祝祭と、針路?
……鳥、だなあ。
「ほんと、目覚めたららいうちゃんが居なかった時はどうしようかと思っちゃった。」
うん。僕もびっくりした。気づいたら外に居た。
起きたら誰もいないし砂だらけだし。異世界にでも飛ばされたかと思った。あっはっは。
僕らは今、みんなでキングビーストの街に戻り、ご飯を食べている。
そして鴨のこんふぃ……ではなく、パサパサな鶏肉を食べている。
流石にこんふぃーは無かった。こーんふれーくも無い。
「さすがはコカトリスの大人の肉。さっぱりとしていますが……硬いですね。」
「ん、なんでー?」
「大人のコカトリスは巨体ですから。普段はなるべくエネルギーを使わないようにじっとしているんですよ。しかし、獲物を見つけると一変し、勢い良く襲いかかって尾羽の棘を突き刺すんです。だから少し白っぽいんですよ。加工前のやつは。鶏より運動しないもんですから。」
へー……。
「よくそんなに知ってんねー。」
「本で読みました。アリオールギルドには書庫がありますから。」
そうなのか。……ハイヤルギルドはあの、砂漠の中にぽつねーんとあった廃ビルみたいな建物が、拠点なんだと思ってたけど。
アリオールギルドもあんな感じだとしたら……中全部図書館?じゃないと、本置くスペース無さそー。
「……お肉、今からでも柔らかくならないかしら。」
「ばあちゃんは硬い肉には舞茸が良いっつって舞茸入れてたな……何肉であろうとも。」
そう言いながらジュンは肉を噛みちぎった。
「安いお肉だから致し方ないですね。らいうさんがもっとお金を持っているか、ジュンさんがもっと太っ腹であったら、もっと立派なお店に入って、高価なものも頼めたんですがね。」
フューが一旦食べるのをやめて、やれやれというふうに言った。
フューううう……僕の借金いくらだと思ってるー……?
……実際、僕の借金今いくらなんだろ。スマホ見てみよっと。
えーっと。わっはっは。ゼロがいっぱい。
乾いた笑いしか出なーい……。
「フュー、お前いっつも一言多いんだよ。」
「そうですか?普通だと思いますけど。ジュンさんが短気なだけでは?」
むっきーっとジュンがフューの頭をぐりぐりする。
「やめてよ、上品じゃないわ。お金をいっぱい稼げば、らいうちゃんだって借金を返せて、美味しいものだって食べれるようになるわよ。」
「僕頑張んなきゃなー……。」
「よし。そうと決まったらうまい飯を食うためにじゃんじゃん倒しに行こう。次どれ倒す?」
ジュンがフューから離れて言った。
フューがスマホを取り出して、モンスター図鑑を開いた。
その時、サンクが少しばかり……目を伏せた気がした。
そうして、静かに切り出した。
「あのね。お願いがあるのだけれど。私、行きたい街があるの。」
いつになく真面目な顔だ。
行きたい街……?
「どこだよ、それ。」
「フラウよ。」
「あー……あのパリもどきですか。」
フューがスマホをすっすっといじった。
フラウ……竜の方の図鑑をフューが開く。
僕は、そこに書いてある文章を読み上げた。
「あまい、かおり、で、ゆうわくする。かおりを、かいだものは、ふらうの、めいれいに、さからえなくなる。」
「なんである有名な図鑑みたいな読み方するんだよ。色々とひっかかるだろ。」
うーん、甘い香り?
「……どんな香りかなあ?」
「甘ったるい香りですよ。吐きたくなるような。暖かい温室の中に安物の香水のバニラの匂いを600倍にした空気が漂っているかのようなニオイです。」
全ッ然わかんないけど、なんかすごいニオイだってことは分かった。フューはものすごい嫌そうな顔をしてるけど、ほんとにそんなので誘惑できるのかな?
「お願い!」
サンクがパンッと手を合わせた。
まーそこまでサンクにお願いされたらなー。聞かないわけにはいかんかなー。
「いーよー!」
「俺も構わん。予定もないしな。断る理由もない。……ただし、もう少しだけキングビーストを楽しませてくれ。」
「自分も、別に構いませんよ。サンクさんが行きたいのなら、自分はどこまででもついていきます。……あのにおいも、我慢します。
ま、ジュンさんがこれ以上何を見に行くのかは謎ですけど。」
そういや、キングビーストのマスコット買ってないなー。まあ、借金だらけだから無理だけど。
借金があると多分、必要最低限のことしかできないんだと思う。さっきも、ちょっと高そうなお店に入店拒否されたし。あ、だから激安定食屋で祝杯をあげてるんだよー。お酒はないけどね!飲めないしなー。気分でジュースを頼むこともできない。借金持ちだから。
その後、キングビーストの防具商店でまたジュンが気持ち悪ーくなって、そして、僕らは馬車に乗って次の街に走り出した。
……ねえねえ?ちょっと、あのさ。たぬきに、乗ってみたいとは思わない?あ、そ、思わない?思わないの、ふーん。
フラウが放つ香りは、らいうが前後不覚になった、あのニオイです。




