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イマジナリー・ライク・ア・ジャスティス  作者: もちもちアゲイン
第三章 リターン・トゥ・サイド・オーダー
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第三十四話 ロング・タイム・ノー・シー



路地裏にある、小さいお寿司屋。けれど店内はとても綺麗に片付けられていて、居心地がいい。

厨房の前、猫の置物の隣には一つの写真が飾られている。

そこには、どこまでも幸せそうな親子が写っていた。


あたしの前に、暖かなお茶が置かれる。良さそうなものに見えるけど、奥でパックのお茶をレンチンしただけだったのを見てる。

「こんな物しかなくてすまない。いい物は昨日お客様に出してしまったんだ。」


カウンターに座るあたしと、厨房にいる研冶の目が合う。


「それで、俺がアンタをここに呼んだ理由はわかるか?」


あたしは無言で首を横に振る。


「…ニュースでやっていただろう。

ファンクラブの壊滅と、それに伴う未曾有の大災害。それを受け、我々執行官はあの戦争の当事者に取り調べを行う事にした。」


瞬間、あたしは理解。

…多分、誘い込まれたわね。

警戒はしているつもりだった。けれど、どうやら彼の方が何枚か上手だったみたいね。


「…ネタは割れてしまったか。

仕方あるまい。俺は、アンタを殺そうなんて気は毛頭ない。

ただ誠実に、質問に答えて欲しいだけだ。」


…恐らく、彼は今あたしの表情で読み取ったわ。

あたしが勘づいた事。今逃げ出そうとしたことを。


研冶は包丁を取り出し、まな板の上へ置く。

「一つ。アンタたちが討伐した、『ファンクラブ』の怪物。アスター、だったか。その遺体は、どうなった?」


「……知らない。

遺体は、多分廃研究所にそのまま置きっぱなしなはずよ。」


「……そうか。情報提供感謝する。」


次に、彼は砥石を取り出し、それを水に浸す。


「二つ。先日未明、俺の同僚が廃研究所近辺を、山ごと全て燃やし尽くした。そのアスターの遺伝子を、後世に残さない為にな。

彼のデータによれば、アスターの『右手小指』だけどこかにいってしまったらしいんだ。

それは、どこだ?」


「…知らないわよ。

ソルか朧師匠かが切り裂いたんじゃないの?」


「三つ。」

包丁を研ぐ、カリ、カリという音が静寂に響く。


「アスターの遺伝子情報は、もう誰の手にも渡らないか?もう、誰も知らないか?」


「……………えぇ。

少なくとも、もう誰も彼女を造らないわ。」


包丁を研ぐ音が、ぴたりと止まった。


「造らない?

造れる可能性のある者が、いると言うことか?」


途端、心臓が跳ねる。やばい、ヘマをした。


「答えてくれ。

その者は、今どこにいる。」


あたしの答えは、今人の命を懸けている。

返答次第で、彼は殺されてしまうかもしれない。

そう思うと、言葉が出せない。


「…アンタが答えれば、多くの命を救えるかもしれない。

だから、答えを言うんだ。」


「………ぁ…」

喉から息と共に、声にならない音が漏れる。


コンコンコン。

お店の扉がノックされる。


「……今日は休業日だ。悪いが後日──」


バキ!

木の扉が、割れる音がした。


「…は?」


黒髪の、かっこいいお姉さんが店に入ってきた。

あたしは、彼女を多分知ってる。


「やぁやぁ。いつ振りだったか?」


「アンタは…」


「キミが執行官にワタシを勧誘してきた日が懐かしいよ。

けれど、もうワタシはあのクソ野郎どもの下で働く気は無いんだ。」


「…はぁ。また冷やかしに来たのか、『シリウス』。」

黒髪のお姉さん、シリウスは一切研冶にビビらず、ワタシの隣に座った。


「小腹が減ったんだ。何か作ってもらおうか。」


「人の店の扉を壊しておいて図々しいにも程があるぞ。」


やばい、あたまがこんがらがってきた。

この二人、関わりがあるの?もし、アンサー大好きのシリウスがさっきのを聞いちゃったら…中央区は更地になるわね。


「…その前に。

ワタシの愛する者に一度でも触れてみろ。殺すぞ。」


聞かれてた…!

最悪、あたし自身だけでも守らないと…


「…アンサー、だろう。

彼はもう俺の取り調べを受けている。そして、俺ににアスターの遺伝子情報と、アスターを終了させる為の薬品のデータを提供してくれている。

少なくとも、彼の安全は俺が保証する。

しかし、他の執行官が彼を狙うかもしれない。その時には、シリウス、アンタが彼を守れ。」


「だが、彼が再びアスターのような存在を生み出そうとした時は別だ。」

「その時は俺が斬る。」


シリウスの口角が下がった。

「そうか。」


研冶は包丁を置く。

瞬間、研冶の首に剣が押し当てられる。

あたしに見えなかった。速いとか、そんな次元じゃ無いわ。


「どうする?この場で死ぬか?」


どうにか、このピリついた空気を払拭するべく、あたしは適当に会話を回した。


「…ねぇ、二人って、関わりあるの?」


「ワタシとアンサーは、ここの元常連だ。ワタシとアンサーが離れ離れになってからも、ワタシはちょくちょく顔を見せている。」


「毎回定休日に押しかけて扉を壊すのにはうんざりしてきてるけどな。」

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