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イマジナリー・ライク・ア・ジャスティス  作者: もちもちアゲイン
第三章 リターン・トゥ・サイド・オーダー
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第三十五話 ドント・リーブ・ミー・アローン



「……よし。これで点検は終わりだ。」


スティーブの機体は、いつにも増して赤々と輝いている。

今、彼は休止状態に入っていて、電源を入れれば再び稼働する。


「……なぁ、ソル。」


ヘンリーが、僕に声をかける。


「もし、私がいなくなったらの話だ。

恐らく、スティーブは怒りで君たちにまで牙を巻くかもしれない。その時は。」


「引っ叩いてでも止めてやってくれ。」


「縁起でも無い事言わないでくれよ。」


ヘンリーの声はどこか寂しげで、哀しさを感じる。


「スティーブはな、繊細なんだ。

この身体になってからと言うもの、スティーブは一定のリズムの振動や音を聞くと、ある種の興奮状態になってしまうんだ。

そうなれば、体の権限を無理やり停止させない限り、目につくものを、全て叩き壊す。」


「私がいれば、止められるかもしれない。

けれど、もし、私がいなくなったら。スティーブから家族が奪われたら。

彼は怒りのまま、自分の意思で全てを滅ぼすだろう。

…私の妻、スティーブの母親が事故死した時、スティーブは我を失った。

そして、自身の故郷を滅ぼしたんだ。」


「…長い話になって申し訳ない。

ただ、これだけは伝えたかったんだ。」


僕は音声の鳴る機体の背に手を当てる。


「…任せてくれ。君の息子は、君が思うより強い。」


────────────────────────────────

都市災害の現場にエリが巻き込まれた、まぁ、彼女なら問題はないだろうが、一応俺とキッド、ヘヴンは応援に向かう事にした。


都市中央区への電車は止まっていたから、久々にバスを利用する事にした。

駅前で降りると、巨大な怪獣の死体が横たわっていた。

一瞬、エリがやったものかと思ったが、大きな斬撃の後からして、剣士の仕業だろう。それも、相当練度の高い。ソルに匹敵する剣の腕の可能性がある。


怪獣の死体に触れようとした、その時だった。

辺りは快晴だと言うのに、雷鳴の音が聞こえた。晴天の霹靂というやつだろうか。いいや違う。

「ちょいまちー。それ、鬼ヤバのヤツだから。さわっちゃだめー。」


金髪、随分派手に加工をしたスーツ、赤のジャケット。

ピンク色の風船ガムをくちゃくちゃと噛みながら膨らませ、俺たちに手を振った。


「お前は、何者だ。」

俺は一瞬で振り向き、槍を構える。


「えー?あーし知らないヤツ、この都市にいたんだー。

治安局執行官第4位『蒼雷公(そうらいこう)』、って言えばわかったり?」


…相当厄介なやつに出会したようだ。

彼女の噂は予々。執行官の鉄砲玉担当。何処からともなく雷鳴と共に現れ、電撃で全て解決する。

逸話が真実である限り、俺たちに勝ち目はない。


「黒髪クンたちさー、どっかで見たことあんだよね。

なんだっけ、薪のなんちゃら?それでしょ。絶対それだ。」


俺は2人に視線をやる。

所々の様子から、こちらに対する警戒の薄さが見て取れる。

先に出し抜ければ、可能性がある。


「あぁそうだ。

それがどうした?」


正気かお前は!?

キッドは馬鹿正直に俺たちの正体を明かす。


「あー、やっぱり?

なら、ラッキー。」


「何がだ。」

気だるげな様子の蒼雷公を睨み、龍を3体召喚する。こいつがどれだけ通用するか。


「…あーしさ、今日の仕事に、英雄クンたちとっ捕まえて情報叩き出せ。ってのがあんだよね。

それと、シンプル暇だから。」


蒼雷公は、指を擦り合わせる。

蒼穹の雷が走り、空気が文字取りピリつく。

恐らく、レックレスより電撃の火力は高い。


「……もうやるしかないね。

……どう?勝てそう?私たち、多分皇楓君の支援しかできないよ。」


ヘヴンは、俺に耳打ちする。


「…厳しいと見た。

隙を作って逃げるぞ。」


「んじゃ、まず黒髪クンたちのターンね。」

蒼雷公は両手を広げ、打ってこい、と言わんばかりに挑発する。明らかにこちらを舐め腐っている。


「まず隙を探そう。そこからだよ。」

ヘヴンは指を鳴らし、夜の結界を開く。

辺りは静寂に包まれ、梟の声だけが響く。


「おっ結界じゃーん。良いの持ってんね。」


「キッド、行くぞ。」


「任せてもらおうかッ!」

言葉と共に、俺たちは飛び出す。

音もなく、キッドとヘヴンの銃弾が四方八方に飛び交う。

龍の存在を、隠す為だ。


上方向から、ビルと同等の質量を持つ龍が蒼雷公目掛け翔る。

地面は大きく穿たれ、交差点の真ん中に巨大なクレーターが空く。


煙の中、電光が閃く。

ヒールの音が、一歩一歩こちらに近づく。


「なら、今からあーしのターンね。」


瞬間、辺りは蒼穹一色となった。


「エクス・パルス。」

技名をつけるタイプか、と思う暇はなかった。

ドーム上に雷のパルスが広がる。

ビルの電気、信号の電気、あたりの電気自動車、広告板の電気ありとあらゆる電気がショートし、煙を上げる。

奴のパルスが影響を与えるのは機械だけじゃない。俺の頭にもだ。

頭が揺さぶられたように痛む。全身に電気信号が駆け巡り、鳥肌が立ったり、全身の筋肉が収縮する。異常な体の反応が引き起こる。


「ど?あーし、強いでしょ。」


「安心してよ。殺しちゃったりはしないしさ。」

瞼が痙攣して何も見えない。

わかるのは、ただヒールの音が近づいてきていることだけだった。


コツ。と、俺の前に立った音が聞こえた。

やっと、目が開きそうだ。

…その時、俺はその人物が蒼雷公でない事に気がついた。


「待て待て。俺たちがするのは取り調べってだけだ。

なにもここまで痛めつける必要はない。」

男の声だ。


「えぇ。おじさんさぁ、空気読みなよ。今からあーしがビリってしてから取調室に運ぶつもりだったのに。」


「…アンタ、そのビリで一体何人殺してきたんだ。」

刀を抜くような音が聞こえる。


「おい、エリだったか。こいつらを運んでやってくれ。」

体がピンク色の光に包まれて、浮かび上がる。多分、エリは無事だったんだろう。


「まいいや。おじさんがあーしの遊びに付き合ってくれんならいっか。」


────────────────────────────────

皇楓たちは一撃でボロボロ。体から焦げた臭いまでするレベル。

幸い、命に別状はなさそうね。


研冶は太刀を、金髪の子に向ける。

金髪の子は指を2本前に差し出す。


「一撃で満足させてやるよ。」


「一発で伸びたらはおもんないよ。」


二つの技は、クロスした。


勝破巻斬(かっぱまき)。」

「エクスギガレール」


稲光と、納刀の音が同時に聞こえた。

この1秒は、とても長い。雷の音も、凪がれてる。


瞬間、金髪の子が膨らましていたガムがパンっと音を立てて割れた。

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