第三章エピローグ
(山椒ってさー、うな重の上にかかってるじゃん?)
たしかにそういうこともある。
(かけると苦くて食べられないんだけど、かけないっちゃかけないでインパクトが足らないんだよね〜)
なんて身勝手なことを。
そしてここまでをひとくくりにしたいならば、今は三章であって、決して山椒ではない。
(参照って面倒だよね……。書くの嫌。)
いつどこでこのアホが参照なんてものを書くような文章を書く機会があったのだ?
(新聞を書いたよー小学生の時に。)
小学生?
お前は夢の世界の私…ではないのだが、まあ夢の中の私の代わり的なものではないのか?
だから、小学生の時の記憶なんてないのでは?というかあったら困る。
(僕は僕だし君でもあるんだよ?)
少し不快感を覚えた。その諭すような口調に聞き覚えがあったからだ。二度と会いたくない、人間の。
まあそれはともかくとして、とりあえず、こいつが取得したスキルを並べよう。
……ない。
……おい。
(なーにー?)
進歩が見られないぞ?
というか退化してるじゃないか。
(別に、スキルとかテクニックとかを取るためにぼーけんしてたわけじゃないもん。)
じゃあなんのために冒険してたんだ。というか冒険だったのか?あれ?
(んー…そう言われてみるとなんでだろ〜?次はこうしよう、その次はこうしようって、言われるがままに動いてたからな〜その時その時が割と精一杯で。)
たぬき娘はエヘヘと笑った。
つまり、全てが成り行きでいきあたりばったりということか。
(でも、それは君もおんなじだと思う。)
同じ?私と……たぬき娘が?
(僕が集めたスキル。テクニック。それを使ってどうにかして世界を救おうとしてるんだよね?)
そうだ。そのとおりだ。
(じゃあ、なんで世界を救いたいの?世界を、目覚めさせたいの?)
それは……このままだと、きっと、だめ、だから。
(世界を現実に戻そうとすれば、きっと死んじゃうだろうし、それに今だったら、死んでも霧になって、また戻ってくるだけかもよ?)
言われてみればたしかにそうだ。その旅は過酷で、この世界でこのまま生きるよりずっと……死にやすいだろう。
じゃあ、あなたは、このままでいいって、そう思うの?
(んー……僕は、特別何か……思ってるわけではなくて……どうしてって思ったから聞いたの。)
どうしてなのだろうか。
何か、何かが心に引っかかっていて、このままじゃまずいと思った。
それは、大事な人、人間、に関係することで……でも、それは誰かというと、それは、思い出せなくて。
頭が割れるように。のこぎりで切られているように、もしくは、ピンポン玉が弾けているように……痛かった。
(大丈夫?)
大丈夫ではない。
でも幸い、私の住んでいたアパートには着いた。
おんぼろだ。住人はほとんどいない。
大家さんは別のところに住んでいて、いろいろなアパートを経営している。
ギシギシ言う階段を登り、部屋のドアを開けた。鍵は、スマホの中に入っていた。
ああつまり、スマホをかざす。鍵が開く。
未来のようだ。
これも夢の影響か。
どうせなら見た目もアップデートしてくれればよかったのに。
中に入りドアを閉じ、またスマホをかざす。流石にオートロックではないようだ。残念。
ベッド、テーブル、イス、トイレ、キッチン、お風呂……生活する上で最低限のものしかない部屋。見慣れた部屋。
ベッドに横たわった。このアパートがおかしなものになっていないことが、不思議だった。
まあ最も、ドアの部分だけはおかしかったが。
(寝るのー?)
寝ない。眠くないから。
(おー!一緒!僕も眠くない!)
……他人を頼るとろくなことがない、というところの他人には、こいつは含まれているのだろうか。
少なくとも、スキルやテクニックをいま取得できるのだとしたら、自力で取れる分だけ取ったほうが良いと思った。
まあ、動くのは嫌いでもない。嫌だけど。
(それを嫌いというんじゃないの~?え、違うの!?僕の常識に天変地異が巻き起こってる!?なう!?)
いつでもお前の常識は天変地異的発想だから問題ない。
どうやらこのあほのせいで、実用的なスキルを、自分でとらなければいけなくなりそうだ。あほばかこのたぬき娘。
とりあえず今はこの幸せな布団にくるまれていよう。誰が発明したのだろうか。これは人間の発明品の中でも、とりわけ素晴らしい発明だと思いながら、眠ることはせずに、目を閉じた。
……大切な……が…このままだと壊れてしまうから…私は……。
これにて第三章が閉幕しました。
いつも見てくださる皆様、ありがとうございます。励みになります。
第四章では、ポーションと、占いと、呪術の街、つまり怪しい雰囲気の街、ミファスムに足を踏み入れる事になります。
また、ドリーマーズワールド一大イベント、ドリーマー戦線が開催されます。
果たして優勝は誰の手に。
らいうは生き残れるのか。
乞うご期待!
よければ★、感想など、よろしくお願いします。




