サンクの好きな人?
サンクと僕は、めっちゃ監視されている。
と、いうわけでもなかった。
いや、実際はそうじゃないのかもしれないけど、少なくとも僕は圧を感じなかったって意味だ。
アリオール一行の女の子たちは、幻想的な景色に心奪われていた。
アリオールとかワープゥとか、男の子の姿は見えない。
誰も僕らの方など見向きもしない。良かった。別に悪いことをしよう、とか、そういうあくどいことを考えているわけではないんだけど。やっぱ、ずっと見られっぱなしというのは肩がこる。
動物園の檻の中の動物の気持ちが分かった気がした。この前は実際に檻に入り、今度は見世物化……はちょっと……お避けになりたいところ……
着陸した場所は、街外れだったらしい。
僕らはしばらくふわふわした、幻想的な雰囲気の中を歩いた。
しばらくすると、地面の材質が変わった。
トスットスッからカツンカツンへ。
それにしてもお腹が空いた。空いて空いた。全然食べてないし。空いた。腹減った。……そこら辺の道端のきのこ、食べられるかな。
僕がきのこを吟味したり、ちょっと懐に入れたり、ちょっとかじってみたりしている間に、サンクは街の中心部?まで足をすすめていた。
ブルームが同心円状に、キングビーストが放射状に街が作ってあるのに対し、ミファスムの街は四角いみたいだ。建物と建物がぴったりくっついていて、横断歩道の白線部分みたいに建物が並んでいる。んー。これ、道間違えると大変かも。特に真ん中の方。
僕はサンクの元へ走っていった。
女の子たちの中でも、サンクはよくミファスムに溶け込んでいた。
その髪の色といい目の色といい顔の良さといい、本当にぴったり。
そしてサンク自身も、このミファスムの虜になっていた。嬉しそうに、ほわあっとした顔で街を歩いている。
つまり、ミファスムとサンクは惹かれ合っているってことだね!ヒューッヒューッ!
ミファスムの街並みは……。
占い屋…食べ物屋…占い屋…土産屋…占い屋…不思議な雰囲気を醸し出すカフェ……また占い屋…。
……。
占い屋、多くない?え、こわ。
まあいいか。気にせず街を歩こうっ!今はお金もあるし?なんかショッピングしたって、ね!
薬屋を見つけた僕は、とっととーとかけていった。
薬屋には、瓶がいっぱい並んでいて、きれいだとおもったのだ。
瓶の一つ一つ(君もドラゴンになって仲間を脅かそう!……これを飲めば何でもカレー味に!……必ずあの人を射落とせられるさっ☆恋愛学教授監修済み合法ドラッグ…など)にこんな具合にラベルがついていた。どれも素敵!なんかふぉんとがからふるだし!
全部買いたいかも。
とりあえず所持金と相談して、ドラゴンに変身できるやつだけ買った。
レジに持っていく最中に、おすすめ商品、の文字が目に入った。
お、おすすめ!?絶対買わなきゃ!
陳列されているのは、緑色や水色の液体だった。うーん。かき氷のブルーハワイ味の水色に、クリームソーダのメロンの緑。美味しそうだけど。高い。
僕はよくよくラベルを見た。
あっ。水色のはSPポーション大だ。緑色のはHPポーション大。…って書いてある。なんのことだっけ。というか、ぽーしょんってなに?
あ。商品の説明書いてある!
「SPポーション大
SP回復量50
SPポーション中と比べ、より多くのSPが回復できます! 原料:SPの草」
「HPポーション大
HP回復量100
HPポーション中などと比べ、より多くのHPが回復できます。原料:HPの草」
ほ〜。なんか便利そうっ!
僕はよく値段も見ずに、HPポーションとSPポーションを持てるだけ持ってレジにおいた。
「……」
店員さんが怪訝な目で僕を見ている。……あっ!分かった!高いんだな!高いから、僕には買えないと思っているのか!ふっ。こらとらストーンモスを倒してお金持ちなたぬきだよ?残金、6050スター。うひっ。金持ちたぬき~成金たぬき~!
「合計、60万スターになります。」
……ん?
「えっえっ。」
「お戻しいただいても……。」
あ、はいっ!当然返します!
ひーっこわっ。
僕はドラゴンに変身できる薬だけ買って、薬屋を出た。
スマホの持ち物アプリにしまった頃に、サンクが遠くから駆け寄って来た。あっ。そういえば何も言わずに薬屋行っちゃったんだっけ。心配してたかも。
「どこが良いと思う?」
出会ってそうそう開口一番、そう言われた。全然心配されてなかったなー。
「どこって?」
「占い屋よ占い屋!どこで占ってもらうのが良いかしら?」
僕は少しばかり考えた。そしてサンクに言った。
「サンク、自分で未来見れるんじゃなかったっけ?」
あのねえ、とサンクは微妙な顔をして言った。
「確かに、秘密にしていたかもしれないけれど。私のマジックは、本当に、酔うのよ。いくつもいくつも視界が重なって見えて。それに、未来が視えると言っても5秒先よ?5秒先の未来なんて、5秒後に起こってしまうのだから、運命とかそういうのとは全然違うわ。」
そっかー。
「もっと先の未来が見たいの?」
「占ってもらいたいのよ。自分で見たいんじゃなくて。」
ふーん……?
「僕はさ、たぬき関連でたぬたぬしたスキルがいっぱいあるけど、サンクにはそういうのは……つまり、5秒先の未来が見れることに関連した…占い的なスキル無いの?」
「うーん。無いわね。でも、あっても、SPを回復する手段が手持ちのポーションしかない以上、占いなんてSP多く消費しそうなもの、するのは危険でしょう?」
SPの回復は、たしか僕が知ってるだけでフューのヒールと、あとさっきも見た、SPポーションのみ。ポーションは全回復は高かったんだっけ。大であんくらいだから、お店の奥に並んでた超なんてのはきっと目が飛び出ちゃうくらいに高いに違いない。ちょっと気になる今日この頃のたぬき。
「そういうわけで、ポーションを買うよりも占いのほうが安いし……自分で見たら全部わかっちゃうじゃない?全部わかりきった未来なんてつまらないわよ。やっぱり。人が見てくれればきっと小出しにしてくれるわ。」
そうなの?僕占い行ったことないから分かんないや。
「んー…それじゃあそこは?」
僕はすぐそこにあった占い屋を指差した。サンクはうんうんとうなずき、正直に勢い良く向かって行った。
あっ……言わずもがな適当だったのに……。
「ごめん下さーい」
サンクがそう言って入ったのは、僕が指差したボロボロの占い屋だった。う…ごめんサンク。
僕がサンクの肩に手を置いて止めようとした時。
中のおばあさんの目がキラリと光った。客は僕らの他に誰もいない。
「おぬぢ……いぃグローブを、ぢているな。」
なんだか占い師みたいに霧がかった声をしている。占い師なんだけどね。
「へ?僕?」
「そうぢゃ。おぬぢぢゃ。そのグローブには無限の可能性があるのぢゃ…見える見えるぞおおおぉおお!」
そ、そうなの!もしかして、僕、これから、たぬきじゃなくてドラゴンとかに変身できちゃうの!?たぬどらごん!?
あれ。でもそうするとさっきのドラゴンの薬が無駄になっちゃう〜ジレンマ。
「お、おばあさん!その話詳しく!!」
「これいぢょうは追加料金ぢゃけえ。」
うー…いくらかなあ。
「私のことを占ってほしいのだけれど。」
僕がスマホを取り出していくらか聞こうとすると、サンクが言った。
「いいぢゃけえ……」
おばあさんは水晶に手を置いて、何やらブツブツ唱えはじめた。街中で歩いてたら変な人だなー。……え?ちょっと態度が悪いって?別にドラゴン変身計画が中断されたからってわけじゃないし。違うしッ!
「ふむふむなるほど…おぬぢはある者に恋焦がれているのぢゃな。」
ほう。コイバナか!少しばかりJ・K⤴っぽい話題じゃないか!
僕は身を乗り出した。サンクが少しばかり頬を赤らめて、僕をチラリと見た。
「あんまり、その、聞かれたくないのだけれど…。」
え。な。えー!?僕もJ・K⤴っぽい話題に参加したいんですけどー!
「それもすぐ近くにいる……」
え、僕!?
「男性。」
違ったなー。
「んー……ジュンのこと?」
「え、あ、バレてたのね!?」
サンクが顔を真っ赤にした。僕は分かってきた。これは、怒りの赤ではなく恥じらいの紅だ。
え、本当にジュンだったんだ。意外とサンクの趣味はわる……いや、サンクが惚れるくらいだからジュンにもすこぶる良い所があるに違いない。
「えっと、後学のために聞いておきたいんだけど、どこが好きなの?」
僕は動揺を取り繕いながら聞いた。思えばサンクは、ジュンにだけなんか遠慮がなかった。
「その……私、男の人にあんなに冷たくされたの初めてで……ジュンくんの下心が見えなくて……それで、無関心を装っているのかしら、こんなに見て欲しくなるのって、
恋なのかしらって。」
何気にすごい事を言っている。僕なんて会う人会う人が冷たいが?
とりあえず僕の洞察力をアピールしておこう。下心はないけど。
「ふっ……わかり易すぎるよサンク。僕には全部お見通しさ、そうこの名探偵らいうにはね!」
「きゃー!」
「調子に乗らないのぢゃ。誰だってこの娘の顔を見ればあ分かる。」
え。怒られた。
「ぢゃあ、続きを始めようかのお。どうすれば結ばれるのかぢゃが……」
くう〜!完全に蚊帳の外じゃないか…。
しょうがない。今日はJ・K⤴大作戦は諦めてあげよう。サンクの乙女心を尊重だ。
好きな人か……
いつか僕にも、できるのかな。
全然想像つかない、な。
強いて言うなら……
そこで思考が止まる。まるで恋愛感情ってやつをどこかに捨ててきたみたいだ。
変なの。




