのか、両手を上げた。


 ヴラドはフンと鼻を鳴らすと、男の手に一つの装置をつけた。

「ここでこの世に別れを告げたくないのなら、貴様の計画を洗いざらいここで吐いてもらおうか。

 虚構はその場で証明される。俺の友人が便利な物を使ってくれたのでな。」


「…まず目的を話しな。」

 シャムルは片手に持つボイスレコーダーのスイッチを入れる。


「そう簡単に話すとでも───」

 バン。

 男の右手から、血が噴き出る。


「………ッ!」


「一度は赦す。

 ただ二度目は、選ばせてやる。こめかみ、眉間、耳、どこが好みだ?」


「……撃ってみろ。」


 ヴラドは銃の持ち手で男の顔面を殴りつける。

 そして、口の中に銃をねじ込む。

「必要とあらば、何日も貴様に付き合おう。」


 男は堪えていた涙を流しながら、命乞いをする。

「やめてくれ…!頼む…許して…くれ。」


 シャムルの足の力が強まる。壁にはさらに大きな穴が開かれる。

「…あんた、自分の立場わかってる?

 一体何人騙したの?どれだけヘンリーの、スティーブの運命を弄んだの?

 ねぇ、答えてよッ!!!!」

 シャムルは男の胸ぐらを掴む。その目は虎のように鋭かった。


「…私がヘンリーを求めたのは、金のためだ。

 不老不死を実現させる装置があってみろ。それがどれだけの価値を持つと思っている。

 金が、金があれば権力だって、秩序だって、なんでも手に入る。

 英雄にだってなれる。」


「……反応はない。真実だ。」


 男の口角が、裂けるように吊り上がる。

「ふ…ふははははッ…!」


「狂人のフリで誤魔化すつもり?」


「いや待って!」


「……何が可笑しい?」


 ポールは血まみれの腕を顔に当てる。


「貴様らのその馬鹿さが、哀れでならないよ。

 一体、なぜ私が力を使わないのかと思わなかった。それに気づかない貴様らが、愚かでならない。」

 瞬間、ヴラドが発砲。

 男の体内から銃弾が貫通して落ちた。


 3人が地面に打ち付けられる。

「冥土の土産だ。教えてやる。

 私はヘンリーのデータは既に入手した。ドラゴンのボディの一部からな。

 焼き切れていて、解読に苦労したよ。もう彼の意識は死んでいる。

 それを使って、私は不死を実現した。」


 彼の手についていた嘘発見器に、反応は見られない。

 銃弾を急所に当てれば、どんな人間でも死ぬ。

 しかし、彼には一切通用しなかった。それが言うこと。

 彼は、『嘘をついていない』。


「じゃあな、燃え尽きた炭共。せいぜい暖炉の中で永遠に朽ちていけば良かっ────。」


 言葉が紡ぎ終わる前、ポールはピンク色の光に吹き飛ばされた。

 その光の持ち主を知っている。しかし、3人には一切目を向けず、ポール目掛け突っ込んでいった。

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