第四十二話 ハイパーチャージ
瞬間、日輪の姿が消えた。
轟音と共に、ビルへ思い切り吹き飛ばされた。
「お前ら、俺の子供たちに手を出しておいて、タダで済むと思うなよ。首から上とは二度も会えないと思え。」
紅色の拳が打ち付けられる。
「……アギ…ト…さん…」
「皇楓、あとは俺に任せろ。スティーブも絶対助ける。」
瞬間、背へと迫る斬撃を、裏拳一発で捻じ曲げた。
そして、研冶の開いた胴へ思い切りブロー。
突然桜吹雪が舞い散る。
顎さんの全身に切り傷が走るが、拳一本。花びらを拳だけで打ち捨てる。
一瞬にして目の前に迫った桜色の一太刀を握り込み、思い切り投げ飛ばした。
「……やれやれ、歳かな。」
「……主、美少女を投げた罪は重いぞ?」
「青二才共が。」
しかし、顎さんは炎に包まれる。
彼だって一応は人間だ。焼かれたら死ぬ。
「キミか?ワタシの愛するダーリンに火傷させたのは。」
洪水があたりに押し寄せ、炎が流されてゆく。
辺りは高次元の戦闘のせいで滅茶苦茶。逃げ惑う人々で溢れかえる。
そんな中、今までの全てが遊戯に見えるほどの音が鳴った。
「グルァアァァァァーーー!!!!」
ここにいる全ての人間がある一方を見た。
「な、何事───」
ポールが消えた。しかし、俺は一瞬見えた。赤黒い巨大な怪物が。
ビルをいくつも貫通し、ポールは何処かは消えた。
そして、その怪物は地面に降りた。
金属質…だが生物的な見た目。
太く力強い金属の両腕。
変形したドリルが口を形成し、大角が悪魔を想起させる。
尾は辺りの街灯や車を一払いで薙ぎ倒す。
天を覆うほど巨大な赤い翼。
恐らく、世界中の誰もがこの姿を見てこう答えるだろう。
『ドラゴン』だと。
「グルァアァァァァァァァ!!!」
叫び声だけで地面が揺れ、道路が陥没する。ビル群の窓ガラスは全て弾け飛ぶが、その音は一切響かない。
「………あれはまずいな。」
「……ッチ、こいつらを叩き潰すより、スティーブをどうにかしないと駄目そうだ。」
シリウスと顎さんの両者は、執行官たちから目を離し、スティーブ、いや、スティーブであることすら認めたく無いような化け物の方を向く。
「こんス……パ。すぱが、荒らしに来たよって言いたいけど、あんなドラゴンちゃん前にしたら、企画変更せざるを得ないね。」
スパークルがどこからともなく姿を現す。
普段は乱闘に姿を現し全員を爆殺する愉快犯だが、今回ばかりは味方にならざるを得ない。そう判断させるほどの怪物が、ハレミチとアスターに匹敵するほどの力を持つであろうドラゴンが、今最高潮でこちらに牙を向く。
「ガルルルルッ…」
もう正気を失っているそれは、唸り声を上げ、ジリジリとこちらに四つ足で詰め寄る。
全員が後退る。この時、全員が感じているのは『頂点捕食者を前にした恐怖』だ。
「……それじゃあ、やるぞ。」
研冶の一声によって、全員が動き出した。
まず一番最初は蒼雷公。予め彼女がチャージしていた蒼穹の電磁波を、怪物目掛け放射する。
スティーブは機械だった。だから、EMPが有効。のはずだった。
怪物は片翼を構え、赤色のバリアを貼る。
蒼い稲妻は、全てバリアへと吸収された。
そして、怪物は蒼雷公へと狙いを定める。
尾の先から、赤黒い光がどんどんと迫り上がっていく。
脊椎をなぞるように灯された光は、首元で止まった。
怪物は大顎を開く。
それは炎と呼ぶにはあまりにも強かった。
地面を融解させ、抉り、焦がし、切り裂いた。
熱線、レーザービームとでも呼ぶべきそれは、この場にいる全員をまとめて薙ぎ払おうと振るわれる。
…これは防ぎきれない。直感した。
咄嗟に龍嶺を召喚し、蒼雷公への直撃を防ごうとした。
熱線が当たった瞬間、龍嶺の体が千切れるのが分かった。
俺の左腕に、焼き付くような痛みが走る。
召喚物と召喚者の感覚はリンクしている。だから、破壊されれば当然痛みを伴う。左腕は動かせない。
しかし、彼女が逃げる時間は作れた。
「てんきゅー黒髪クン、大好きだゾ。」
瞬間、顎さんの拳が怪物の首元に打ち込まれた。
怪物は怯み、熱線が止まる。
だが、目にも止まらぬ速さで顎さんを掴み上げる。
「ク…ソ…どんな馬鹿力だ…」
怪物は顎さんを地面に叩きつけ、その地面ごと殴り潰した。
しかし、怪物の拳が少しづつ浮き上がる。
「………へっ、強くなったな。」
無理矢理拳を押して立ち上がる顎さん、しかし、彼の片足には強烈なダメージが走る。彼は片足が義足。今の衝撃で、義足は壊れてしまった。今、彼は片足で体を支えているんだ。
途端、顎さんを囲むように水が。怪物の頭部へ炎が押し寄せる。
上は大火事、下は洪水とはまさにこのことだ。
1000pvありがと❤︎愛してる




