第三話 ビジネス流のやり方
瞬間、シャムルが凄まじい力で壁に打ち付けられる。
「哀れなドラ猫。ヒーロー気取りか?」
稲妻の中心にいるのは、機械仕掛けの爬虫類。
ブースターで空を舞い、蒼白色の雷を纏う。
「あの形…ワニか!?」
「残念不正解、『モササウルス』だ。」
稲光と共に、皇楓目掛け、その牙が突撃する。
「ッ!」
咄嗟に槍で受け流した皇楓は、『モササウルス』に龍を翔けさせる。
龍は確かに機体に命中する。
金属を擦る、ギィーという嫌な音が鳴り響く。
辺りに火花が飛び散る。
しかし、動きが止まることはない。
「効いてんのかあれ!?」
「わからない、だが攻撃する以外ないだろう。」
『モササウルス』は泳ぐ様に空を飛び、キッドに向かって突撃する。
キッドは銃撃を浴びせるが、どれも乾いた金属音が鳴るだけ、まともに効いているのかはわからない。
「うおっ、危ね!」
体を大きく逸らし、『稲妻の銛』を避ける。
しかし、避けた『モササウルス』の側面が開き、数十発の小型ミサイルが飛ばされる。
「なんでもありかよこいつ!」
キッドはミサイルを迎撃するべく、発砲する。
いくつかは迎撃に成功したが、大半は取りこぼしてしまう。
「避けろ避けろ!」
爆破一つ一つは大したことがないが、地面を覆うほどの量ならば、回避不能の大打撃となる。
「安心しろ。俺は正義を語りにきたんじゃない。
───ツケを払わせにきたんだ。」
瞬間、シャムルが『モササウルス』に強烈な踵落としを喰らわせる。
凄まじい破壊力。
『モササウルス』が地に伏せる。
「んじゃ、ツケを踏み倒させてもらおっか。」
口元ついた血を、ぺろりと舐め取る。
(なんて威力、あの足、機械式の義足か?
恐らく、義足にブースターでも付けてるのだろう。)
「修理費用は高く付くぞ。」
『モササウルス』は一瞬にして青い閃光を纏う。
「いッ……」
機械の足に通電し、シャムルの体に電気と共に、耐え難い苦痛が走る。
しかし、一瞬にして皇楓とキッドの隣に移動してみせた。
「あちゃー、相性わっる…」
「無理はするな。
隙を見て、一撃離脱で行くぞッ!」
言葉と共に、『モササウルス』の頭部目掛け龍が翔ける。
龍が直撃した『モササウルス』の頭部の装甲は凹み、内部機構が露出する。
「効いているぞ、このまま攻撃を続けろッ!」
「あい承知!」
キッドは前に走り、剥がれ落ちた内部機構へ攻撃を仕掛ける。
正確に放たれた弾丸は、配線のようなパーツへ確かなダメージを与える。
瞬間、光が絶えると共に帯電が切れる。
ダメージを負い、動きが鈍った『モササウルス』に、シャムルが畳み掛ける。
音速を軽々と超える蹴りが、四方八方から飛び交う。
重力を無視するが如く、空中を駆ける軌道が捻じ曲がる。
(まさにカートゥーンから飛び出してきたみてぇな、ぶっ飛んだ力だな。)
『モササウルス』は沈黙した。
「止まった!今のうちに脱出するぞ!」
叩き破られた壁の上部から朝焼けが差し込む。
「んじゃ、あばよ!」
キッドは煽る様に手を振る。
ブースターを破壊されたモササウルスは、もう飛ぶことはない。
しかし。
「おい、勘違いしてねぇか?
いつから、此処に来たのが『俺だけ』だと思ってた?」
その言葉を信じるなら。
「δ部隊、『アサルト・ファランクス』出撃許可。」
言葉と共に、ゲートが反対側から叩かれる音が聞こえる。
「…来ちゃったっぽい、『鋼鉄の重兵』が。
さ、逃げるよ。あたしの腕に捕まって。
死んでも離さないでよ。」
シャムルが皇楓とキッドの腕を掴み、力を入れる。
「一瞬だから。」
「なッ…」「はぁ?」
空気の破裂音と共に、3人は跡形もなくその場から消え去った。
「チッ、ここは現実なのによ。」
メカニカル・コーポレーション第九工場から約10km、八番街、郊外。
遠くで、けたたましい警報音が鳴り響く。
閃光の如く、3人の英雄が
まるで、元からいた様に出現した。
「ふー、おわり!」
「ッ!ここはッ!?」
「本当に一瞬じゃねぇか!」




