出会いと別れと再会と?
僕が目を開けると、目の前にはサンクがいた。
光が不思議な感じで注ぎ込んでいて、少しばかり幻想的だ。
僕が男の子であったのなら、これはとてもラブロマンス的な導入かもしれないけど、僕は女の子だ。残念でしたっ!
「やあ。サンク。」
「らいうちゃん、どうしてここに?」
サンクは訝しげな顔をしていた。いわく、僕からのメッセージを見たものの、誰にも言わずに秘密にしていたらしいのだ。相談するかは迷ったらしいのだが、サンクから見て、アリオールギルドに信頼できそうな人は居ない。そのため、一人で穏便な脱出方法を考えていたのだとか。
……よっぽどワープゥが嫌らしい……
僕はどうしてここにいるんだっけ。
なぜか。僕は頑張って思い出した。すごく頑張った。
「あー。確か、ジュンとアリオールが戦ってジュンが消えて、アリオールが勝ったから僕ここに来た…」
「ジュンくんが!?」
サンクは目をまん丸くした。目をまん丸くするって言葉がこれほど似合う表情もないだろう。
そして、何かが目の中で燃えた気がした。
「許せないわ…!ジュンくんとらいうちゃんに危害を加えるなんて…!」
「あ。フューも。フューも毒舌攻めにあってたよ?」
「アリオール…もう絶対許さない!今から私がどっかんどっかんのばっきばっきのぐっちゃぐちゃにしてやるんだから!」
ひい!?
僕の言葉を無視して、サンクは闘志、いや敵討ちに燃えていた。どっかんどっかんのばっきばっきのぐっちゃぐちゃって、少しばかり、いや、いやいや、いやいやいや、もんのすごく怖いし、おえっぷ。なんかいやあな想像しそう……。
……あれ、サンク、こんなに必死になるってことは……もしかして、サンクの好きな人って……いやいやまさかね。
「そうと決まったら脱出よ!この際手段は問わないわ!らいうちゃん!」
「でも…」
ここがどこだか分からないのが問題だ。
最初は、キングビーストにあったホテルかと思った。
でも違うのだ。さっきから妙に揺れるのだ。
普通、ホテルってこんなに揺れる?いやほとんど泊まったことなんてないけれど。そんなお金は無いのです。
「ねえ、サンク、ここって」
ガタンっと、今までのよりももっと大きい、ふっ飛ばされそうになるくらいの大きな揺れが起きた。
「ぐうっえ!?…だぬっ!」
「きゃっ!」
サンクはとっさのときも可愛い声を出した。僕は衝撃でたぬきに変身した。もうよく原理がわからない。きっと僕はたぬきなんだろう。もう。
僕とサンクは揺れに驚き、幻想的な光が差し込んでくる窓から外を見た。
「これは……?」
「きれ〜い!」
目の前には、少し霧がかった世界が広がっていた。サンクが怒りを忘れるほどだ。
赤や、緑などの色々な色の丸い珠が空中を漂い、もしくはオブジェとして点在している。
生えているきのこや、木でさえ、紫やピンクや青色に染まっていて、あ、緑もある。まるで夢の世界だ。
……夢?
僕が少しばかりその言葉に引っかかった時、ドアがドカンっと開いた。
そこに立っていたのは、腰に大きな大砲をつけた無表情のメイド服の少女と、執事服を着たワープゥだった。
「おまたせしたっすプリンセスサンクう!ミファスムに到着致したっすよーーー!」
と、言って、サンクを抱きしめようとし、そのまま頬をはたかれた。うっわ。
みふぁさむ?
「ミファスムって……何、一体どこなの。」
そうサンクが聞いた。ああ、みふぁさむじゃなくてみふぁすむか。…やっぱ分かんない。
「街、っすよー…痛いっすよープリンセスサンクぅ」
「首又竜ミファスムをあがめる街でございます。ワープゥは喜ばれているようなので今度は折を見てこの飛行船から叩き落としてください。足で。」
「喜んでないっすよ?しょーせーが喜ぶのはありおりゅさまによるご褒美、もといお仕置きだけっすから!」
そう言ってワープゥはサンクにもう一回抱きつこうとトライした。
街か。ふーん。ブルームとか、キングビーストとかの仲間か。ワープゥはサンクにぐりぐり背中をやられている。痛そう。いやいや、絶対痛いってあれ!……でもやっぱり本人ちょっとうれしそう……?
「ご準備が整いましたら、お伝え下さい。」
そう言って、メイドさんは一礼して出ていった。ワープゥを引きずりつつ。
「あああああ〜プリンセスサンクうう!」
ご準備と言われましても。
何か僕、持ち物あったっけ?
スマホくらいか。ふむ。
サンクがぐうっと伸びをした。そういえば、ジュンが消えたにしては嘆かないな。怒りはしてたけど。
「サンク泣かないね?なんで?」
「え?……ん、あー…ジュンくんの事?だって死んじゃったわけじゃないもの。また帰って来るでしょう?」
サンクも知ってたんだ。あっ。じゃあサンクもあの不思議スキルを貰ったのかなー?
「ちなみにサンクはどんな不思議スキルを貰ったのー?」
「えっ!?え、ええ……そ、そうね。ええ。不思議スキルよ。そう。ええ。」
「ふーん……。」
ふーん……。どんなスキルなんだろう…気になる〜!
サンクが考え込み始めた。
そして、まるでジュンのように、ブツブツと言い始めた。
「この船をジャッ…奪って、逃げ出すのもありだと思うけれど…」
なかなかの暴挙に出ようとしている。でも、僕らも半ば無理やり連れてこられたようなものだしな……。それくらいは許される、かな!?
ただ、ジュンと戦っていたアリオールの姿を見ていると、今の僕だったら絶対に勝てないと思う。さっきのメイドさんもなー…あんまり戦いたくないし。なんか強そう。戦闘力とか見れればいいのに。
「思うけれど?」
「やっぱり、この街に降りてみたいわ!!」
確かに、すごく幻想的だ。僕も降りてみたい。でもなあ…なんだかなあ…。
「メイドさーん!準備できたわよー!」
「かしこまりました。では、こちらへ。」
僕が迷っている間に、サンクは話を進めていた。サンクもメイドさんの呼び方メイドさんなんだね。
ふむ。しょうがない。しょうがないよね。
僕は、なんでか足が重い気がするんだけど、うん、気のせいかな。
僕らはアリオール一行の列に加わり、ミファスムに繰り出した。
幻想的な雰囲気に似つかわないリボンが、妙に多い街、ミファスム。
そこに降り立った僕らを、
じいっと6つの目が
見つめていましたとさ。




