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イマジナリー・ライク・ア・ジャスティス  作者: もちもちアゲイン
第一章 「デイ・アフター・デイ」
16/22

第十六話 金曜日は夜空が煌めく

壁と共に背を踏み抜かれ、ビルの内部へ。

恐ろしい鉤爪を持つラプターが、地面を軽く蹴る。

一瞬で天井に張り付き、金属片だらけの口内を曝け出しながら、こちらへ矢の如く、人体の急所を正確に狙い迫り来る。

噛みつきかと思えば、空中で体を捻り、後脚の鉤爪を振るう。それを、紙一重で避ける。一閃は、僕の後ろにあった大きなコピー機を一撃で両断。多分、爪に擦りでもしたら、斬られた部位はおさらばだろう。


咄嗟に剣を振い、真空波を飛ばす。

一発で、ビルは轟音を上げて崩れ落ちる。

しかし、その中で、指を鳴らす音が聞こえた。


土煙が去った後、僕は輝く光のバリアによって守られていた。


「もう、サポートばっかりやらせないでよね。」


心の中で、確かにそう聞こえた。

「あぁ、誘導は君に任せた。」心中、確かにそう呟き、僕は瓦礫の山からさっと離れる。


数秒後、リベリオスが瓦礫の山から姿を現す。

攻撃の準備は整ってるとも知らずに。


空から、エリがエアで弓を引く動きをする。

右手を構え、ゆっくりと、左手を引く。

動きと共に、星空の様に、空中が光で満たされる。


「ヒーローは、技名を言うものよ♪」


そう言うと。


「そうね、ギャラクシーディザスタ、とかどうかしら?」

長い技名と共に、天の川が氾濫する。

リベリオスの立つ一点へと集約された銀河は、まさにビックバンとも言える爆発を引き起こす。瓦礫すら消し飛ばした爆発の後、残っているものはなかった。しかし、地面に一つの穴が残っていた。

人くらいの大きさなら、簡単に入れそうな。

─────まさか。

咄嗟にエリの方を見る。

空中にいる彼女の背後へ、リベリオスが跳躍していた。

「エリ!後ろッ!」

声を出した頃には、遅かった。


「……え?」


彼女が振り返っていた頃には、恐ろしい鉤爪は振るわれていた。肉を断つ、血飛沫が飛ぶ音が鳴る。顔に、生暖かい彼女の血がかかる。

ただ、1秒にも満たないその瞬間が、永遠に流れている気がした。

また、大切な人を失うのか。そう思うと、吐き気が止まらない。

動けない。声が出ない。


地へ落ちたエリは、ひらっと地に落ちる桜の花びらの様に着地する。


「─────ッ……もう、痛いわね。」


彼女を見れば、首元から腰あたりまで、ざっくりと切り裂かれ、ダラダラと血が流れ落ちていた。

普通の人間なら、というか、大半の異能力者でもほぼ即死の一撃だ。


彼女は手を傷口へ翳す。

淡いピンクの光が、傷をやさしく照らす。


「だ…大丈夫なのか?」

動揺し過ぎて、小さな声しか出せない。

出血量や切られた深さ、大きさからして、助かったとて失血で時期死んでしまう。そう、直感した。


「…痛いけど、止血は出来たわ。この程度、致命傷にはならないわよ。」

にかっと、可憐な花の様に少女は笑う。

と共に、金属の影が、少女と共に地へ伏せた。

押し倒すような形で、リベリオスが、エリにニヤリと笑いかける。僕は、この光景に吐き気を覚えた。


「お嬢さん、中々の美人じゃないか。

今夜、ボクの部屋においでよ。楽しもう。こんな奴らなんて捨ててさ。

キミだけなら、ボクの権力で生かしてあげるさ。」

ラプターは追撃するでもなく、彼女の腹に爪を突きつけながら、ジョークのように、そう言った。


「────そう。」

ただ、一言。一切の抑揚を感じない。

瞬間、乾いた金属音が鳴り響く。

リベリオスが、宙を舞った。吹き飛ば…いや、殴り飛ばされた。

エリは無言で立ち上がり、恐ろしい真顔になる。


「───決めた。あなたを殺すわ。」

雰囲気が明らかに変わる。

ピンク色の、可憐な花の光が、僕には地獄の業火のように見えた。


「──はぁ、今のはやっぱなしだ。」


そう言いながら、空を舞うリベリオスに、彼女の蹴りが叩き込まれる。

エリは、強い。僕でも、多分互角以上には渡り合えない。

普段は弓やらビームやらで攻撃する彼女だが、本気で怒れば、殴る蹴るをやり出す。その破壊力は、格闘戦を得意とするスティーブすら殴り飛ばすほどだ。彼は一度、エリにドリルを折られている。

ブチギレたエリは、まさに「銀河の災害」と言える。


蹴りを受けたリベリオスは、ビル街の奥地まで吹き飛ばされる。

それを追尾する様に、エリも、爆速で飛んでいった。


…任せよう。

剣を背負い、端末を開く。


────────────────────────────────

「エリがリベリオスを誘導中。指示を。」

アンサーへ、ソルが通信する。


「了解しました。貴方はキッド達に合流してください。」


アンサーはそう言うと、ノートパソコンを閉じた。


「今から待機ポイントを移ります。」


ふと、路地から音がすることに気がついた。

カサカサ、カサカサ。

這う音だ。

高所から、低所から、左右から、前後から。

蟠の中に、迷い込んでしまった。

─────望まれない客人の登場だ。


「──あのムカデは、本気で俺たちを狩り立てる気だ。」

ヴラドが、ポケットからナイフとハンドガンを取り出す。

武器を失ったヴラドを狙うとは。狡猾で卑劣な狩人め。


奴は、常に俺たちを付け狙ってきた。

直接戦闘能力が高くない俺たちが、エリやソルと離れるのを、今か今かと待ち望んでいた。


それが、今日だった。


槍を手に取り、力を込める。


「荒龍卿、防御は任せたぞ。」

ヴラドが、俺の方に手を置く。

「あぁ。」と、短く返事をし、龍を呼ぶ準備をする。


「──何もかもが順調には行きませんね。

とにかく、撃退と逃走に専念しましょう。

皇楓、ヴラド、死んでも死なないでくださいよ。」

アンサーが、手に持つ改造銃に弾薬を込め、影の方に向ける。

彼から、今までにない、焦りと怒りを感じる。


「───掛かってこい。シャドウ・リヴァイアサン。」


まず最初に動いたのは、アンサーだった。

乾いた発射音と共に、翡翠色の弾丸を一発発射する。

そして、炸裂。

狭い路地内で、弾は無数に反射する。

軽く100回以上は肉を貫く音が鳴り響く。

と共に、黒い影が、こちらへ降り注ぐ。

明らかに、その牙は輝いていた。


「気をつけなさい。奴の毒牙に当たれば、死にますよ。」

アンサーが警告する。

俺も、聞いたことしかない。

奴の毒牙は、即死だと。

効能は不明。抗体、ワクチンもなし。いや、作る必要がない。

打つ間も無く、死ぬからだ。


カサカサ音と共に、全方位から、その毒牙が飛んでくる。

右、左、上、下、右、左上、右上、下、左下。

次がどこかわからない。油断は、それ即ち死。心臓が高鳴る。

黒一色の異常に裂かれた節足が、あたりで蠢く。


次が見えた……正面ッ!

槍を構え、大きく振るう。

黄金の『龍嶺』が翔け、毒牙の軌道を捻じ曲げる。


「今ですッ!ヴラド、テレポートを!」

アンサーが叫ぶ。


「3人同時は無理だ!1人ここに残らねば!」

ヴラドが、ハンドガンの音と共に言う。


考える間も無く、叫ぶ。

「2人は先に行け!俺は後からでいい!」


コマンダーとテレポーター、ヴラドとアンサーが生きていなければ、他の皆は死ぬ。

絶対に、2人を死なせてはならない。


「───ッ…皇楓、死んだら許しませんからね。」


ヴラドはアンサーの手を掴み、消えた。

彼らは逃げ切れ……。

瞬間、首筋に激痛が走った。

暖かな血が流れる感覚がある。

噛まれた。

本能が、そう理解した。

心臓の鼓動が、瞬く間に遅くなる。

目が開けられない。

何も感じられない。

───神経が逝ったか。恐怖すら感じられない。


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