1匹目的が違うたぬき?
ひどく疲れた顔の、温泉施設のおかみさんにスターを払って、僕は外に出た。
あの、例の……マイナスの……数字が……増えるのは……キニシナイ。
ほら結局払われてるし!迷惑はかけてないはず!たぶん!
……ここ以外の温泉施設には入れなかったけど。看板が取れかかってるここだけ、入れた。
安心してねおかみさん。僕がまた来たら、もうきっと大盛況だよ!僕にね!
さてさてえ。
思い立ったらよく考えずに即行動だ。
これを、猪突猛進、ならぬ狸突猛進と言ってみます。
その心は!?
特にない!
……うう。なんかずーっと滑ってる気がする。滑って落ちない。オチない。嫌なテンションだ。一人だからだね。早くみんなと合流したい。僕の名誉のために。
炎のスキルを手に入れられそうなモンスター…というと、やっぱり火を吐いたりするやつだと思う。
火を吐くモンスター……?
ちらちらと脳内にちらつく。
どらーんどらーんどらーんどらーんどらーん……
ミファスムで会った、二本の首を持ったあやつがちらつく。
赤と緑のあやつだ。
……無理だなー……。
無理だよなー……。
ドラゴンだもんなー……。
でも……でもう…。
あ。
そういえばルイが、「討伐隊に参加して〜」みたいなこと言ってなかったけ言ってたかも絶対言ってた!
つまりつまり、僕が参加できるよーな討伐隊やらなんやらを見つければいいのでは!?
討伐隊ってよくわからないけど、なんかそんな感じなのでは!?
だから、とりあえず……。
死なないように隠れてようっと。アテが見つかるまで。たぬきの姿で。
ここで、どこに隠れるか、が問題。
僕的には、そこら辺のゴミ箱の中にでも。と思ったけど……。
ゴミ箱はゴミが結構入ってて、周りにゴミが散乱してたら、バレそう。
その時、僕の目に、ゴミにまみれた浴衣が目に入った。
……あえての?
僕は浴衣を着て、なにげなーく温泉街を歩いた。
ドリーマーはほとんどいない。でも、落ちていた桶に、捨ててあったタオルを入れてるし、温泉に来た人だと思われる…だろう!
その証拠に、一人すれ違った人に会釈しても、あ、ども、みたいな返事をもらっただけだったし。
髪の毛はおろしてるし。
ふふん。僕の変装、すごく良いんじゃない!?浴衣は少しばかり生臭いけど!
そっと建物と建物の間に入って、ドリーマー速報を見る。
結構減ったな……137人。
ルイは残ってる。良かったあ……。あと37人くらいだったら、きっとルイ、生き残れるよね?
それで…ルイの居場所は……デスヘル?
デスヘルって、ここだよね?
そういえば、このリスト、デスヘルにいる人が多いような……?
「なんでだろ……?」
「それはね〜アリオールが〜デスヘルにいるからだよ〜」
突然重いもので殴られそうになった。
「っ!?ルイ!?」
「たぬきさ〜んこんにちは〜。でもでも〜私の狙いはたぬきさんだけどね〜。たぶん、たぬきさんが会ったことある人たちは~みんなたぬきさん狙いだろうけど〜。」
え。
……僕が狙い、とは?
「どういう…こと?」
「たぬきさんが〜一番狩りやすそうだったの〜。…ごめんね。どうしても、百位以内に入らなきゃいけないの〜……」
どうしても、か。
痛くないように、そっと殺してくれるなら構わないけど……。僕は順位とか、そこまでこだわり無いし。高い方が良いのはそうだけど。
でも、だからといって、僕は知り合いを殺そうと思わない。
あれか?僕が弱々たぬきだからか?いつかたぬきの逆襲にあっても知らないよ?
……と、冗談を思ってみたけどルイは優しい。きっと僕が弱いことだけが原因じゃないはず。きっと、百位以内に入らなければいけない切羽詰まった理由があるに違いない!そうだよね?
僕は聞かないようにしていたことを、ついに聞いた。
「ルイは、どうしてそんなに百位以内に入りたいの?」
「……あのね。リルちゃんと、喧嘩、しちゃったの。」
案外あっさり教えてくれた。それで…え?
ルイとリルが、喧嘩?
「私が、はっきり言わなかったのが〜…原因なの〜。二人でダンジョンに潜ったんだけど〜……」
きっと、ルイは誰かに話したかったに違いない。
他人の喧嘩に巻き込まれ、ハープで殴られそうになる来羽。とんだとばっちりだ。




