ドリーマー戦線、開幕?
目が覚めると、太陽が優しく僕を包み込んでいた。
大きなあくびをして起き上がる。
はっと気がついた。今日何日!?
「サンクッサンクッサンクッ今日何日!?」
「え……?ん…何日かしら……えーっと……」
「ふわ〜あ。二人ともおはよ〜う。今日はイベントの〜予選日だね〜」
予選。
「本戦じゃなくて?ほんとに予選?」
「え〜うん。そうだよ〜?どうしたの〜たぬきさん〜」
ああ焦った……すごい長く眠ってた気がして、寝過ごしたかと思った。
もう一回通知を見直す。なかなか進歩したと思う僕。予選の事を覚えてるなんて。
「予選は2日間……」
「とりあえず急ごう〜」
急ぐ、とは?
「7時にはドリーマーカルスに集まって説明聞かないと〜」
えっそうなのっ!?そんなんどこにも書いてっ……ある。見落としてた。うーん。まだまだたぬきだ。
「そんじゃあレッツゴー!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ドリーマーカルスは人でごった返していた。
人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人狸人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人
って感じ。
人の状態だときつかったので、たぬきの状態でサンクの頭の上に居させてもらっている。もともとの身長だと見えないからな〜。
「なんだか、たぬきハット?みたいなものを装備してるみたいね?」
「かわいい〜」
サンクとルイはのんびりおしゃべりをしていた。
他の冒険者、も同じだ。のんびりとおしゃべりをしている……と思っていたが、急にそのおしゃべりが止んだ。
勢い良くドアが開けられ、無駄にキラッキラした人たちが入ってきた。
「アリオール様のお通りよー!」
「場所を開けなさーい!」
ひょえ。
「なんなんだよ……。」
「来た時いなかったから期待したのに…アリオールが出んのか……」
「これじゃ優勝は狙えねえな……」
「え、もしかして〜あれが〜アリオール〜?」
「……ええ。そうよ。」
ルイの言葉に対して、サンクがとっても微妙な顔をして答えた。アリオールの隣のワープゥが満面の笑みでちぎれんばかりに手を振ってきたからだ。割とワープゥ人気はあるらしく、近くの人が頬を赤らめながらどきどきと話をしている。男の冒険者ももれなく。皆彼をかわいいと言っている。……えー、ちゃんとね、人は中身を見てから判断した方がいいよ。
ちょっとした暴動が起こりそうなとき、キングビーストでのドラゴン発生を知らせたときのように、ドリーマーカルスの真ん中におねえさんが立った。
〈みなさ〜ん!楽しくドリーマー、やってますか〜!?〉
「は、はーいっ!」
〈みなさんも知ってのと、お、り〜、今日はここ、DWで、第四回ドリーマー戦線を行いま〜すっ!〉
ドリワル……なんかドリがワルイことしてるみたい。ドリって……あれかな。ふたり組のリスの仲間かな。いや、あれリスなのか?リスじゃなかったら、何?えっと。
ともかく、その略し方はどうかと思う。もっと良いのなかったの?
〈本日は予選一日目!予選、今年はパーティ戦ですよ!最大五人のパーティで挑む、ドリーマーキラー有りのボスラッシュ!〉
どりーまーきらー?ぼしゅらっしゅ?
「ぼしゅらっしゅって何?」
「ボスラッシュ、ね。つまり……ブルームみたいなのがたくさん出てくるってことだと思うわ。」
〈初級ボスから中級ボス、上級ボスまで何でもござれのボスラッシュ!ボスを倒すと初級なら一枚。中級なら二枚。上級なら三枚のメダルが落ちま〜す!たくさんメダルをゲットして、ぜひぜひ優勝賞品、入賞商品を手に入れて下さいね〜!〉
詳しい説明が通知で添付された。
えーっと。ドリーマーを殺して奪うのもあり。ドロップは一ボス単位。パーティが複数いる場合も、初級一枚。中級二枚。上級三枚の制度は変わらない。本戦に出れるのは上位百組……etc。
……モンスターって星いくつで表記されるんじゃないの?初級とか上級とか言われても分かんないよ……
スクロールすると、ボスの例が出てきた。ブルームは上級に当たるみたいだ。というか竜は全部上級。キングビーストも同じ上級なの!?ブルームが泣いちゃうよ。
初級とか中級とかは……今だけ、便宜的に、という事みたい。ちょっとでかい普通の個体のもいれば、コカトリスもいる。あの鶏か……会いたくないな……。
「なるほどね……ボスの位置は……マップで表示されるわけじゃないのね。」
「歩くのかー……」
「うーんたぬきさん歩くの嫌い~?」
「いや、それほどでもないよ。」
僕らは互いにパーティ登録をしてから、街に行くことにした。
「あ、そういやサンク。」
僕はスマホのリュックアプリを開いて、ミファスムロッドと、ミファスムナイフをことんと出した。
「サンクが一番頑張ってたのに、報酬なかったんだよね?この武器二つどうぞ!」
「一番頑張ってたかどうかはわからないけれど……」
でも、ありがとう。とサンクは嬉しそうに笑ってロッドだけを拾い上げた。
「あれ?ナイフは?」
「ロッドだけで充分よ。」
サンクはナイフから目をそらして言った。ナイフを見ないようにしてるみたいだった。サンクの足には立派なポケットが付いてて、丁度このナイフを入れるのに良さそうなのに。……刃物怖いのかな?僕はルイに向き直った。
「ルイ、ナイフいる?」
「え、ごめん~たぬきさん。私、この前大きい討伐隊に参加して~ミファスムは行ってきちゃったんだよね……それはたぬきさんが持ってると~いいと思うよ~」
そう?そっかなら僕はナイフを持った切り裂きたっぬに……。僕はナイフを拾おうとした。
「……っつ!」
僕は勢いよくナイフとは逆側にとばされた。おしりを打った。痛い~!ひどい~!誰~!?一体このいたいけなたぬきが切り裂きたっぬになるのを誰が阻止したのだ!?
「大丈夫らいうちゃん!?」
「そういえば~たぬきさん、防具の時も~同じことが起こってた~気がする~」
そういうことなの!?僕は防具も武器もつけられないやわたぬきなの!?
そんな一騒動を経つつ、僕らは森を抜けて街にやっとの思いでついた。やっとの思いをしたのは僕だけ……ぽかったけど……。あ、ナイフはスマホを近づけたら吸い込まれてった。いつか切り裂きたっぬになれるといいなあ。
「街の中にもモンスターっているのかな?」
「そうねえ……路地裏のゴミ箱を小人が漁っていたのは見たことがあるわ。」
小人。
僕は路地裏をヒョイッとのぞき込んだ。
小人がひっという顔をした。
「ねー君たちのボス?に会いたいんだけど。」
小人が後ずさりしながら、笑い、フォークを構える。
ふーん。いい度胸だなあ。
「マジックオープン![たぬき変身]!」
「ちょっらいうちゃん!?」
爪でフォークを弾く。
逃げ惑う小人を捕まえる。鼻が高く、しわくちゃ。典型的な魔女のおばあさんみたいな顔をしている。
どこに
「たのうとたぬのたぬ?」
「あっなんか有名な映画のセリフ言ってるけど全部たぬ語になっているから著作権的にきっとセーフなパターンだわ!」
「キーッキーッキーッ」
小人が一斉に騒ぎ出した。
その時、ゴミ箱がガタガタと震えた。
ゴミ箱が光る。
ゴミ箱が破裂し、僕らに生ゴミが降り掛かった。
「あ~…まだこれ食べれるのに〜もったいない〜」
ルイが自分についた生ゴミを取り払いつつ言った……どうかと思った。でもビアンカなら全部食べそうだから、ルイは口に入れないだけまだ常識人だと思った。
ゴミ箱から出てきたのは……ゴミ箱サイズの、小人たちと同じ格好をしたモンスターだった。
「初級ボスね。きっと。」
なるほどっ!なら僕でも!
「たぬぬぬぬぬぬっ!」
「ギーーーーーーーーッ!」
「たぬひゃんっ!」
僕は何が起きたか分からなかった。
僕の黒曜石みたいなかっこいい爪に、そいつの手に持っていたりんごが重なり、ふっとばされた。
り、りんごに、負けた!?
「ら、らいうちゃん!」
「スキルスイッチ〜[回復の歌]〜」
(スキル[回復の歌]
効果…味方のHPを中回復
SP…10
取得条件…ランダムに楽器を弾き、音色を引き当てる。)
ポロロンポロオロンというリズムと共に、段々体が回復してきた。今のでHP30削るとは…やるなお主。
「スキルスイッチ![ライトニングファイア]!」
(スキル[ライトニングファイア]
効果…雷と炎が合わさった爆発魔法
SP…30
取得条件…炎属性の魔法と雷属性の魔法を同時に使えるロッドを持つ。)
サンクが赤と緑の珠のついたミファスムロッドを振り回す。はっ!新技!
赤い珠から炎がほとばりでて、緑の珠から雷がほとばり出ている。
空中で合わさり、二重螺旋を描き、一直線に初級ボスの額に直撃した。やばいかっちょいい!
ミファスムロッドはバトンの形になっていて、一方に赤い珠、他方に緑の珠がついている。だからサンクがくるくる回すと必然的に技が合わさって……いいなあ!僕もなんかそういう感じのスキル出したい!
初級ボスの額から霧が発生し、モンスターが白目をむいた。
僕はたぬきから人になった。
「ど、どう……?」
「気絶した……のかしら?」
それとも……とサンクが恐る恐るボスに近づく。
「魔法が、貫通してるわ…!」
「討伐完了、かな〜!」
ルイのその声と同時に、ボスが霧になって消えた。
と、同時に、ボスがいた場所にチャリンとコインが一枚落ちた。
「や……」
「よ……」
「えへ……」
僕らは同時に叫んだ。
「やったああああ!」
「何街角で叫んでんだよ。近所迷惑だぞー。」
そんな声が聞こえた。
異常なほどの猫撫で声で、優しく注意する、声。なんで、ちがう、ちがう、そんな声、出さない、よね。
振り返った僕らの目に映ったのは……。
みすぼらしい彼ではなく、
随分と立派な格好をした
ジュンだった。
ジュンの様子がおかしい。




