8月-2
もうすぐ夏休みが終わる。
その事実だけで私は倒れることができる。
宿題は終わった。
テスト勉強もした。
もやしは買いためた。
今は夜。なにしよう?
ピンポーン。
来客か。
「はい?」
インターホンに出る。
「らいうちゃーん?」
なぜ、どうして、志伊が私の家を知っている!?
「帰れー。」
覇気のない声で言ってみる。少しばかり幽霊っぽい。
「ここだよね…あの寺娘が言ってたことが正しければ……」
寺娘…?恵のこと……?私を売ったのか……?
「ここじゃない。ここじゃないよー」
裏声でそう言ってみる。
志伊がなにも言わなくなったので、そっと、ドアの丸窓に近寄る。あの魚眼レンズみたいなやつ。
……鍵穴だ。志伊は、鍵穴を見てる。
「開くかな……?」
は?
今、なんて?
私の頭に、逃走、という二文字が浮かんだ。
「開かない。帰れ。」
私がそうインターホンごしに答えると、志伊は悲しそうな目で言った。
「鍵開けの仕方調べてくれば良かった。」
やばいやばいやばいやばい。
これが俗に言う、ストーカーってやつか!
私の頭に、闘争、と言う二文字が浮かんだ。
キッチンに行き、包丁を手に取る。
こわいこわいこわいこわい。
またインターフォンから声がしなくなった。
ドアの丸窓に近づく。
「ひいいいいいいいいいいい!?」
目があった。赤い目。こわい!!
多分、志伊だ。こちらを覗いてる。
私は心から、私にとっての110番、つまり恵に電話をかけようかと思った。困ったときの恵頼み。いつでも頼ってねと本人が言っていたし、問題ないだろう。というかさっき志伊が言っていた事について、問いつめなければならなひい!
窓が不意に、ガタガタと鳴った。カーテンを開ける気にはならない。怖すぎる。
なぜこんな怖い思いをしなければならないのか。
布団に潜って、震える。
恵に、メッセージアプリで連絡を取ろうとした。
っししがこっわいういお
駄目だ。意味わからん文章だ。送らないでおこう。
手が震えている。嫌な汗がにじみ出る。
だって、窓の外から、かぼそく、らいうちゃ〜ん?ここにいるの〜?って聞こえてるんだ。
ガタガタ震えているうちに、私は寝てしまった。…なぜ寝た。なぜ寝れた。……恵と長く一緒にいるせいで、肝がすわってしまったのかもしれない……。
恵は別に来羽を売ったわけではありません。




