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DREAMERS WORLD 〜たぬきはせかいをすくえるか?〜   作者: からかさたぬき
第5章 デスヘル編・ドリーマー戦線後編
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本戦・見本1


 サンクが目を開けると、そこはミファスムだった。少なくとも、サンクは最初、そう思った。


 すぐに気がついた。ここはミファスムじゃない。ミファスムによく似た、どこかだ。


 なぜならば、ミファスムには赤や緑のきのこが群生していたはずだからだ。だが、ここにはきのこがない。

 いや、きのこどころか、森すらないし、ミファスムのような小さな街でもなかった。



 それはミファスムで見た、侵略の証。


ピンクピンクピンクピンクピンクピンクピンクピンクピンクピンク。

リボンリボンリボンリボンリボンリボンリボンリボンリボンリボン。



 計算された美しい街並みと、

 華やかな歩く人々。


 「お母様の国……」


 サンクが幼少期過ごした、パリの街に酷似した()()


 それはただの偽物。

 それはただの夢。


 本物とは全然違う。緑があって、お母様の行きつけのアンティークなカフェがあった様な、お洒落なあの、本物にはとどかない。


 全体的に、街がピンク色なのだ。

 凱旋門はあるようだが、エッフェル塔がない。代わりに、神殿のようなものが街の中心には建設されていた。


 「エッフェル塔は……?」


 サンクはエッフェル塔が一番好きだった。


 そのエッフェル塔がない、というのはいかがなものか。

 むしろ、シンボルだからこそ、神殿と成ったのか。


 まあ、ここはパリではなくフラウなので、エッフェル塔が無いのは当たり前なんですけどね。



 サンクが、神殿に向かって足を進めようとすると、突然、雷が飛んできた。


 「きゃ!?」

 「深淵に秘めたる力の奔流、押さえつけたる力、今こそ開放せよ!スキル、スイッチ![サンダー]!」


 なんとなく聞き覚えのある詠唱だ。


 「!?またあったな、紫の人よ!」

 「紫の人……。」


 その呼ばれ方は初めてだった。


 (確かに私の毛の色は薄紫だし、目の色もアメジストのような紫だと……よく言われて育ったけれど。)


 「紫の人って、なによ?」

 「だ、だって我、お主の名前覚えてないのである……」


 サンクははあ、とため息をついた。あんな厨ニ病全開の自己紹介をやらされたのに覚えてないのか、と。


 「ところで、あなたも本戦に残ったのね。」

 「あ、そうなのである!だから、ここでお主を倒さなきゃいけないのである!」


 サンクは右手で赤と緑の杖を構えた。サンクの上半身より短く、顔よりは長いその杖は、赤い珠に炎を、緑の珠に雷を宿した。


 左手でスマホを操作する。


 「スキルスイッチ![サンダー]!」


 サンクが放った黄緑がかった雷を、エクセレント・パイオニア……ダサいからエパと呼びましょう……普通人名はあまり省略しないのですが……彼らもそう呼んでいる様ですし……エパは後ろにジャンプして避けた。


 サンクの顔が少し青ざめる。


 (避けられた!?)


 サンクが今まで戦闘を行う時は必ず囮役がいたので、避けられる、ということが今までなかったのだ。うーん、随分とぬるい戦いばかりでしたね。

 らいうと組んでいるときはらいう、アリオールと組んでいる時は誰かのスキルの……例えば、蝶々、というように。


 相手の行動を見つつ、次の手を考える。


 (残り9回……SPポーションは、ドリーマーカルスの…無料配布で三本。つまりあと撃てるのは11回なわけね。)


 こんなことなら、SP使用量を抑える薬や、テクニックを手に入れとけばよかった、と後悔するサンク。せっかく妙薬の街、ミファスムに行ったのに。


 (SP10未満でHPを削られる……そしたらあとは耐久戦だものね。スキルで削るよりも普通攻撃(ノーマルアタック)で削らないとだめかしら?)


 予選は別の意味で苦しかったけれど、本戦は本戦で大変ね、とつぶやくサンク。そのつぶやきは、エパには聞こえていない。


 (でも、あちらが撃ったスキルが私に当たらないとも限らないわ……それなら…!)



 一方のエパ。


 (ささ、サンダーを撃ったのである!我の十八番なのに!個性が……!)


 なおかつ顔は平静を保つ。顔が崩れたら、カッコ悪いからである。


 (詠唱は譲れないのである…詠唱をやめたら、我じゃないのである……そうなると、我がとれる戦略は回避をしつつ詠唱をする、しかないのである。)


 できれば堂々と戦いたいエパだった。

真正面から魔法を打ち合い、そのまま押し切るという熱い展開がエパは好きだった。

 詠唱の浪漫には負けるけど。


 (ならば…)



 二人の気持ちは一致した。


 ((隙を作らせ最大火力の神スキルを放つ!))


 エパもサンクも、死んだことくらいある。

 SPの殆どを持っていってしまうが強力な神スキルを放ち、相手を倒したあと、持っているポーションで回復すればよい。

 ふふ、神スキルは強いですからね。なんて単純な思考なのでしょうか。

 でも問題は、この二人のマジックの相性が大変悪いことですね。



 サンクが杖を振る。

 エパは、先程から詠唱に使っている短刀を構えた。


 実質、武器の形が、種類が、影響するのはノーマルアタックのみなので、短刀で魔法系統のスキルを使うこともできる。

 剣などの振り回すタイプは近接攻撃しかできないが、与えるダメージが大きい。

 杖などの魔法タイプは鈍器として、そして遠くからの攻撃もできるが、威力が弱い。

 弓などの遠距離タイプは、攻撃力が高く遠くからも攻撃ができるが、連続で放つことができない。

 まあ、正直に言えば、私はそんな邪道を行かずに、あの未完成勇者の様に剣を振ったら剣のスキルを使って欲しいですけどね。



 サンクとエパが睨み合う戦闘地帯の近くのレストランでは、今回のイベントに参加していないドリーマー達が、彼、彼女らの様子をスマホで写真や動画を取ったり、興味津々に見学したりしている。


(一般的には、広い屋外のほうが避けやすくて、近距離向きだと考えられる、のであるが……)


 エパはうっと言う顔をした。

 明らかに短刀と杖じゃ分が悪い。

 しかも、サンクが美人なために、周りの観衆は、ほとんどがサンクの味方をしている。


(緊張するわね……)


 一方のサンクも、オーディエンスが気になって、うまく力が入らないでいた。

 先程放ったノーマルアタックは、エパが横にずれたため、避けられてしまった。


(ああ危なかったのである!当たったら痛がってる間に針のむしろなのである!)


 サンクは杖を一回転させて、連続でノーマルアタックを放った。


 (連続で撃てば近づけないはず……よね!)

 (避け続けるのは至難の技なのである……!)


 エパは後ろから追ってくる様なサンクの魔法攻撃を避け、レストラン内に飛び込んだ。


 障害物がより多い空間の方が、避けるにしても体勢を立て直すにしても、有利かと考えたためである。


《自動防御結界を発動します》


 途端に、エパと、それを追ってレストランに入ってきたサンク以外の、元々レストランに居たドリーマーのスマホが鳴り、彼らの周りに透明の膜のようなものが張られた。


そして、

「いけーーー!やっちゃええーー!」

「頑張れー!」

という声援が一気に遮断された。


 エパは咄嗟にテーブルをたくさん倒してバリケードを作った。

 テーブルに、サンクの杖からほとばしった魔法攻撃が当たり、丸い焦げ目を作る。

 サンクは続けて、エパが隠れている場所に向け、エパが飛び出てきて攻撃してこないよう、ゆっくりと近づきつつ魔法を放ち続けた。

 手首のスナップを感知し、ノーマルアタックが放たれる。


 サンクは着実に、その歩みと同じ速度で、エパを追い詰めていく。


 「マジック、オープン。[プレデクテッド・アイ]」


 サンクがマジックを発動し、サンクの目には全てのものがだぶって見えるようになった。音はなく、目だけで見る世界。

 大詰めに入ったのだ。


 (このままじゃやられるのである……!100位以内に入って、せめて名前くらいは残したいのである……!)


 エパは、短刀を両手で握りしめた。


 (多分、使わなきゃ勝てないのである……ここで死ぬよりは…使って勝つほうがいいのである…!)



 『……サンクは連続で手を振り続けていたために、手が重く、疲れていた。

(…止めちゃ、だめ!止めたら…)

少し振る腕が鈍った時、エパが物陰の向こうで呟く。

世界がゆっくりになった。時間の流れが遅くなり、エパの口だけが動く……』



その光景が、サンクには透視()えた。



 (スキル…で…今すぐ仕留めないと!)


 「スキルスイッチ![ロマンティック・」


 そう判断するやいなや、サンクがそう言うと、空間が紫色の煙で満たされた。


 ほぼ同時にエパが動く。額のゴーグルを下げる。特に意味はない、ルーティーンの様なものだ、ただ、集中する。一言一句、噛まぬ様に、間違えぬ様に。


 「浪漫の追求者である我が命ずる。発動せよ!マジックオープン![追イ求メル者]!」


 時間の流れが、遅くなる、エパの声だけが、前のまま、止まらない。それを、サンクは知覚し続ける事ができない。


 「スキルスイッチ![地より這い出る雷神の手腕よ!」


 サンクの足元に、雷をまとったレストラン一個分の広さの魔法陣が出現した。

 目だけが、それを捉える。逃げれない。動かない、体は、何も。ただ、ただ、エパがマジックを発動する前に紡ぎはじめることができた言葉を、続けるだけ。


 「っ…!」

 「今こそ我に敵対せし罪深きカタキを、その憤怒の腕で絡め取り給え!」


 サンクの足元の魔法陣から無数の、雷をまとった腕が出現し、サンクの首や腕や足を掴んで地べたに座らせた。


 「いでよ、神の雷よ!感情のままにその猛威をふるい」


 エパがスキルを言い続けると、レストランの上の空が黒く曇り、その中でピカリと雷が光る。


 「ムーンナイト・」


 やっとサンクが一つ目の言葉を言い終える。

 エパが出現させた黒い暗雲の一部が払われ、見える空の六分の一くらいの大きさの灰色の月が出現し、あたりが妖しく暗くなった。


 「地上を焦土と化したまえ!」

 「ファジナー・」


 黒い雲の雷が一旦止んだ。嵐の前の静けさか。

 サンクの前にハート型の魔法陣が出現した。目標は、エパ。


 「キラー・サイマス・ストライク!]」

 「ウェーブ]!〈命令よ!死になさい!〉」


 サンクに迫る、レストランの天井を突き破って降ってきた、一閃の雷。

 エパに迫る、ハート型の魔法陣から放たれた、連続した波。


 サンクは雷に撃たれて消滅。

 エパには、置土産とばかりにハート型の波が当たる。


 あとには……呆然と立つエパがいるばかり。攻撃を避けている間に受けた傷、他のドリーマーとの交戦で負った軽い怪我以外は、特に目立った外傷は無い。



 ヒビの入った障壁の中から、人々がやんややんやと声を上げる。


 「あの弱そうな男勝ったぞ!?」

 「美人ちゃんまけちゃったあああ!」

 「さっきのスキルかっっけええ!」

 「いや…厨ニ病全開じゃんか…」

 「あのスキルかわいい〜ハート~」

 「…おい。あいつ何してんだ?」

 「なんか様子おかしくないか?」


 エパには聞こえない。レストランのオーディエンス達のざわめきが、エパの今の様子を表している。


 エパは虚ろな目をし、ヘナヘナと座り込んだ。


 そして、ただ呟くのだ。


 「……〈死ぬ〉、必要が、ある。」


 普段の口調すら消え、普段の陽気さすら消え、そう淡々と言ってエパは、短刀を自分の胸に突き刺すべく、胸の前に構えた。


 そうして、その時はやってくる。


 彼のマジックの反動だ。


 エパの意識は、急に目の前に黒い紙を落としたかの様に、真っ暗になった。

 そして、制御を失った短刀はそのまま彼の胸に深く突き刺さり……。

 エクセレントパイオニアは、霧になって消えた。


 「は?」

 「え?」

 「えー!?なんでー!?」

 「え、ちょ、なにあれ?」

 「こわっ!」

 「せっかく勝ったのに自害かよー!つまんな」



神スキル[ロマンティック・ムーンナイト・ファジナー・ウェーブ]

効果…何でも一つだけ当てた相手に命令を聞かせることができる。

SP…100

取得条件…死んで、神様から貰う。



 結果、サンクとエパの戦闘は、相打ちとなった。


216位 エクセレントパイオニア

221位 サンク・ラストベルト


マジックはとにかく、相性次第。


エパは……マジックを使えれば、ジュン、フュー、ワープゥ等には勝てるでしょう。

エパを倒すならマジックを使わせないのが一番。本人は動きが鈍いので。


サンクは逆に、動きが素早い、大人数でかかってくるため対応しきれない人……とかに当たると負けます。リルとか。あと未来を見る系の人はやっぱり毒には弱い。

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