いず でぃす あ きゃらばん?
僕らは、街……キングビーストを出た。
砂漠の砂を踏みしめると同時に、ジュンが、事前に決めたとおりにスキルを放った。
「スキルスイッチ[アイスシールド]」
(スキル[アイスシールド]
効果…効果時間60秒の氷の盾を作成する。
SP…10
取得条件…凍らせたもの、凍っているもので身を守る。)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
しばらく後……。
砂嵐がめちゃくちゃに吹き荒れている中、僕らは四人で進む。
僕とサンクとフューは他愛もない話をしていた。
「んー……ねえねえサンク。僕ら今、キャラバンっぽくない?」
「あら。キャラバンならラクダがいなきゃだめよ!絶対ラクダがいるわ!」
「なんでサンクさんはそんなにラクダを推されているのですか……?」
「お前ら……少しは労えよ!俺を!」
僕らが前回とは違い、難なく砂嵐の中を進めているのには理由があった。
ジュンがスキルで氷のトンネルを作りつつ進んでいるからだ。
「だから時々、[SPヒール]をかけてあげているではないですか?」
「ありがとうね、ジュンくん。」
「いや、そうなんだが、こう…もっと!なんていうか…こう……!」
だってすることないしなあ……ただ歩くだけだし。ずっと賞賛しながら歩くのもなあ……怖いよ。
「スキルスイッチ[アイスシールド][アイスシールド][アイスシールド]!…ったく……」
「うーーん、そうね、冷たいジュースとか、あったら飲む?」
サンクが困った様にジュンに聞く。
「いや……そういうんじゃ…」
「分かりました。ジュンさん、自分と関係ない話をされてるのが嫌なんでしょ。」
「な!?ちげえし!」
スキルの発動先がぶれて、アイスシールドが斜めに設置された。地面に対して……斜めに。
うーん。そうなのか?フューの言う事が図星なのか?なら、ジュンについて……?
「そういえば、そんなスキルがあるなら、あの白いおばけのときも」
「ダイラタンシーザーですね?」
「そうそう、その、ダイラランラーラーラーみたいなやつのときも楽に砂漠を渡れたんじゃないの?」
あのときすっごい苦労したけど。
そんなスキルあるんだったら今みたいに……ねえ?
「このスキルは、アリオールと交戦したときに手に入ったんだ。大体、あの砂漠渡るのにSPポーション何本使わせる気だよ。スキルスイッチ[アイスシールド]」
「スキルスイッチ[SPヒール]。そうですよ。もっと自分をたたえるといいです。」
ふーん……。そういえばアリオールが…とかなんとか言ってたなー。ジュン。デスヘル倒して、僕が帰ってきた時。フューと言い争ってた……かも。大体フューと言い争ってるけど。
でー……あれ?なんの話してたんだっけ?
「なんの話してたんだっけー?」
「私の国にこんな言葉があるわ。会話というものは遡るものじゃない。……私の、友達のセリフね。つまり覚えてないってことよ。」
そうか〜覚えてないか〜。
しばらくの沈黙。
そう。人間、そうそうそんなぽんぽんぽんとぽんぽこりんと話題が出てくるわけないのである。
特に、一回話の腰を折られちゃうとね!
「スキルスイッチ[アイスシールド][アイスシールド][アイスシールド]」
「スキルスイッチ[アイスシールド][アイスシールド][アイスシールド]」
「スキルスイッチ[アイスシールド][アイスシールド][アイスシールド]」
「スキルスイッチ[SPヒール]」
「スキルスイッチ[アイスシールド][アイスシールド][アイスシールド]……」
しばらくしてからジュンが口を開いた。
「何か喋れよ!ラクダの話題でも何でもいいから!寂しくなるだろ!」
本日五本目のSPポーション中を飲み干したフューが言った。
「ですが、ジュンさん以外の話題を出したらジュンさん拗ねるじゃないですか。ほら、早くしないと日が暮れますよ?ジュンさんに関する話題なんてそうそう無いんですから。アリオール様……さんじゃないんですから。」
「うがーー!拗ねてねえし!」
ほー。フューは故意に黙ってたのか。そうだったのかー。
「でも本当よね。日が暮れそうだわ。太陽が落ちる前に神殿に、もしくはキングビーストに会えたらいいのだけれど。」
んー。餌で釣れないのかなあ?
……いや、やめとこう。きっと馬鹿な考えだと一蹴される気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
……やばい。
オレンジ色の砂嵐の中、僕らは顔を青くした。
「間に合わないわ……」
「かと言って休むところもありません……」
「まずいなーまいずだなー。困ったなーこたなまー」
「なんだよこたなまーって。……っそれにしてもおっかしいな……まっすぐ行けば着くってキングビーストの街の看板に書いてあったのに。スキルスイッチ[アイスシールド]」
うん。確かに僕も確認して……って、あ、まっすぐ?
「……あのさ、ジュン。」
「なんだ?」
「ブルームのさ、ドリーマーカルスへの道のりも……真っ直ぐだったよね?」
「……そういうことも、あるかもしれないな?」
ジュンが目をそらす。サンクが不思議そうに言う。
「ええ。ブルームからドリーマーカルスの塔まではまっすぐ行けば良くて……迷う人なんていないくらい分かりやすかったと思うけれど。」
嫌な予感がする。当たる。多分当たる。絶対当たる。たぬきんぐの座を賭けてもいい。
「ジュンは迷ったよ。」
「えっ?」
「ジュンはブルームからドリーマーカルスまでの道を、迷った。」
「えっと、どういうことですか?」
サンクとフューが、青くなった。
僕らは、今日、ジュンを先頭に、後ろから三人でついていったわけだ。
たしかにね、道順をね、道中気にしなかった事も悪いけど、もっと悪いのは、ジュンを一番前にしたことだ。
やべえ。すごーくやべえ。
「迷っったあああああああ!」
僕ら三人は耐えきれずにそう叫んだ!
「スキル、スイッチ[アイスシールド][アイスシールド][アイスシールド]……」
所在なさ気なジュン。
さあどうする!?
「どうしましょうどうしましょう」
「ここがどこだかわからないし、暗くなってきてるし……どうすればいいのよ〜!?」
「あばばばばばば」
僕らはスマホを取り出して、スキルアプリを開き、何かないかと探し始めた。
「スキルスイッチ[アイスシールド][アイスシールド][アイスシールド]」
かと言って、かとらりー、僕が持っているスキルは少ないわけで……ん!?
「スキルスイッチ[アイス」
「あったああああああああ!」
「え、らいうちゃん!?何が、何があったの!?」
「キングビーストに戻れますか!?」
いや、街には戻れないけど、ここで死ぬことは避けられそうな素敵なスキルが!
「じゃーん![野宿]!」
「野宿は嫌よー……意味がないじゃない。ここで野宿しても。死んじゃうわ。」
「まあまあそういわんなされよサンク。すごいのは内容だよ!」
僕は画面を見せた。
「神スキル[野宿]
効果…たぬきの寝床。姿はランダム。一日一回まで。
SP…100
取得条件…神からもらう。」
ふふん。
「……いろんな意味ですごいけれど……これは……だいぶ賭けね……。」
「ですね。」
「たぬきの寝床はいろいろだからねー。」
民家の下とかー。穴の中とかー。物置ー。土管ー……。
「お願い!まともなのを頂戴!」
「じゃあ行くよ〜!スキルスイッチ![野宿]!」
ぽふん。
間抜けな音のあとに現れたのは……砂漠だった。
あれ?え?
「やったわ!民家よらいうちゃん!……らいうちゃん?」
うまく体が動かないし……砂粒がちょっと痛いけど、どうやら成功したらしい?ところでサンクどこ?
「らいうちゃーん!どこー!?」
「なんでらいうだけ部屋の中にいないんだ?」
「これなら死は回避できそうですが……術者は使えない……とかですか?そんな事書いてありませんでしたよ?」
んんー。なんかこう、お腹の上?下?中?から声が聞こえる気がする……。
「だあぬううう〜だああああぬううー」
「う、上から声が聞こえるわ!」
あ。たぬしかしゃべれない。
ふーん。あー。……あ!
たしかに、主語も述語も無かった。
たぬきの寝床が出現するんじゃなくて……たぬきの寝床に僕が、変身する、だったのか!
あー……まあ、いっか、これでも!
体面積とかどうなってんのかなーって思うけど!
きっと、うすーくひらべーったくなってるんだろうな!うん!
「おい……もしかして、だが。」
「何でしょう?」
「らいう自身が変身してるのか?」
ジュンの言葉にフューがぐっと息をのんだのが聞こえた。
そーだよー!
「だぬうう!」
「まさかそんないくららいうさんでも規格外な……ありえますね。」
「え、らいうちゃん大丈夫なのそれ!?」
「だぬううう〜!」
ま〜ね〜!
あー。日が落ちる。
「らいうちゃーん!辛くなったら言うのよ……ふわあ……」
バタン。と倒れる音。
「室温が丁度いいと言うのがまた……不思議な感じが……します……すう、きる、すいっち、[ヒール]……すう……」
ばたん。
「……らいう……暖かくして……寝ろよ……?……ぐう……」
ばたり。そのセリフ……お父さんか。
外は寒い。でも、僕はあんまり外気温を感じなかった。
ビシバシと砂が体に当たる感触を楽しみながら、僕は眠りについた……。




