山越え谷越え?
僕とサンクはおばあさんに心配されながらも、街、ミファスムを離れた。
おばあさん、初見では怪しい人だったけれど、おにぎりを持たせてくれたりして優しかったなあ。人は見た目で判断しちゃあかんね。
……そういえば、おばあさんさっき、飛んでいるドラゴンを見て、ミファスムじゃない名前を言ってたような。いや、気のせいかな。町の名前がドラゴンの名前なんだもんね?メイドさんだってそう言ってたもんね?
くねくねとした一本道を進む。街から離れるにつれて、色とりどりの草がどんどん道を覆い隠していった。サンクは草マニアなのか、色とりどりの草を摘んで、きれ〜っと言って嬉しそうに微笑んだ。サンクが草をふると、草は星のようにキラキラと輝いた。それを見て、うっとりするサンク。草、そんなに良いのか……。僕も草マニアを開墾するべきかも。
あれ、ぽいってした。そんなでもなかったのかも。僕も草マニアはやめよう。
「そろそろ山ね!」
サンクが言った。
……うわー…。
その山は、明らかに病気みたいだった。
ピンクや紫、緑に水色が混在している。あんまり好きじゃない色だ。
さっきまで、色とりどりのきのこや、草を見てうっとりしていたサンクも、この山はお気に召さないらしい。ウッと芋虫でも口の中に突っ込まれたような顔をした。
山の上部は、雲のようなもので覆われている。この雲も、非常に体に悪そうな色をしていた。空が血みたいに赤いのも相まっていた。夕焼けだ。こんなに時間が経ってたんだ。
とりあえずまあ、とりま、ねぎま、山登ってる間この雲吸わないように気をつけないと……。
「とりあえず、行きましょう?」
「うん。でも、どう思う?サンクは、ドラゴンは、この山のどこに住んでると思う?」
えっ、とサンクが口から音を洩らして、僕を不思議そうな目で見た。え?そんな不思議なこと?
「そんなの、山の頂上に決まってるじゃない!」
え?え?そうなの?そうなの?
「お約束、でしょ?」
そ、そうなのか……。
だんだんと暗くなって来たので、僕らは山の麓で野宿をすることにした。ある一定の時間になると、急に寝ちゃうからね。登ってる最中になったら大変だ。
「ん……?でもサンク、野宿する道具なんて持ってるの?」
「もちろん、」
持ってないわよとサンクが笑った。すぐに、正気を取り戻した様に眉を下げて、困った顔になった。
「ぅえ?」
「ごめんなさい、考えてなかったの……所持金がだいぶ少なくて……テント、買えなかったのよ。……というか、どうして私、こんな状態でドラゴンを倒そうなんて……」
サンクは少しばかり逡巡した後、頭を振った。まるで、一旦冷静になったのが馬鹿だったとでも言うような感じだ。
……僕の頭の位置だと雲を吸うことは無いけど、身長が高くてモデル体型のサンクは、少しばかり吸っちゃったりしたんだろうか……?
「ねえ、らいうちゃんは?らいうちゃんは何か、そういうもの...テントとか、持ってない?」
当然、僕も持ってない。今まで木のうろとかで休んでた僕だぜ?必要性を感じなかった。
「ん……このまま何も作らずに寝たら、モンスターに襲われそうな気がするわ。あと、風邪もひきそう。」
サンクが一つづつ物事を述べていった。ふむう。じゃあどうする?とは少しばかり聞けない雰囲気だ。ちらっとサンクが僕を見た。
僕は一生懸命考えて、言った。
「穴掘る?」
「いやよ、カブトムシの幼虫とか出てきたらどうするの。」
うっ。僕も虫はヤダ。どうしよう、カブトムシの幼虫でさえも水色とかだったら。
どうしようか……。本当に。詰んでる。あたりを見渡したって、手頃な穴なんてありはしない。宿なんてもっとない。
その時、僕の頭に、キュッピーンと良い考えが思いついた。
「そうだ!」
「え?なに?何か思いついたの!?」
「一回死ぬっ!」
「……え?」
「一回死んで、神スキルをもらうっ!」
「……え。」
それはいいアイデアね、とサンクが言うのを僕は待った。
そう死ねば良いんだよ。我ながら良いアイデアだよね!
……そんなに、軽くて、良いんだっけ。
「らいうちゃん。」
何でしょな?
「死んだら、ブルームにもう一回戻るのよ?」
あっ……。
でもいっその事、それでアリオールのとこから脱出するのも。ありおりはべりいまそかりじゃない?
「絶対にミファスムは倒したいわ。だって、あのカラーリング。おしゃれじゃない。」
ミファスムがどんな姿か僕とサンクは知らないが、たぶん、街で見たあの甘ったるいにおいのピンク色のドラゴンのことを言ってるんだと思う。
そういうことなら、その方法での脱出は無理そう。サンクの目がキラキラ輝いている。ここでおあずけはかわいそうかも。
うーん、じゃあどうする?少しばかり、いやものすごく困った。
そろそろ太陽がお隠れしそうだ。まずいな〜…ここでこのまま寝たくはないな〜。
空気が悪い。少しばかり、頭も痛い気がする。でも街ではじめて吸った時程ではない、だから癖になる、欲しくなる、もっともっと
その時、大きな影が僕らの頭上を通過した。
あっ。あっ。これはこれはもしかして?
「あれって……!」
ドラゴン…っ!とサンクが息を呑むのと同時に、僕らの身体にリボンが巻き付いた。
そのドラゴンはその尻尾や爪からリボンを生やしていた。
ぐうえっと僕はその締め付ける強さに吐きかけたが、そうだった、お昼食べてないんだった。なんだか喉に焼けるような痛みが走っただけだった。
そしたら、急に視界と思考がクリアになって、音がよく聞こえるように、なった。
サンクの手の中で、おばあさんがくれたおにぎりがぐちゃっと潰れた音がした。サンクは苦しそうな顔をしている。大丈夫かな……。
ただ、僕も決して人の心配をしていられるような状況ではない。
僕らはこれから、一体どうなるんだろう?
そして、太陽が完全に山の向こうへ姿を隠したとき。
サンクが目を閉じ、そして僕の意識も……ブラックアウトして……
……寝てる場合じゃ…ないのに…。
そう、
これはこれはもしかして、
俗に言う、
超電撃展開、というやつかもしれない。
何回も使用を繰り返すうちに、最初と同量では段々効果が発現しなくなってくる事を、耐性と言います。
繰り返し使う事を、自分の意思ではやめられなくなって、ただひたすらに求めたり、不快な症状を避ける為に摂取を強迫的に望む事を、依存と言います。
乱用ダメ、ゼッタイ




