表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イマジナリー・ライク・ア・ジャスティス  作者: もちもちアゲイン
第一章 「デイ・アフター・デイ」
18/22

第十八話 俺がしてきたことを

書き溜め使い切ったので多分頻度下がります



毒の痛みは、もう感じない。

首に力を込める。

金色の光が、傷口を大地の如く包み込む。

血の感覚は、もうない。

心臓も、再び動き始めた。


「俺はやり直す。最初から。」


手に持つ槍へ、龍がたなびく。

龍が、槍に一噛み。

その姿は、三叉に分かれていた。全てを守る盾、龍嶺の力は、俺と共にある。

今、「天下無双の三叉槍」と成ろう。

暗い路地を、黄金の光が満たす。

隠れる影を失った、暗く大きなムカデは、光に苦しむ。

奴は、常に光を敵視する。闇にしか、居られない。光に、当たれない。

のたうち回り、金切り声を上げるその頭部を、一突き。

グチャリと、肉を断つ感覚を感じる。

槍を引き抜くと、黒い重油のような汁が、槍先から零れ落ちる。

路地に張り巡らされたムカデの体は、崩れるように地面に落ちていった。

あぁ。

終わって…ない。

合流、しなければ。

端末を開き、位置情報を確認する。

どうやら、この周囲に、キッド達がいるようだ。

そこへ向かおう。


────────────────────────────────


「貴方…気は確かですか…?」

アンサーが、明らかに怒気を孕む。


「───勿論。俺はふざけも、皮肉を言っている気もない。」

ヴラドも、いつもと違い、低く言う。


「皇楓を置いていく…?冗談じゃない。」


「学者卿、君の考えの方が冗談だろう。

まず、君が死んだら全てパーになる。君はほとんど戦えないんだ。

それに、俺が死んだとしても、支援も、移動も、全部朽ちる。

…俺だって、荒龍卿を見捨てたくはない。

だが、今は優先順位が違う。君なら分かるだろう。」


沈黙は、無限に感じられる。

「………………クソ喰らえ、ですよ。」


「それを言うのなら、ハレミチに言うのだな。」


「ともかく、皆に合流したら助けに向かうぞ。それまで、耐えてくれる事を祈るしかない。」


「──こればかりは、私も神頼みですよ。」

────────────────────────────────


アンサーから、通信が入る。

「──皇楓が、単独でシャドウ・リヴァイアサンと交戦中。ソル、エリ、ヘヴン、ベンジャミン、エイヤの5人を除く皆が集まり次第救助に向かいます。」

…最悪だ。

あのムカデは、狙った獲物を執拗に付け回す。

皇楓は確かに強い。でも、タイマンなら、ムカデには勝てない。

このタイミングで…

ほんと、あたしたちは運に恵まれない。


「─────アンサー、さっさとしろ。

俺は、あいつを死んでも助ける。」

キッドが、珍しくドスの聞いた声を出す。仮面の下で、途方もない殺意噛み締めている。そう、直感した。


スティーブが地面を殴り、咆哮。そうとうキレてる時の合図だ。

「落ち着け。私たちには、皇楓を信じることしかできない。」

ヘンリーが、冷静さを保って言う。


レヴェルは無言で、剣を地面に突き刺す。

目には、確かに涙を浮かべていた。

あたしは、そんなレヴェルの背中をポンと叩く。


「だ…大丈夫、だよ。皇楓…は、強い奴…だから。」


彼女の顔が、急に変わる。


「シャムは無理しないで!いいから、休んでて。」


フォローをしたつもりが、こっちがフォローを入れられてしまった。

ちぇ。


瞬間、すごい嫌な気配を背に感じた。また、鎌を喉に押し付けられたみたいな感覚がする。

…来た。本能がそう言った。


「…来たな。俺が、俺が絶ッ対にぶち殺してやる。」

キッドが、銃に弾を込める。


「ガンマン卿、落ち着け。」

いつのまにか、ヴラドとアンサーが現れていた。


「…ソルが早く来ない限り、勝率は1%以下です。

…遺書を書いておくべきでしたね。」

アンサーが片眼に手を当てる。


「────おい、俺今思いついたんだけどよ、ワンチャン賭けられねぇか。」

キッドが、一切視線をずらさずに言う。


「──提案なら、早めに言って欲しかったですよ。」


「多分、ハレミチの野郎は俺たち…っつうよりシャムルをつけてるんだろ。なら、合流ポイントまで行けば、向こうから来てくれるんじゃねぇか。」


確かに、言いたいことはわかる。


「…試す価値はありそうです。

素直に、奴がついてきてくれるという条件付きですが。

──実行できそうですか。」


アンサーが、こちらを見る。

「…無理、だよ。…さっき全力、使っちゃったから。」


「俺も無理だ。一気に大人数でテレポートは出来ない。1人ずつしたとて、間に合わない。」


途端、スティーブが唸り声を上げる。

手をドリルに変え、地面を叩く。


「地下から無理矢理…やれないか。6人なら、スティーブで運べる。」


妙案だ。スティーブの地下の移動速度は相当。

今からでも、十分間に合いそうだ。


「…頼みますよ。スティーブ。」


皆がスティーブの機体にしがみ付き、スティーブは地面にドリルを突き刺した。

機体は想像よりつるつるで、滑りそうになる。

移動中、これで落ちたら…考えないようにしよう。


────────────────────────────────


「──遅。予定の時間を1時間近くオーバーしてるよ。」

あの子たちの作戦は上手くいっていないらしい。

でも、アタシは助けには行かないかな。

ここで待つのが唯一の役割だし。


「エイヤ殿、私たちは信じて待つ事しかできない。

彼らは手こずっているだろうが、きっと、上手くやってくれるはずさ。」

ベンジャミンは、アタシとは正反対の、呑気な事を言う。

彼はいい奴だけど、こんな甘さには欠伸が出る。


そんな事を思っていたら、地面が砕かれる音が聞こえる。

目の前のコンクリートが、赤い拳に貫かれ、そこから、機械のボディが姿を現す。


スティーブの背から、6人くらいが一気にどっと降りる。

全員土で軽く汚れているが、無傷に見える。


「アンタたち、まさか、とんずらして来たわけじゃあないよね?」


「まさか。ハレミチの誘導にはおそらく成功です。

あとは、リベリオスの到着を待つのみ、でしょう。」

アンサーが、土で汚れた白衣を脱ぎ捨てる。ほっそ。Mサイズかそこらのワイシャツなのにダボダボ、内臓入ってるのかすらわかんない。


スティーブのドリルの回る音が、辺りに鳴り響く。

が、アタシは気づいた。スティーブを黙らせ、耳を覚ます。

───誰かが、こっちに歩いて来てる。

なんか、よく分からないけど、多分とんでもない力を持っている。そう感じる。

これが、ハレミチだ。きっと。


「──はぁ。年始の初仕事がこんなデカいのになるとはね。」


アタシはさっと立ち上がり。立てかけていた傘を手に持つ。指をパチっと鳴らし、クラゲちゃんの触手を2本召喚する。

先手必勝、その言葉通り、ビルごと、触手で貫く。

確かな感触を感じる。命中した。

でも、弾かれた。

足音は、少しづつ、こちらに近づく。


「───やば。」そう、自然と言葉に出てしまう。


二発目を打つか、相手の出方を見るか。出すカード次第では、絶対的な死が待っている。

そう思うと、手が止まる。心臓が、珍しく、早く動く。

即決、できない。


足音が近くなる、瞬間、路地が黄金の気で満ちた。比喩でもなんでもなく、輝いている。

無神論者のアタシでも、「神」の一字が脳裏によぎる。

相当の威圧感。

龍に、睨まれてる様だ。

…龍?


「安心しろ、俺は味方だ。」

どこか懐かしくて優しい、それでいて、アタシが大嫌いな声が聞こえた。


よく見た黒髪、プラチナみたいに輝く瞳。黄金の…角?

顔立ちは、憎たらしい『皇楓』そのものだ。

でも、あいつには角も、尻尾も生えていない。

それに、槍の形状も違うし、こんな神々しい気なんて持っていない。

アイツはアタシにキャリーされまくってた。

アタシより3歳かそこら若いのに。

アイツはアタシより絶対に弱かった。体も、心も。

なのに。

…アタシより先に、『覚醒』、しやがった。

─────チッ。


「──生きてたんだ。死ねって思ってたよ。」

なんでこいつが。


「──俺は、あの程度で死ぬ訳には行かないからな。

……お前に、助けられた。ありがとう、エイヤ。」


殺したくなるくらい、穏やかで優しい笑顔を浮かべる。

なんでこいつが。

『あの子』を、否定したのに。

クソガキが。


「アタシが助けた?なに抜かしてんの。きっしょ。」

口ではいつものペースで暴言を吐く。でも、心には余裕がない。

アタシがこいつに抜かされた?

クソガキ程度に?

信じない。こんなんじゃ、『あの子』に顔向けできない。

アタシを残して逝った、唯一の家族に。

久しぶりに、焦った。


「皇楓ッ!信じてたぜ兄弟!」

キッドがダッシュで近寄り、クソガキに抱きつく。


「やはり、貴方はその程度では死にはしない。でしたね。」

アンサーが、ニヤリと笑う。


「へっ、…死んだら墓にビンタしてやろうと思ってたのに。」

シャムルが、泣きそうな目を擦った。


「皇楓のバカ!危ないことしないでよ!」

レヴェルが、号泣しながら、クソガキの頭をポカポカと叩く。


「───荒龍卿、よく間に合ってくれた。」

ヴラドの声には余裕はなく、笑顔もなかった。

 

そんな、10秒が、まさに永劫の長夜(エイヤ)のように感じられた。


さっきまで穏やかな顔をしていたクソガキが、一瞬で強張る。


「気をつけろ。強者がやって来る。」

三叉槍を地面にとん、と当てると、黄金の巨龍が、五体、宙に現れる。

今までクソガキが召喚してた龍は、精々体高2m、長さは15mあるかって程度だったが、この巨龍は、ほぼ高層ビルと同じ大きさだ。


「──今度の気配は…本物だよ。ハレミチ、来ちゃった。」

シャムルが、地面を軽く蹴る。

…しょうがない。

死にたくないから、真面目に戦おう。


「────エイヤ。」

クソガキが、アタシの名を呼んだ。


「背中は、任せるぞ。」

そう言って、拳を突き出した。


──────はぁ。


「アタシに刺されてもいいなら、預けな。」

アタシは、その拳にビンタをした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ