第四十四話 ビヨンド・ディス・デス
朝5時位から出発して、家に帰ったのは昼前10時半。
セレモニーはもう滅茶苦茶。世論の目は、スティーブにも、執行官たちにも、僕たちにも向けられる。何ら関係のない市民は、自分たちが正しいんだと思い込み、あの男の手で踊らされている。
「とにかく、最優先はポールの居場所を掴む事だ。」
「待ってよ、ならスティーブはどうなるのさ。
メカ社にでも目をつけられて、改造されるかもしれないよ。」
かかっているのは、仲間の命。皆がここまで真剣なのは、ハレミチ事変以来だ。
「スティーブは、恐らくポールを追って飛び立ちました。
スティーブより早くポールを捕まえ、スティーブを誘き出す餌にしてしまいましょう。」
「…けど、どうやってスティーブ君を見つける?
アンさんが作った追跡装置も、壊されちゃってる。」
スティーブは現在行方不明。
あのデカさのメカだ、位置くらい掴めてもいいはずなのだが、わからないとしか言えない。
「…あっ、見てよこれ。」
エイヤがスマホの画面をテーブルの真ん中に置く。
「ツリッターに、スティーブ君っぽい奴の写真が上げられてる。
これ使えば、見つかるんじゃない。」
ツリッターを開くと、トレンド一位に、「オーダー・セレモニー」が載っている。
その内容は、まあ支離滅裂なもんだが、所々に載せられる、「バケモノ」の目撃情報。
「#ドラゴン」
「ニュースでタイタンドラゴンって呼ぶのはうおwじゃない?」
「悲報、局長多分死亡wwww」
「もう終わりだよこの都市」
「CGじゃないん?」
「今時のガキでも信じねぇよ」
載せられているのは、高層ビルの間を飛ぶ赤黒いドラゴンの姿。
近くの道路標識とかから、恐らく三十番街付近だ。
……某配信者のせいで、SNSにいいイメージはあまりないが、まあ今回はありがたく利用させてもらおう。
「続いてニュース速報をお届けします。
本日7時ごろに満を辞して開催されたオーダー・セレモニーにて、『Sランク相当の都市災害』が発生しました。
都市中央区に発生した未曾有の大災害について、治安局は『裏切り者がいる可能性がある』と発表しています。
また、Sランク相当都市災害『タイタンドラゴン』、現在行方不明となったポール・ロビンソン局長については、治安局が調査を行っています。
タイタンドラゴンは現在二十三番街にて目撃が確認されています。二十三番街にお住まいの皆さんは、至急避難をお願いいたします。
その他の市民の皆さんは、タイタンドラゴンを見つけ次第治安局へ連絡し、絶対に刺激をせず、その場から離れるようにお願いします。」
三十番街から二十三番街ってことは。
「南下…している。」
「それも直線的に、です。時間から逆算して、分速10kmかそこらはありそうですね。」
「恐らくだ、スティーブはポールの居場所を掴んでいる。」
「となると、そのルート上を徹底的に調べ上げちまえば良くねぇか?」
「そう単純じゃないよ、キッド。
ポールがそのルート外に逃げ出せば全部おじゃんだよ。」
どうしたものか。
いい情報が掴めたとはいえ、常に爆速で飛び続けるドラゴンより先に、どうやってポールを捕まえる?
「先にスティーブを対処して、その後にポールを捕まえれば良くないか?」
「ハッ、ドリル卿を捕える間に、あの男に都市外逃亡でもされてみろ。俺たちじゃ追うのは不可能だ。」
「それに、ポールの狙いはスティーブじゃなくてヘンリーだぜ。
漁夫の利でヘンリーのメモリーカードでも盗まれたらそれこそ思う壺じゃねぇか。」
話が一切まとまらない。
「シャムル、君の速さでならスティーブより先にポールを捕まえられるんじゃないか?」
「北限のここから南までどんくらい距離あると思ってんの。
400キロ近くあるんだよ。流石のあたしでも体力が持たないって。」
「いや、可能性はある。」
途端、シリウスさんが2階から降りてきた。
「げっ!なんでお前がいるんだよ!?」
キッドが少し嫌そうに驚く。
「げってなんだ。げって。
ダーリンと熱い夜を過ごす気でいたからな。ベッドで待機してても来ないから見にきた。そしたらキミたちが会議をしていてな。」
相変わらず、この人は意味がわからない。冷ました顔でいかれたことを言うプロだ。
「先に結論から言うが、ワタシの同僚。天翔け屋の従業員たちと連携すれば可能性はある。」
「ま、ボスが許すかって所だが、彼なら許してくれるだろう。
南に『カムプライム』と『ライトニングライアー』が既に向かっている。2人に連絡を取れば、連携くらいはさせてくれるだろう。」
「…こう言う時は無駄に有能ですね…」
法外な料金を要求する代わりに、顧客の願いを完璧に叶える便利屋集団。
一人一人がAランク都市災害に匹敵。だから、依頼が絶えない。
「なら、決まりでいいか?」
シリウスさんの言葉に反論する者はいなかった。
「よし。」
彼女はアンサーの肩を掴む。
「今夜は寝かさないぞ。愛しのダーリン。どろどろに溶け合うまで愛し合おう。」
「…私に味方はいないんですか?」
瞬間、アンサーはシリウスさんにお姫様抱っこで2階へ運ばれて行った。
「………あー、楽しんで?」
僕には止められないよ。同情はする。
「…がんば。」
シャムルにも無理だ。
「純愛だから良しね。」
このピンク頭は敵だ。




