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イマジナリー・ライク・ア・ジャスティス  作者: もちもちアゲイン
第一章 「デイ・アフター・デイ」
15/22

第十五話 木曜日は全てが順調

あたしは、「カートゥーンの怪物」。昔のアニメのギャグシーンみたいなダッシュなら、真似できる。

逃げ切れる。

その一心で足を進めた先は、みんなの元だった。

勢い任せに走ったから、止まれずにぶっ倒れる。


「シャム!大丈夫!?」

レヴェルが、あたしに駆け寄る。彼女の目には、うっすら涙が見えた。

腕の中の少年を見て、3人はぎょっとする。


「お前!あんときの坊主!」


「仮面の…お兄ちゃん…?」

少年は、掠れた声しか出せない。


「シャムル、この子は?」

ヘンリーが、すっごい優しい声で聞く。パパもこんな感じだったっけ、と思ったけど、あたしにはその頃の鮮明な記憶はほとんど残ってなかった。


「……へへっ。助けた。ハレミチから。」

さっきの声とは比べ物にもならない、小さな声しか出ない。喉が焼き切れたからか、恐怖のせいか、どっちかわからない。


瞬間、みんなの空気が凍った。

キッドはぶっ倒れ、スティーブは拳を握りしめ、レヴェルは剣を持つ手の力が強くなる。

瞬間、アンサーから通信がやってくる。


「──無理は禁物、と言ったでしょうが。

とにかく、貴方に被害がなくて良かったです。」

どこか焦った声色のアンサーは初めてかもしれない。


──────────────────────────────


アンサーが、僕に電話をかけてきた。

「申し訳ありません。予想外な展開になってしまいました。

ハレミチは六十二番街ではなく、六十八番街に出現しました。

そちらへの支援へ向かってください。」


「悪いけど、行けそうにないよ。

…もう僕たちも、リベリオスに出会った。」


朝のニュースの今週の占いで、『万事好調』だと見た。

でも、全てが、順調には行かないな。


「やぁやぁ。キミたちのことは噂に聞かせてもらってるよ。

うちのバカウナギとポンコツイモムシをぶっ壊したんだってね。」

スーツ姿の男は、飄々とした態度で、手を広げて見せる。

堂々としているが、一切の隙はない。すぐに反撃できる姿勢だ。

挑発のつもり…だろうな。


「さ、ツケの返し方は一択。当ててみて?」


こいつが言いたいことはわかってる。


「命、そうでしょう?」

エリが先に口を開いた。いつもの様な可憐な声とは違い、少し低く、わずかな緊張と、明確な殺気に満ちていた。


男は拍手をし、高笑いをする。

「ハハハハッ!大正解!

っと、前戯はこんな物で十分かい?」


男は、地面に置いていたアタッシュケースをひょいと掴む。

今回の戦いは移動しながら。目標は、イーストパッセージ区まで。多分、相当きついだろう。


「さぁ。」

男は、咥えたタバコをぺっと吐き捨てる。

僕は、背負う剣に手を掛ける。

エリは光り輝く弓を手にし、すっと軽く腰を捻る。


「始めよう。」

「始めようか。」

「始めましょう。」

3つの声が、低く重なり合う。


アタッシュケースが金属音を立てながら展開し、無数の装甲板が男の体を包み込んでいく。

直後、ピンク色のレーザーが、男の体を飲み込んだ。

「先手必勝、でしょ?」


煙が晴れた頃、そこには、何も立っていなかった。


「変身中に攻撃するなんて、礼儀がなってないなぁ。」

声と共に、背後から蒼白い閃光が閃く。


ドゴォォーーン!

轟音と共に、僕らが立っていた地面を豆腐の様に砕いた。

ビルの5階くらいまで、大きく吹き飛ばされる。

僕は、咄嗟にビルの壁に剣を突き刺し、そこに捕まる。

…相当な威力だな。直撃はまず即死だろう。


「シャル・ウィー・ダンス?」

そこには、二足歩行、細身な体格、後脚の大きな鉤爪。

恐竜の様なメカが立っていた。

この見た目は…確か『デイノニクス』だ。

しかし、すぐに一体だけではないことに気がついた。

ビルの上、中、周囲の建物の影。

小さな個体が、今か今かとこちらを覗く。

──────囲まれていたか。


「リベリオスの由来は知っているかい?

復讐者、さ。」


後脚の恐ろしい鉤爪が、ギラリと輝く。

「─────1にステップ。」

声と共に、窓を突き破って、三体の小型メカが、こちらに飛び掛かる。

間に合わない。

僕はビルの壁を強く蹴り、鞘に仕舞われた剣を鞘ごと壁から引き抜くと共に、一閃。

白色の斬撃が飛翔。

ビルと共に、1体を両断した。しかし、2体は逃した。

そして、地面に背を向け落下。

それを追う様に、残りも飛び降りる。

人間とメカなら、絶対にメカの方が重い。

2体の鉤爪が、喉仏まで迫る。


ピンク色の矢が、2本。

メカの頭部を撃ち抜いた。

僕はくるっと回転し、地面に着地。上を見上げる。

光を纏い、空を飛ぶエリが、こちらにウインク。僕は、小さく瞬きを返した。

瞬間、背にもの凄い衝撃を喰らった。

鋼鉄の蹴りが、背に突き刺さる。

息が止まる。

声が出せない。


コンクリートの壁が、大きく凹む。

「───おいおい、ダンスバトル中に油断はしないでくれ。」

声が、真後ろから聞こえる。

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