あ、頭がおかしい奴がいる!?
「そんなことが……」
なるほど。
それで、珍しくルイにしては、「絶対に装備買わなきゃだめ!」って強い口調だったりしたのか。
はっきりものを言おうとしてたんだなー。
「うん〜、それで、たぬきさん含めて〜、絶対に残り30人くらいを倒して〜、100位に入って〜、特別なお肉をもらって〜、リルちゃんの大好きなステーキを焼いて〜、仲直りするの〜。」
「じゃあ、絶対生き残って、その事をリルに伝えなきゃだ。」
うん、今度こそ自分の言葉で、ちゃんと伝えるの、とルイは力強く言った。
僕は正直言って、あんまり生き残る理由がなかった。
ただ、死んだらブルームにたぶん戻っちゃうだろうし、デスヘルがどこにあるか知らない僕にとっては、ここにいるままで……いや、デスヘルを倒してから炎系スキルを手に入れて温泉に浸かってからデスヘルを離れたかった所存であったけど。
その提案はだめかな?
「あの、ルイ。」
「ん〜?たぬきさん、どうしたの〜?」
「一緒にデスヘルを倒しに行かない?倒して、温泉に浸かった後なら僕、倒されてもいいからさ。」
「え〜……。たぬきさん、何がしたいの〜……?でも、そのお願いは受け取れないの〜…。二人でドラゴンは無理だし〜…それに、火力がたぬきさんだけじゃ足りないし〜…死んじゃったら終わりなんだよ?」
ダメそう。
じゃあ、諦めて殺されるしかないのか……?
「随分と、楽しそうな話をしているね?ボクも混ぜて?」
無駄なキラッキラを後ろに感じた。
ルイに背を向けるかキラキラに背を向けるか……。
どちらもちょっと危なそうだったので、壁に背をつけて、そのキラキラを見た。
「やあ。探したよ。」
嫌な予感しかしない。
ルイがさっき言った通り、僕の知り合いは狙いが僕の可能性が高い!
なぜなら、僕は弱たぬきだから!
弱たぬき遊離反応で弱たぬきは搾取される運命だから!
何言ってるのか自分でもわかんない!現実逃避はいけない!
ああ〜!こんなんだったらとっととルイに、殺してもらえばよかったあああ!
だってこの人、確か、女性をいたぶるのが趣味じゃなかったっけ?
絶対殺されたら痛いじゃん?かと言って逃げられないじゃん?
「それで。イベント中に竜を倒すんだって?」
「ふえ〜…たぬきさん。パス。」
ルイが小声で言ってきた。パスしないで。
「え、僕?やだよ。無理無理。」
僕も小声で返した。
「んん、じゃあたぬきさん〜、今だけはその〜、味方でいない〜?」
味方?
「アリオールさえ倒してしまえば〜絶対に100位以内に入れるの〜」
ほほう。なるほど?
ジュンは一対一……今回は一対二……。
ルイは回復できる……僕は……あ!さっき貰ったスキル!
いける?いけるかも?
「あのさあ、キミたち。全部聞こえてるからね?[防音障壁]とか[思念波]とか使いなよ。」
「聞こえてたって」
「じゃあ〜今突っ込む〜?」
「一対二でもボクはキミたちに勝てるからね?」
「じゃあだめじゃんどっちみち。」
「だめだったね〜」
さてさてどうしよう。
ルイに僕を…優しく殺してもらおうか?
それでいいのか?僕。
できる限りあがくべきなのでは?
たぬきの角砂糖一個分の誇りにかけて!
「見逃して下さい。」
全力のお願い!
「ヤダ。」
だめだったあああ!
よし、逃げよう!
「マジックオープン![たぬき変身]!」
「あ、た、たぬきさん待って〜!」
ダッシュううう!
《スキル[加速]を手に入れました。》
たぬぬぬぬぬぬぬぬ!
「スキルスイッチ。[捕獲]」
(スキル[捕獲]
効果…目の前の小モンスターを確実に捕まえる。
SP…5
取得条件…自分より小さなモンスターを捕まえて、食べること。)
ぎゃああああ!?
金色の糸みたいなのが絡まろうとしてくる。
ここは、早速、でかくて強そうなたぬきになれる……さっきもらったあのスキルを使うべき……?あ、でもあれじゃん。たぬきの状態でスマホ、使えないじゃん。
あんぎゃああああああああああああああ!
僕の四肢は糸に絡めとられた。
うわー!綿が出るうう!
「たぬーたぬーたぬー!」
「逃げ出したいなら人間の姿になればいいんじゃないかな?」
「えい〜っ!」
アリオールの後頭部をルイがハープで殴り、僕は糸から開放された。と同時に、たぬき変身をといた。
「ルルルルルイありがとう…」
「どういたしまして〜」
ルイはニッコリと笑った。
「で、竜を倒すんじゃないの?」
うっわまだ生きてた!
「たぬきさんに近寄らないで〜へんたい〜」
変態…なのか!?変態だったのか!?ワープゥと同じ種族か!?類は友を呼ぶってやつか!?だから頑丈なのか!?
「変態とは失礼だね。逃げようとしたから捕まえただけじゃないか。」
変態じゃなかったらしい。
「んみゅうう〜……」
ルイが言い返せなくてぷうっと頬を膨らませた。というか、言い返したら殺される感ある。逃げるのを捕まえるのはへんたいだとおもう〜って声が聞こえた気がした。
アリオールはあのニヤニヤ笑いのまま言った。
「地縛竜デスヘル、倒すのに火力が足りないんでしょ?ボクが居れば絶対倒せるよ?」
「でも、前は全部仲間の人たちに任せてたじゃん」
「ああ。やっぱりあれキミだったんだ。」
あ。バレた。やべ。
「でも〜」
「ボクをその討伐に参加させるなら、この前のキミのマナー違反を許してあげてもいいよ?ついでに、キミにだったら殺されてあげてもいい。」
僕の方を見ながらアリオールが言った。やっぱりあれマナー違反だったんだー。すごい怒ってたしなあ、アリオールの周りの人。サンクも詰め寄られたって……ん、そういえばサンクは今回喧嘩を吹っかけられてたんだっけ。どうしたんだろ。……返り討ちにしたのかな?
「たぬきさん〜どうしよう〜?」
ルイが迷う様に僕を見てきた。
アリオールの提案はとっても魅力的だ。だから、なぜそんなにルイが渋るのか、相手がアリオールじゃなければ分からない……だって。
アリオールの目が、怖すぎる……。
少しばかり、僕は考えた。
もしかしたら、アリオールはドラゴンを倒しつつルイと僕を……殺す気なんじゃないか、と。うん。僕、冴えてる!
僕は息を吸い込んだ。
「許されなくて良い。殺せなくて良い。だから、ルイだけは見逃して。」
「たぬきさん……?」
いくら目が怖いとか、相手が怖いからとか、強いからといって、そう疑った相手に友達の命は預けられない。……し、さっきルイを置いて逃げようとした不名誉も挽回しないとね!
「……ふう、いいよ。ここは地獄だけど、ボクは鬼じゃないし。」
「ただ、」
そう言ってアリオールは僕の手を引っ張った。あ、ほんとだったのか。え、あ、僕必ず死ぬコースじゃん。
「わっ!?」
「あっ、たぬきさん~!」
「ならキミには本当に着いてきてもらうよ。ちゃんとのろまは見逃してあげるから。」
え、それなら、まあ、いいか?いいのか?
呆然とするルイがどんどん遠ざかっていく。
僕はずるずるとアリオールに引っ張られていき、ちょっと逃げ出せなさそうだったので、たぬきに変身してアリオールの腕につかまった。
僕は一体……[狸鍋を回避するために]を使って何をさせられるんだろうか?
アリオールが興味があるのは……きっとこのテクニック、だよね?
サンクははじまった途端にエパと交戦になり死んだので、喧嘩はふっかけられてません。




