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もしも貴方が勝っていたなら


「待て待て待て待て!」


ジュンが大声を出した。


「それじゃあ賭けとして成り立たないだろう!」

「じゃあ、昼食も豪華なものを用意しようか。」


アリオールの言葉に、いやいやいやとジュンが首をもげそうなくらい振って否定した。

首、もげたらフューにつけ直してもらわないと。


「それでも成り立たないだろ!」

ジュンは否定し続けているが、その後ろで、

ビアンカの目がキランッと光った。


「昼食をくれるのか!?」


おい…ちょっ…とジュンがビアンカを止めようとしたが、ビアンカの勢いは止まらない。


「ああ。あげるよ。」

「たぬき!頑張るのだ!ヒルゴハン!タベル!」

ひっ。ビアンカの目が恐ろしい!


これ僕、断ったらたぬき鍋、もといらいう鍋にされるんだろうな……。ぐつぐつ。

……はっ!僕もお腹が空きすぎて、思考が変になってる!?

なにらいう鍋って!?怖っ!?


「……じゃあ、俺と一対一ならどうだ。」

アリオールがキョトンとした顔をした。

「どういうこと?」


「らいうの代わりに、俺が戦う。」


アリオールは盛大なため息をついて、またあの余裕めいた、口角を上げた不敵な顔で言った。

「キミが?その初期装備で?まだ彼女の方が勝算があると思うけど?」

「……どうかな。」

ジュンは木でできた剣に手をかけた。


「へえ。忠告を無視して戦う気?まあ、それでもいいけど。

ねえ裏切り者。」

フューがビクッと肩を震わせた。


「彼女と食いしん坊に当たらないように結界を張ろうか。それくらいできるよね?」

「……はい。」

フューが、かぼそく返事したあと、元気のない声でスキルを発動した。少しばかり、僕はフューが不憫になった。


「スキル…スイッチ…[超神聖結界]」


(スキル「超神聖結界」

効果…あらゆる攻撃を無効化するが、中からは攻撃ができず、動けない。

Sp…85

上級…なし

取得条件…神聖結界を壊される)


わあ。なんかすごそう……。

ただ、こんなにすごそうなスキルなのに、発動しているフューはすごく暗い顔をしていた。たしかに、呼び方として裏切り者はないよなー。


僕がそう思っていると、ジュンが顔をしかめて言った。

「もう一個、俺が勝ったときの条件を付け足していいか。」

どうぞ、とアリオールは素っ気なく言った。ジュンじゃ自分には勝てないとたかをくくっているようだ。


「フューに対するその呼び名をやめろ。聞いていて腹立たしい。」

「…ジュンさん……?」

フューが少し顔を上げた。


ほう。やるなジュン。


「いいよ。ただし、君が勝てたら、の話だけど。」

「勝つさ。俺は未来の、いや現在(いま)も、そして……過去の俺も、勇者だからな。」

どやあとジュンがドヤ顔した。


おお〜、なかなかかっこいいなジュン。未来の勇者を自称するだけはある。

……ただ、勇者は自分から勇者って言う気はしないけど。

で、一体、どうするんだろう?どうやって勝つつもりなのか。というか、その自信は一体いずこから湧いてくるのか。


「じゃあボクから行こうか。時間もないしね。」

えっ!?

あのテクニックがあるから、ずっと待っていれば、痛くないのに……。

どんだけせっかちな奴なんだ…。



「スキルスイッチ[フラッシュ]!」


(スキル「フラッシュ」

効果…強烈な光を放ち、敵のHPを削る。

SP…5

上級…クラッシュ

取得条件…光系のテクニックを持っていること。)


眩しいっ!?

その一瞬の白い閃光は僕達の目を貫いた。

僕は、驚きのあまりたぬきに変身した。

たぬきになると、なぜかは分からないけれど、少し目が楽になった。

慌ててジュンの方を見ると、もうすでに、アリオールが剣を振り下ろしていた。


「ジュン!」


僕は思わず叫んだ。

ただ、ジュンはニヤリと笑ってアリオールのお腹に剣を突き刺して、言った。


その右手には、スマホが。


「スキルスイッチ…[アイスシャープ]!!!」


またもや、強烈な光、今度は水色がかった光がアリオールのお腹と、ジュンの剣を中心として発光した。


アリオールは手にスマホを持っていなくて、両手とも剣に添えられている。


今、この瞬間、アリオールがスマホを開いたとしても、もうその時にはアリオールはまるでさっきのストーンモスのように爆発、

負けだ!


サンクが帰ってくる!


やったねジュン!よくやった!


ただ、僕はアリオールのおでこの、変なアクセサリーの存在を忘れていた。


アリオールは剣の発光が始まった瞬間に剣から右手を離し、右手を額に当てつつ、後方へ下がり……少しばかり必死な顔をして、叫んでいた。

「っ…スキルスイッチ!」

ごおおおっと風が巻き起こり、ジュンを後方へ飛ばす。


ジュンは上手く受け身を取ったようだが、もう剣はその手にない。それに、そのまま動かない。


アリオールの方は、間髪入れずに何かスキルをタップして、再度叫んだ。

「[聖剣装着]!!!」


(スキル[聖剣装着]

効果…自由自在に聖なる剣を出現させる。剣に纏わせて使うこともできる。

SP…20

取得条件…テクニック[咎人の終末世界]により獲得)



あ、知ってる、知ってるこれ。どこかで、見たことが、

ああ、僕がこの世界に来た時に、見たのかも。すっかり、忘れてたけど。


いや、違くて、えっと、もっと、身近な


そんなことを考えている場合では無かった。


ジュンに向かって黄金色、そして白くもある斬撃が迫った。


それはまるで大きな大剣が振り下ろさるかのごとく。

豆腐をナイフで切るかのように。


その光景が、僕にはスローモーションに見えた。

声帯が震えた。




「ジュン!!!」





ジュンは、霧になって、消えた。


[聖剣装着]は結構便利で、アリオールは愛用しています

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