第六章エピローグ
気分が、悪い。
悪くならないわけがない。
嫌な気持ちだ。
荒ぶっても、洗っても、忘れられない。あの温かみ。
……あまり水を使うのは良くないな。いつ水が止まるか分からない。
(ほんと、さっきまでの君の荒ぶりようはどうしちゃったのーーー?僕にはよく分かんなかったんだけど、圧倒的に僕らの方があの因縁のおおかみよりも強かったけどなあ。)
「血、が、見え、た、の。」
(血?)
「そ、う、血。」
(たー…ぬ?)
もう、見えない。
洗ったから?それとも、無かったものと信じたいから?
(とりあえず、ご飯食べよ!お腹空いた!)
「ん。」
さっきまでそんなこと言わなかったくせに。
私はもう一度道路に出た。
狼は、居なかった。
「な……」
(え、え、誰か盗ってっちゃった?お肉……うううう……)
スマホにスターが入った形跡もない。
しょうがないか。
「歩、くぞ。」
(どこに行くー?)
「コン、ビニ……があった場、所。もしくは、食料、があり、そうな、場、所。」
「たーらい!」
たぬき娘は未だ私の精神世界の外に出ている。戻し方も分からない。
(りょーかい!じゃあじゃあ、僕が[巨大化]して、君を乗せて、びゅううーんって行こう!)
「い、や、それは悪、手。」
(えっ!?)
「SP、を回復する、手段がな、い間は、それを、する、のは危、険すぎる。」
下手したら、たぬき娘を失う。
彼女を助けるために、できるだけ私の持てる最善を尽くしたい。そのためには、このたぬき娘を失うわけにはいかない。
私もたぬき娘も、復活できるとは限らないのだから。
……出かける前に、記憶の中でたぬき娘が手に入れたスキルとテクニックをノートにまとめておこう……いつの日か、たぬきのらくがきをしたあのノートだ。
マジック[たぬき召喚]
効果…無限の可能性を秘めたたぬきを召喚する。たぬきに拒否権はない。
スキル[加速]
効果…動く速さが3倍になる。
SP…10
取得条件…敵の注意が逸れている状態で、より速く走ろうとする。
スキル[ウォーター・メイキング]
効果…杖の先っぽから水を出す。水の強さは使用者のイメージで変わる。
SP…30
取得条件…全身にスキルで作られた水を浴びる
神スキル[野宿]
効果…たぬきの寝床。姿はランダム。一日一回まで。
SP…100
取得条件…神からもらう。
このくらい、か。
テクニックは一個もなかったな。
(ねえええ早くううう!お腹空いたあああ!)
たぬき娘が尻尾でばしばしと私を叩く。
ばしばしばしばし。ちょっと痛い。
それでもたぬき娘はやめない。
「そういえ、ば。私の心の、声って、聞、こえてる、の?」
(ん……そういや聞こえないや!あははははは!)
頭がおかしいたぬきだ。つまり、どんだけこういうふうに暴言を思っても、伝わらないということか。
(あ〜!今、失礼なこと考えてたでしょー!)
「そんなことない。」
(伝わるもんは伝わるんだからね!僕、君の分身?みたいなもんだしい?)
……そうか。
「とり、あえず、コン、ビニ、行、こう。」
(あっ!流した流されたうわあああ!)
「めん、どく、さ。」
(ああああああああああひどいいいいいいい!)
私は学校に持っていっているリュックの中の教科書を机の上に取り出し、傘とお財布、スマホ、ソーラー電卓をリュックに入れた。食べ物を入れるためだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
コンビニ跡地に行くと、たくさんの人間がコンビニの中から物を取っていっていた。お金を払っている様子はない。
いいのだろうか……?窃盗にならないのだろうか……?
と、その中に、見覚えのある、正確にはたぬきの記憶の中で見覚えのあった、姿を見つけた。
コンビニに入ろうとして、他の人間がその人間を押しのけて入っていき、入るタイミングを失っている。
息を大きく吸って、吐いて、もう一度入ろうとして、今度は出てきた人間に突き飛ばされて尻餅をついている。
ふむ……たぬきの記憶の中では、もう少し堂々と、乱暴に生きていなかったか?
……。
…………。
(どしたのー?)
足元のたぬきが私を見上げた。……言うべきか。
「い、や、なんでも、ない。た、だ、お前、は潰、される、かもしれない、から、リュック、に入、って。」
(潰されるのはやだーーー!って、え?えー。そんな選択肢があるなら、はなからそこに入れさせてもらっときゃ良かったあー。楽々できたのに。)
自堕落なたぬきだ。
たぬき娘を力づくで押し込んで、リュックのチャックを閉めた。
(た、たぎゃまあああ!)
たぬきらしい断末魔をあげているが、まあ、大丈夫だろう。……あれ。断末魔って、死に際の叫びだっけ。まあいいや。大丈夫だろう。
私が足をコンビニに踏み入れかけた時、呼び止められたが、無視をした。
コンビニで食料を詰め込み、電卓で計算して、その分のお金をレジにおいた。なんか、後で怒られたら嫌だし……。
そのすぐ後で、そのお金を奪い去った人間が居たが。うん、まあ……うーん。
そういうことも、ある。
私がもう一回外に出ると、先程呼びかけてきた人間に、手首を掴まれた。
「……な、に?」
「らいう!さっきから話しかけてんのになんで無視すんだよ!」
あーあ。面倒なことになった。
第六章はここで終わりです。
読んでくださり、ありがとうございました。
そういえばこのエピソードで丁度100話ですね!
まだまだ物語は続きます……皆様のご愛顧に本当に感謝しております。
第七章では、らいうたちは舞踏会に参加したり、サンクの昔話を聞いたりします。
舞台は、花装の街、フラウです。
フランス・パリをベースにした、リボンとピンク溢れる街です。
サンクがドリーマー戦線で降り立った街ですね。
ミファスムと争っていた竜がいた街でもあります。
次の更新は10月となります。
よろしくお願いします。




