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第七章プロローグ


 「で、お前は誰なんだよ。」


 こっちが聞きたいよ。いや知ってるけど。


 「らい、う。」


 ジュン、は腕を組み、足をてんてんてんと……つまり、すごく苛々した雰囲気を醸し出しつつ私を見た。


 まだ私達はコンビニの前にいる。


 「確かに見た目はな! ただ……中身が、ちげえんだよ。何かが。」

 「そ、う、かな。」


 (何かって…だいぶ違うと思うけどねー!第一(だいいち)ほら、たぬきたぬきしてない!)


 たぬき娘が憤慨した様にそう言った。心の中で。

 

 違う。いや、たしかにたぬきたぬきはしてないけど。多分、たぬき娘は馬鹿っぽいけど、私は馬鹿っぽくないんだと思う。雰囲気が落ち着いてるっていうか。

 あ。思ってもたぬき娘にはもう伝わらないんだった。


 「そん、な、こ、と、ない。」

 「いや、あるだろう!たぬたぬしてない!」


 あ、まじでそこなのか。……たぬきたぬきよりもより間の抜けた感じになったな。


 (ふへ、たまには僕もぴったりぴたりと当てちゃうことだってあるのだよー!)


 ……。


 私リュックをぎゅむうっと抱いた。


 (ああああ!実力行使に!ひどい!いたいけなたぬきをどうするというのか!)


 こうするんだよ!


 (ぎゃああああああ!)


 私はさらに力を強めた。


 「なんかそのリュック、叫んでねえか?」


 む。たぬき娘の声は私しか聞こえないんじゃないのか?


 「そ、う?」

 「いや雰囲気というか。そんな気がしただけだが。」


 なんだ。聞こえてないのか。


 (え。待って、僕、たぬっていう声すら出なくなっちゃったの?というかずうっと無視されてんですけど!ねーねーーーーー!)


 「たぬううううう!」


 (あっ出た。)


 やば。


 「……そのリュックの中から、たぬっていう声が聞こえたんだが。」

 「……こ、れは、最、近、流行、りの、たぬきリュック。」

 「はー……都会には色々なものがあるんだにゃー……じゃなくて!」


 この人間は時々語尾に、にゃあ、を付ける。……やめた方が良いと思う。


 「かわ、いこぶって、る?」

 「違うにゃ好きで言ってるわけじゃないにゃ方言にゃ!……方言なんだよ!」

 (やっぱり僕が今まで聞いていたのは空耳じゃなかったんだあ!)


 方言……?


 「疑いの目で、みるに……な!」


 はん。


 「鼻を、鼻を鳴らしやがったなこの野郎!」


 へっ。


 ジュンの怒りが沸点に達したらしい。腰にさしてある剣の鞘に手をかけた。ふむ……扉んとこに剣がつかえそうな装備の仕方だな。


 ……よし。意識は逸らした。

 このリュックの中のたぬきに気づかれると、色々と説明が面倒だ。はやめに会話を終わらせて逃げよう。逃げるというか、どっか行こう。


 この、ジュン、の前から消えよう。


 私はここから立ち去る適当な口実を伝えるために口を開いた。


 と、その時だった。


 緑と赤とオレンジの何かが、ジュンをふっ飛ばしていった。ジュンは、何かを言っていた。


 ……は?


 私は呆然と立ちすくんだ。


 その何かが通り過ぎたところは、地面がえぐれていて、そして、そこには真っ赤になって倒れる人、誰かの腕、誰かの足、そして誰かの……。



 そこで私の何かのリミッターが外れた。何かっていうのは分からない。でも、何かだ。


 「あ…あ…あ…あ……」


 声が出ない。何か、冷たいものだけが頬を伝う。


 雨が降ってきたらしい。髪が濡れる。


 「……っ…」


何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か

何にも分からない、分からない、分からない




 その時、遠くから声がした。


 人間、が、うごめいている。


 私は怖くて、震えて、動かない足で歩くのを諦めて、伏せって、腕を使って歩き始めた。

 やっと彼のところについた私は、スマホを取り出した。


 その人は、体中血まみれで、左腕がなかった。

 アプリを震える手で開き、ポーション中、をタッチする。

 出てきたポーションを、その人の口の中に流し込む。


 リュックの中にある限り、口の中に注ぎ込む。




 ……この世界は、死んでいるのか?

 死にやすいのに、生きにくいのか?


 最悪だ。



 最後の一本を使い切った時、彼が目を覚ました。

 傷口は塞がった。左腕はないままだ。血は止まった。


 「ああ、らいうか……っ…夢の中のはずなのに、死ぬほど痛えな。」

 「夢、じゃ、ない。現実、だ、よ。酷い、けど。」



 うごめいていた人間……私がポーションを流し込んだ人間……ジュンが、自分の左腕を見て、叫んだ。



 私は、耳も塞がず、じっとその姿を見ていた。


第七章がはじまりました!


7000pv到達いたしました!!!!本当に嬉しいです!!

いつも、閲覧していただきありがとうございます!


侵食された現実世界には危険がいっぱいです。悠長に外で話しているとこういう目に合います。……拠点大事。


10月といえばハロウィンの月ですね。ハロウィン!ハロウィン!本編そんな場合じゃないか……

来羽達の仮装絵とか描いてみたいですね……描けるかなー……


よければ★やリアクションなど、よろしくお願いします。励みになります。

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