反撃!
水を全身に浴びたノックバックから立ち直ったキングビーストが鎌首を持ち上げた。
水も滴る良いドラゴン!ま、僕も負けず劣らず水も滴る良いたぬきだけど!
すかさずジュンが予定通りにスキルを放つ。
「スキルスイッチ[アイスシールド]![アイスシールド]![アイスシールド]![アイスシールド]![アイスシールド]![アイスシールド]![アイスシールド]![アイスシールド]![アイスシールド]![アイスシールド]おおおおらああっ!」
ジュンがパタリと倒れた。
と、同時に、ジュンが展開した氷の壁も倒れそうになる。さあさあここで僕の出番だ!
サンクが僕のスマホ上でスキルボタンを押したのを見て叫ぶ。
「スキルスイッチ![君臨!たぬきんぐ!]!」
空中での大爆発!
たぬきんぐのおっ通りだああ〜!!頭が高ーい!
空中から落ちてきた僕は倒れそうな氷の壁をもふもふの手で押さえた。
「スキルスイッチ[エートル・マリオネット]!」
サンクが僕のスマホを持って言う。
「スキルスイッチ[建国!たぬきんぐだむ!]」
僕の周りに、魔法陣がたくさん出現し、少しばかり抜けた顔のたぬきが、魔法陣から、まるで舞台にせり上げられているみたいに、108匹出現した……。えっと、つまり、ゆっくりと魔法陣の中から出てきた。にょきにょきっと。うーん。どこに収納されてたのかなあ。
「スキルスイッチ!「ハイ☆パワー」!」
SPポーションを飲み干したフューが枯れた声で叫ぶ。
「らいうちゃん!命令を!」
よおっし!今こそ[君臨!たぬきんぐだむ]を手に入れた時から考えていた詠唱を使う時!
「たぬ!たぬぬぬぬ!たぬたぬたぬ、たぬたんぬぬぬ!」
(しょくん!ゆくぞ!君臨せよ!たぬきんぐだむ!)
「たんぬぬぬ!」
(きんぐだむ!)
「たぬたぬたぬ!たぬたぬたぬたぬぬぬ!」
(賞賛せよ!すべての生けるものよ!)
「たぬー!」
(ほめろー!)
「たぬたぬたぬ!たぬたんぬんぬ!」
(賛同せよ!我が信念に!)
「たんぬー!たんぬー!」
(さんせー!さんせー!)
「たぬたぬたぬ!たぬたぬ!」
(蹂躙せよ!その力で!)
「たんぬー!」
(ひれふせーー!)
「たぬ!」
(総勢!)
「たぬたち!」
(ひゃくはち!)
「たぬたちたたたぬーーー!」
(108発撃てばーーー!)
「たぬたぬぬぬー!」
(いっぱつあたるー!)
「たっぬぬーーー!たうんたっと!たぬぬたぬっち[たーぬーたーたぬ!]」
(いっくよーーー!ハンドレットエイト!スキルスイッチ[ウォーターメイキング]!)
「たぬぬたぬっち![たーぬーたーたぬ!]」
(たぬきすいっち![ウォーターメイキング]!)
たぬきたちの目の前に、水色の魔法陣が出現する。
僕がずぶ濡れだったのは、このスキルを習得するためにサンクに水をぶっかけられたせいだ。まったくう。ぶっかけるのはうどんだけにしてほしい。ぷんぷんたぬき。
「スキルスイッチ![ウォーターメイキングフォルティッシモ]!」
水鉄砲というよりは小さな水球の様なモノと、サンクが発動した鉄砲水のような、あるいは滝のような勢いの水がキングビーストに猛烈に降りかかる!サンクの水色の魔法陣はちびたぬき達のよりも、そして僕のよりも大きいからね……。決して僕がひ弱とかそういうわけじゃないし。ないからね!
……思ったよりも当たってるな?僕のたぬきたちの水球。フューの[ハイ☆パワー」で強くなってるから、きっと108のうちのその内の何発か当たんなくたって、少しばかりくらいは効くはず、だよね?
「スキル……スイッチ…![崩壊!たぬきんぐだむ!]」
サンクがヘトヘトの状態でスマホをかざした。
たぬきたちが魔法陣に、沈み込んでいった。多分、あいるびーばっく、って言ってる。
同時に僕の変身が解ける。
さあ、僕の出番だ。
僕は、再度キングビーストの頭上に放り出された。
拳を固める。
「グガアアアアアアアアア!」
だいぶ弱ったキングビーストが、最後のあがきとばかりに口を大きく開け、炎を燻らせる。もう粉をまく余裕も、炎の尻尾を揺らす気力も燃やす気力もないようだ。それでも、キングビーストは、たとえ自分の口の中が焼けちゃっても、ただただ全力に、力をこめて、僕に炎を放ってくる。こようとしている。
「らいうさん!今です!」
力を一点に、一点に絞れば絞るほど、威力は強くなる、らしい。中二病ジュンからの漫画知識だ。
「スキルスイッチ![ウォーターメイキング]!」
スマホを使わずにスキルを発動する。
[崩壊!たぬきんぐだむ]の効果だ。
フューに言われるまで忘れてたけど。
なるべく体を小さくし、魔法陣に身を隠す。そのまま炎をつっきって……!
「スキルスイッチ![パンチ!パンチ!パンチ!]」
一回二回、最後のひと押しもう一回!
その瞬間、全身の力が抜けた。あ……またこれか……SP0のこの感覚ぅ……!おちるううううう!
「キングビースト、HP残り1です!」
フューが叫んだ。うっそ!僕の渾身の攻撃が通じきらなかった……だとう!?
「おりゃあああああああ!」
ジュンがキングビーストに、剣を突き刺したのが見えた。
僕がキングビーストに触れるか否か、キングビーストが消えて、サンクたちがいる地上から機械音が鳴り響いた。
《炎火竜 キングビースト 討伐完了
報酬 2000スター
ドロップアイテム
炎火竜のかけら×1
炎火竜の鱗×10
炎火竜の牙×2
炎火竜の翼の皮×1
キングビーストシールド×1
キングビーストサーベル×1
キングビーストの加護×1》
そして、機械音に被せる様に、フューがスキルを発動する。
「スキルスイッチ![ヒール]!」
死にかけのジュンも、SP切れのサンクも、全回復だ!
よっしゃああああ……あああ?
僕は、頭からべちんと地面に落ちた。地面にぶつかる直前に、たぬき変身が発動してたぬきになったけども、痛いもんは痛い!
「てぬっ!」
「大丈夫?らいうちゃん。……スマホ、返しておくわね。」
目の前に置かれたスマホを操作し、ヨロヨロの体で、カメラを開く。自撮り。
あーー。やっぱり。僕には[ヒール]効いてない。
「2000スターか……ドラゴンによってもらえる金の量はちげえんだな。」
「そうですね……これしか貰えないその割には、11000スターのスティンガーと同じくらいの強さでしたが……。」
ジュンがフューを軽く小突いて言った。あのー。すいません。
「それ、アリオールギルドで倒してるだろ。」
「そうですよ?」
「天然かよ!?もしくは皮肉かよ!?
言うのは癪に障るけどな……俺らとアリオールギルドじゃレベルがちげえんだよ!」
ジュンが怒ったような声を出して言った。ただ、倒した喜びからか、ちょっと口元がニヤニヤしている。あのー。ところでですね。僕、今SP0なんですけど。
「そんなこと知ってますよ。皮肉です。」
「このやろおおおお!」
ジュンが笑いながらフューの肩に手を回し、アホ毛あたりにげんこつをぐりぐりと押し付けた。
「なんなんですか!気持ち悪いですよ!」
「初めて俺ら四人で勝ったぞ!もっと喜べよ!」
そ…っか……!そういえば。ブルームはジュン、サンク、僕で倒してるし、ストーンモスはジュン、フュー、僕、ビアンカで倒してる。
ミファスムに至ってはサンク、僕が敗けて、アリオールぐんだ…ギルドが倒してる。デスヘルは僕とアリオールだし。
あのー。ところで今、僕のHP半分切ってんですけど。もともとキングビーストにだいぶ削られてたんですけど。あと3割なのですけども。
「そうね……そういえばそうだったわ。
そうだわ!今日はどこかレストランでも行って鴨のコンフィを食べましょう!ポトフでもいいけれど!」
「なんで選択肢がフランス料理一本なんだよ。ま、お金が足りればな!」
「全てジュンさんのおごりで行きましょう。」
「なんでだよ!」
あのー。ウキウキしてるとこ、悪いんですけども。
真面目に、やばいんですけど。
「ねえらいうちゃん!らいうちゃんは何が……ってえええええええ!?」
「どうした!?サンク!?」
「HP!HP!フュー!ヒール!早く!」
「え!?え、なんです、え!?」
あ。だんだん視界が…白身がかってきて…ああ…織田信長が手を振っている……いやあれは…犬将軍の徳川綱吉……?そっか…たぬきって…イヌ、科だもんね……。
「スキルスイッチ![ヒール]!…ふぁあ……」
フューがスキルをかけた途端に、倒れた。
え。
「いきなり眠気が……。」
サンクも倒れる。
「もしかして、まだキングビースト生きてた……!?眠気をー…誘う感じの……」
「18時になったんだよ…無理だ…抵抗できねえ……おやすみ……。」
僕らは冷たい石の上で、無防備に眠りについた……。
キングビーストは炎色反応がモチーフの竜でした。




