第四十一話 アンノウン・プラン
オーダー・セレモニーは、明日へと迫っている。
僕の元に、赤髪の女性が訪ねてきた。
『レイラ』と名乗る彼女は、オーダー・セレモニーへの参加を控えるべきということ、『ヘンリー』を救ってほしいと頼んできた。
正直、オーダー・セレモニーはきな臭い。裏に、誰も知らない計画が隠れていようと、なんら違和感はない。
見え見えの釣り針に知らずにかかるほど、僕らは馬鹿ではない。
けれど、これは直感だ。
『参加しない』方がまずい。そう感じた。
僕の直感は結構当たる。この特技?で当たり付きのアイスを乱獲したり色々していた時期もあるが、最近は形を潜めていた。
なにがまずいのかはわからない。が、とにかくまずい。気がする。
しかし、参加したとて面倒なことになるのはほぼ確実だ。でなければ、わざわざ警告をしに来る人なんていない。
そこで、僕は『2人の仲間』に連絡を取った。
『壊天瓦解』我らが師、大轟顎。『無限の漣』アンサーの元カノ、シリウス。
彼らに護衛を頼んだ。
顎さんは二つ返事で了承してくれたが、シリウスさんは渋ったから、アンサーの部屋に入れてあげると言ったら即答してくれた。
2人は一般市民に紛れて貰うつもりだ。
正直、この2人がいればハレミチ並みの化け物が相手でもない限りまあ大丈夫だ。
けれど、どうしてだろう。
妙な胸騒ぎが治らないんだ。
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某日は、快晴だった。
都市中央区の大通りではパレードが開かれ、大きな軍用車の後ろ、隊列を組んだ治安官たちが、軍人のように行進している。
僕は選挙カーのような車の上に乗せられ、取って貼った笑顔を浮かべる。
僕以外のみんなはこの選挙カーの周りで、執行官たちと共に行進を続ける。もちろん、練習なんてしてないからみんな動きがバラバラ。
正直、騙されてる感が否めない。けれど、自分を餌にしなければ池の主を釣ることはできないとわかっている。
僕の真隣に立ち、大衆に手を振る男は、いきなり僕の肩を持つ
「この秩序を記念する日に、我らが友が姿を見せてくれたことに心から感謝したい。
我々、異能犯罪捜査課及び治安局は、秩序に立つ薪の英雄と共に平和な世の中を築き上げるため、互いに手と手を取り合うことを、ここに宣言しよう!」
男は僕の手を掴んで、その手を高く掲げた。それと同時、大衆は拍手の渦が巻き起こった。
その拍手は、僕らに向けられていない。
ポール・ロビンソンの創り出した「虚構」へ向けられているのだ。
「そして、私は友を救いたいのだ。
悪しき混沌に手駒とされ、あのメカニカル・コーポレーション、ホットネスト・ファンクラブとも対立させられてしまった哀れな同胞たちを!
英雄たちを手駒とした絶対悪。『ヘンリー・フリーマン』の尾を掴み、今日ここで、太陽の元へ引き摺り出してやるのだ!」
「──私の目は誤魔化せない。
この地下に居る。『スティーブ・フリーマン』!
姿を表せ、今ならまだ間に合う。私を信じるんだ。」
………演説に割って入りたい。が、相当な話術。僕が何か言う隙を作らない。それにだ、内容だって、完全なでっちあげじゃない。事実と虚構をバレないように融合させている。
今、僕にできるのはスティーブが地面に上がってこないのを祈るだけだ。
「……ギュルルルル…」
轟音と共に割れた地面から、赤色の機体が姿を見せる。
こういう時、僕がいると大体最悪の方向にことが進んでしまう。
地面に立った瞬間、周りに立っていた執行官、2位から5位までの皆がスティーブに武器を向ける。
そして、世論の目が突き刺さる。
「スティーブ・フリーマン。都市刑法第67条に則り、ここで逮捕する。」
群衆を見廻し、男はニヤリと笑った、
「そして───、ヘンリー・フリーマン。
都市刑法第99条の規定に則り、ここで即刻死刑とする。」
待て。待ってくれ。
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…どうせ、こうなることはわかっていた。
ポールは、私の持つ知識を求めている。この子のために私が作ろうとした物。
「不老不死」を実現させるための生命維持装置。
けれど、こんなもの世にあってはならない。
消えるかもしれない命。それをどう紡ぐか。その人の足掻きが、未来を作ると教えられたんだ。
…この子にな。
「スティーブ、私のデータバンクをここに置いて君は逃げろ。そうすれば、君だけは生き残れる。」
───沈黙。それは否定だ。
「……大丈夫、君はひとりぼっちじゃない。
12人の家族がいる。ずうっとだ。孤独とはもう、おさらばできるんだ。
怖くなったら夜空を見てみろ。そして、輝く星々にその名を刻め。」
「……ギュウゥゥ…ガルルル…」
「『真の姿』…。」
いざという時。スティーブの命が危うくなったときのための最終保険。変身したのなら、もう元には戻れない。
そして、変身したのなら、私の全機能は停止する。
「────いいか。今か、永遠に無いかだ。
本気で君は、それを求めるんだな?」
「……ギュゥゥゥゥゥゥーーーーン!!!!」
咆哮。そして、彼らに中指を突き立てる。
執行官たちへの、彼が知る限りの挑発だ。
「……生きろ。」
無機質な機械の声で告げるしか無いのが、とても悲しい。
もう一度、彼をないはずの腕で抱きたい。
全機能アンロック。人格モード、オフライン。データ処理。バックアップ消去。
『ドラゴニックモード』オンライン。
スティーブの拳が、硬く握られる。




