地獄の本戦、弱肉強食の食には就けないたぬき?
僕はスマホのマップを開いた。
マップの右端には、ここの場所の名前であろうものが書いてある。
デスヘル。
死地獄!?
そう、来たときから、明らかに、あからさまに地獄だなーってことは思っていた。なんか空真っ黒だし。たまにビカビカって空白くなるし。地面茶色いし。マグマがコポコポ言ってるし。
でもでも、まさかほんとに地獄だとは!
「やーばー……」
他にもマップには色々書いてあったけど、今それどころ…そんなどころ…どこどこどこ……じゃないよねー。
僕マグマって初めてこんなに近くで見たよ。近く。そうほんとに近い。めっちゃ熱い。マグマって……え、何℃くらいあるっけ。落ちたら…死ぬ?よね?
僕が立っているのは細い道で、人一人分やっと通れるくらい。
何故かはわからないけど、この道からは冷気が出ていて、この上なら安全なんだろうなと思わせる妙な安心感があった。
でも、それとこれとは別で……。
僕はそっと足を前に出した。
それだけの動作に、10秒くらいかかった。
次の足とか…むり!
だって、足置いたらガラガラと崩れてあーーー!ボチャン!しそうじゃん!
……そーだ!
困ったときのたぬき変身だ!
「マジックオープン![たぬき変身]!」
たぬきになれば軽くなる!たぬきになれば速くなる!
「たぬっち!」
著作権にぎりぎり引っかかるか引っかからないか—な声を上げて僕は後ろ足に力を入れ、強く地面を蹴った。
前足と後ろ足が交差する。
速い!!
ちょっと遠くに、お城みたいなのが見えた。えーっと、キャッスルうって感じではなくて、天守閣うって感じの方だ。
つまり、戦国時代の日本のお城、みたいな。
よく見えないけど、高そう。値段が。
体力が無くなってきた。体力もゲージで見えるようになったら楽なのになー。あ、でもスマホ見ながら走ることになるのか。うーん。やだ。
まあ、見えなければ気合でなんとかなるし!発見?知覚?した途端に疲れることってあるあるだよね、さもありなん。さーもありなん。
不意に、後ろの方で何かが崩れる音がした。
ぼ、僕は前しか、前しか見ないからね!
その、前、つまり、僕が向かってる方向、前方ってやつ、に、人影が見えた。
そして、その人影から、火の玉が飛んできた!
火、火の玉!?
え、サンクかな!?サンクなのかな!?
僕は空中に飛んで避けた。
火いいいい!腹が熱い!火だけに!ぷぷっ。
……こほん。今のは、悲鳴の声と、火をかけたんだ……。
サンクだったら、もしかしたら見逃してくれるかも!
……今のしょうもないので見逃してくれなくなってたらどうしよう。
……いやいや待って、サンクだったら、たぬき型の生き物に攻撃してくるかな?
いやいや、サンクはそんなことしない、はず。
あっ。本当にサンクじゃなかった!
割と長身?
「……ッチ![ファイアボール]!」
声が聞こえるくらい近づいた。うーん。言うなれば、いけぼー?
声が聞こえるくらい近づくって事は、向こうとの距離も縮まってるってこと。
当然、火の玉が飛んでくる時間も短くなるわけで。
ファイアボール、のルの音がまだ響いているうちに僕の目の前にはすでに火の玉が!
「たぬっ!」
僕は這いつくばった。
ちょっと耳が焦げる。
「たぬううううう!?」
熱い!痛い!
許さぬ。このかわいいたぬきに焦げ目をつけやがって。こげたぬきになっちゃうじゃないか!
僕は這いつくばったまま両前後脚を動かした。
シャバババババババ!
「うえっ!?気持ち悪!」
と、その男が言った。
あんまりだ。
「たぬぬぬぬぬぬぬぬぬ」
「う、わ、ふぁふぁふぁふぁ[ファイアボール]![ファイアボール]![ファイアボール]!」
そして急に、はっ、とその男が言った。
息をぎゅっと吸うみたいな音。
そして、ばたっと倒れた。
うぬ?
様子がよくわからなかったので、這いつくばったまま進むのをやめて、たぬき姿で走った。
そして僕はそのまま男の顔を踏みつけた。
「ふぎゃう」
「たぬ?」
僕は人型に戻って、スマホのカメラ機能を開いた。
ふふふ……何故こんな最適行動を取れるかって?
なんと、気になったことはちゃんとヘルプを見ることにしたのだ!成長!僕、成長!
スマホの中に入ってた、ヘルプ、アプリ?には、SPと、HPはスマホのカメラ機能で見れるよーって書いてあった。
あ。この男の人、今SPゼロだ。HPがカリカリ……ガリガリというよりかはカリカリ……削られていってる。
……今のうちに逃げよーっと。
僕は倒れている男に背を向けてたぬきに変身して走り出した。
目指せお城!それゆけたぬき!
天下統一!下克上!フー!
それっぽい言葉を並べつつ、僕は大した理由がないまま、お城に向かって突っ走るのだった……。
なんでお城に行くんだろ?
それはそこにお城があるからだ~!
ごきげんたぬき
少し異色の戦闘でした。
もっときちんとした本当の戦闘は、次回から。




