問題:馬車は時速何kmで走ってるでしょう?
やってきましたやってきますた!
さああ〜!
「僕のリベンジマッチの時間だ!!」
「はーい。行きますよーらいうさーん。」
「そうよらいうちゃん。無理は禁物よ。」
「馬車のほうが速いからな。」
……ぐすん。
ジャイアントたぬき……僕は経費削減のため、今度こそジャイアントたぬきでキングビーストまで行くんだああ!
そんな僕の思い虚しく、僕はずるずると馬車へ引っ張っていかれた。
「借金がああああ!借金が増えるう!」
「らいうさんが借金を気にするなんて…世も末ですね……」
向かいに腰掛けたフューが杖をタオルで拭きながら言った。あうあうホントにどうしよう!
「お金がない!」
僕が揺れる馬車の中で立ち上がって叫ぶと、ジュンが危ないから座れと押しとどめながら言った。
「大丈夫だ。払ってくれるだろう。フューが。」
まじで!?
「払いませんよ?」
フューが杖を拭く手を止めて言った。
あうーけちー。
「……けーざいりょくのある男性って素敵だと思うの。」
裏声でサンクの真似をしてみた。
「嘘を言うのはいけないと思うの。」
サンクが窓の外を見ながら言った。
う……。
「大丈夫よ、らいうちゃん。多分だけど……頑張れば借金返済は夢じゃないわ。」
ううっ。サンクは窓の外を見たまま続けて言う。嘘か真か……。10万スターくらいの借金だよ?だって。
「頑張る、かあ。」
「まあ、手伝ってやるから。な。」
ジュンがポン、と僕の肩をたたいた。
ところでサンクはなんで窓の外を見てるんだろう?なにか面白いものでも?
「なんか見えるー?サンク?」
「俺は無視かよ!?」
「あ、ごめん、ありがとジュン。で、サンクは何見てるのー?」
後ろで剣を抜こうと暴れる音と、ご乱心しないでください、というフューの声、ポカリと軽いもので何かを叩く音が聞こえた。
「窓の外……おかしいと思わない?」
「ん?」
ただただ普通に、まばらな木が見えるだけだ……草もところどころに。
「砂漠の一歩手前〜って感じがするよ?」
「えっとね、風景じゃなくて……速さよ、速さ。」
「速さ?」
ジュンが不思議そうにサンクに尋ねた。
「ええ。グランドらいうちゃんに比べてずうっと速度は速いはずなのに、ここから見る景色の流れはゆっくりなのよ。」
ふむう。確かに馬車は一時間で着くって聞いた。……グランドらいう?……もしかして巨大たぬきの事!?お洒落な言い方!
そう、そのグランドたぬき……僕は、10分走って全然だった。全然……うん。全然。
あああめっちゃ否定したい!
全然じゃないって!でも、でも、嘘ついちゃだめーってサンクに言われちゃったし!
馬車は、その6倍……どんくらいのスピードかは僕も今意識して走ってみなきゃ、わからないけど……。
スキルアプリを開いてみた。
神スキル「巨大化」
効果…なにがあろうとも巨大化する。効果時間は10分。この間はSPが0でも動ける。また、移動速度が分速100kmになる。
SP…100
取得条件…死んで、神様からもらう。
まじまじと見たの初めてかも。
分速100km……分速100km!?
ひゃっきろって。一分でひゃっきろって。
えっと、えっと、つまり、えーっと、
「分速100kmって、秒速何km?」
「は、えー…100÷60だから……」
ジュンがぷしゅうっと言った。うわー!オーバーヒートした!ジュンは算数が苦手なのかー?……あれ。逆にジュンは何ができるんだ?
「秒速1.6666……kmね。約秒速1.5kmくらいで考えると分かりやすいかも。」
サンクが人差し指を立てて言った。サンク計算速い!すごい!あうぇいさむ!どういう意味だっけ!とりあえずウインクがよく似合う!
でもでも……
「秒速1.5kmって…1.5kmってどんくらい?」
「音速が秒速340mですから……音よりは速く、光よりは遅いくらい、ですね。マッハ4〜5…くらいでしょうか?」
……。
だからそれってどんくらい……?
「……戦闘機よりも速いですよ。本当なら。」
だからそれってどんくらい!?
……あ。そっか!あーって叫んだ4〜5倍くらいの速さかー!
「あああああああああー!」
「どうしたのらいうちゃん!?」
「遂に壊れたか。」
ふむふむ。
……すごく速いってことが分かった。
で、何の話だっけ?
「それでそれで、何の話、してたっけー?」
「馬車のほうがグランドらいうちゃんよりも速いはずなのに、ここから見る景色がゆっくり流れているのがおかしいって話よ。」
うーん、確かに?
まあ、そんな難しそうな事は今いいや。
「まーそういうこともあるよ!よくあることだ!」
僕のお腹がぐうっと鳴った。とりあえず、お腹が空いた!
「お腹空いたー。なんかない?」
「急に話題を変えましたね……。働かざるもの食うべからず、ですよ。食べたいなら狩ってきて下さい。」
"僕の頭に、そのかってきて、が、狩ってきて、となって届くのに数秒かかった……"というセリフをどこかで聞いた、いや読んだことがあった気がした。
どこだっけ?なんか黒い……本?
「うーん、で、で、でじゃ〜……。」
「きっと言いたいのはdejavuね?」
「そーそれ?多分それ!?」
サンクが苦笑した。
うーん苦笑でも可愛い。馬車にお花が咲いてお花まみれになりそうなくらい!
「そろそろキングビーストに着くみたいだぞ。」
ジュンが馬車の窓の縁に肘をついて言った。陽光が顔を照らして、なかなかキマってるじゃん?
「ジュン。」
「なんだ?」
「かっこつけてどうしたのー?」
「俺はもともとクールキャラ設定だったのを思い出したんだよ。」
ジュンはフッと鼻を鳴らした。うわあ。
「え?中二病全開イタイタ人間じゃなかったんですか?」
フューが袖で口を隠しながら言った。そうだよ!ジュンがクールキャラなんてありえないよ!
「うるっせえ!ちげえし!俺は、冷静沈着リーダシップ付きまくりの勇者だし!」
「そういう事をご自分でおっしゃってしまうところなんかがより一層……」
「イタくねえし!おい!口パクでかわいそうとか言うな!かわいそうとか!」
「はい!二人とも!もう着くから!目立っちゃうから!やめてちょうだい!」
サンクがパン、と掌を合わせて言った。やーいおこられた。
ガコガコ、という音がして、馬車が停まった。
あ。金!お金!え、え、どうしよう!
「有難う御座いました。」
フューがお金を払って降りていく。正確には、スマホをピッとかざして。うっははー相変わらずのキャッシュレス決済だーー!!
「あ、あ、ありが、とうございました。」
ジュンが舌をかみながら降りていく。僕はジュンがその直後、「あー…ちゃんと払えたにゃ…」と言ったことを忘れない。……にゃ?にゃんにゃん?
はっ!そんな場合じゃない!えっと、どうしようどうしよう!
「お金……ないです。」
皿洗いでも何でもするからさ?
「スマホをこちらにかざしてください。」
馬車の御者の人は無機質な顔でそう言った。
乗れたってことはあれが起こるって思ってて良いのかな……。
急にこの人の背中が割れて、たぬき捕獲器が出てきたらどうしようかな……。
うう……。
ピッ。
《残高0スターです。貸し付け処理を行います……借用−97500スターです。》
うわーはっはっは、たっかーい。
そこにマイナスがついてるのが大問題〜。
心がチクチクするう……。
これ聞くたびにしんどいよお……。
前回は温泉に入った時に2000スター払ったんだ。その時に初めて聞いた。
たぬき捕獲器が出なくて良かったけど……良かったけど……!!
心が弱ったせいなのか、ふらりと体がふらついた。
僕は落ちるようにして馬車から出た。膝と手を地面につく。
「大丈夫!?らいうちゃん!?」
「ちょっと…あいに力がはいんあくて……」
僕のあとに精算を終えたサンクが僕を助け起こした。口が回んない。
「熱中症ですね。そういえばらいうさん、寝たりしゃべったりで全然お水を召し上がっていませんでした。」
「え!?……フュー、くん、よく見てたわね……。スキルスイッチ[ウォーター・メイキング]ほららいうちゃん!水飲んで!」
(スキル[ウォーター・メイキング]
効果…杖の先っぽから水を出す。水の強さは使用者のイメージで変わる。
SP…30
取得条件…全身にスキルで作られた水を浴びる。)
サンクの杖の緑色の方から水がしゃわーと出てきて、僕は口の中に水を無理やり入れさせられた。あばばばばばば
「がぼがぼがぼぼ」
「サンク!らいうがおぼれてる!」
そう!おぼれてう。ああ…意識が遠く……そういえば砂漠の死因一位って鉄砲水による溺死だっけ……。
「え!?え、あ!ごめんなさいらいうちゃん!」
「げぼう!」
あ~生き返った。遠くに歴戦のたぬきたちが見えたよ……?僕の脳内たぬき達はまだ死んでないけど。
「では。キングビーストに行きますか!」
そうしましょうか!
まだ来羽は子供なので、貧乏な時は生活必需品を削って娯楽を取るタイプ。




