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秘密じゃない秘密がバレた?


ジュンが口をあんぐり開けた。

多分、僕も同じ顔をしているんだろう。


フューはジュンを盾にするかのように、後ろに引っ込んでいる。


ビアンカだけは、お腹が空いたと呪文のように繰り返しながら、生えている草を引きちぎって山のように積み重ねていた。



豪華客船から降りてきた、キラキラオーラを全身にまとった、あのギルドリーダーの美少年が死んだ目で、こちらを見ていた。



後ろにはさらにキラキラを倍増させるかのように美女がたくさん。みんな犬の糞でも見るような目をしている。

もちろん、イヌのフンではない、読み方はイヌのクソ。


ただ、おえっみたいな顔をしていても、キラキラしているんだから、もうこれは何かのテクニックを使ってるに違いない。

そういえば、先程からずうっと僕の目の前に文字が流れ続けている。多すぎて読む気もしないけど、きっと今使ってるテクニックに違いない。


恐ろしいな美男美女。サンクはなんだかふわっとした暖かな美人だけど。

フューだってある程度の顔整いだけど可愛い系だし。

ジュンは普通。

僕?僕は当然たぬき系だよね!

……それはさておいて、目の前の人達はやっぱりなんか違うんだよなあ。話したことがないからかな?


「わざわざアリオール様がおこしになったというのになにその態度。膝をついて土下座して、ありがとうございますアリオール様というのが礼儀でしょう!?」

後ろの美女達が声を揃えて言う。こわい。こわいけど美人。いや逆に、美人だから怖さ倍増なのかな。



「おま、お前何しにきたんだよ!?」

アリオールはそう突っかかるジュンに対して、鼻で笑い、ジュンのスネを蹴った。

あっ痛い。


「キミは相変わらず、人に食ってかかるような発言をするね。」

痛みで悶絶するジュンを、生ゴミを見るかのような目で見るアリオール。


「しょーせーはプリンセスサンクを渡したくないっす!…でも…ありおーりゅ様あ…しょーせーにもその目を向けてほしいっす……」

「……ワープゥはうるさい。」


アリオールが手をパン、と叩いた。

「御意。マスター。」

なんとなーく聞き慣れた、ような?でも絶対聞いたことないはずの声がした。


その声の持ち主のどこからともなく現れたメイドの格好をした女の子は、ワープゥの首に速やかにチョップを入れた。ワープゥが倒れた。手つきが鮮やかだなー。と、いうかどこから?え、今どこから出てきた?


それにしても……

同時にジュンが

「おえ。気持ち悪いにゃ」

と言った。うん。僕も同意。

……にゃ?

「にゃ?」

「か、噛んだだけだ殺すぞ!?」

物騒!


「大体いきなり人のスネを蹴るとか何考えてるんだ!?弁慶の泣き所だぞ!?泣くぞ!?」

ジュンの言葉に、後ろの美女達が顔を歪めた。


「まあ。アリオール様の行動に対して文句を言うなんて!」

「なんということでしょう!凡夫のくせに!アリオール様が本気を出したらあなたたちなんて一瞬で消し飛ぶにきまってますわ!」


嘘つけ〜!消し飛ぶって……!ストーンモスと戦って耐えられた僕らだよ?ドラゴンより強い様には見えないけどなー。


ただ、隣のフューが、さっと顔を青くしたのを感じた。……切り刻んだりふっ飛ばしたりするの好きな人なのかも。前にもそう言ってたし。じゃあ、あっ……そういう趣味なのかも、アリオール。そうするとちょっと話は違ってくる。気をつけなきゃ。フューはそんなところにいたのか。というか、そうなると本格的にサンクがやばいかも。


ちなみに、この間ビアンカはずうっと草を引きちぎっている。もう山盛り通り越してメガ盛りだな…。


「は?消し飛ぶって?そんなわけねえだろ。」

「ジュ、ジュンさん!…やめてください……」

「裏切り者はここでも弱腰なんだね。」

フューはぐっと言葉に詰まった。そして、蛇に睨まれたカエルのごとく、何も言えなくなってしまった。


アリオールの後ろのたくさんの美女は、杖やらヌンチャクやら、いろんな武器を持っている。そういえば、僕、まともな武器屋さんとかに入った覚えないや……。


「どうせ、後ろの……取り巻きにやらせるんだろ?」

別に普通に美女達って言えばいいのに。そんなトゲのある言い方しないでさ。たしかにちょっとジュンが言うと変態っぽいけど。

……ああでも、言い返したくなる気持ちはよくわかる。


「いやー、ありおーりゅ様は美しいレディ達に戦わせることはしないっすよー。」

そう復活したワープゥが言った時、後ろの美女達がきゃーっとアイドルの撮影会みたいに沸いた。うひい〜〜!歯が浮くっ!ふつくしいれでぃだって!


「さすがはアリオール様ですわ!私達のことをそんなふうに!」

「天下一ですう!」

「さいっこおおお!」

もはや熱狂的すぎる宗教だあ。ほんっっとうに怖いよおう!


早く離れたい……。


うわ、しかもアリオールがワープゥの足をかかとでグリグリしてるよ……いくら言ってたことをバラされたからってそれは……。ああ。しかもワープゥはメイドさんに後ろから鈍器で殴られた。鉄パイプみたいな?太くて、金属でできている、筒?うわあ、痛そう、流石に可哀想。ワープゥ死んだ?


僕は、僕の背の高さまでになった草の山を、ちらっと見た。

こちらもなかなか怖いよ。

こんな量の草、この島に生えてたっけ?

もうこの島ハゲなんじゃない?

でもでも、ちょっとこの草の後ろに隠れさせてもらおう。世間は怖い。


渡る世間は変態ばかり。



「じゃあ戦ってみるか。一対一で。」

ジュンがそうアリオールに向かって言い放った。フューはもう顔面蒼白だ。そんなにやばいのか?

「一対一?いいけど。でも一対三の方がいいんじゃない?ボクにとってもキミらにとっても。」

一対三……。

「いや。それには騙されないからな。らいうは完全に戦力外だぞ。というか−50%だぞ。」

あ。ひどい。

「じゃあ一対二で決まりだね。」

「僕だって戦力には」

「ならない。絶対にならない。断言できるならない。だからとりあえず黙って見てろ。」

「そうだね。ボクもそれに賛成するよ。中二病兼無礼者に賛同するのは気が引けるけどね。」

ああー!ジュンひどい!ついでにアリオールもひどい!


なるのになるのに!


プクーと膨れていると、アリオールが頭のこめかみに手を当てた。そういえば、最初に会った時とは違い、頭に何かつけている。ひし形の、ガーネット色の宝石がちょうど額の部分にあって、そこに手を当てて、アリオールは叫んだ。


「スキルスイッチ!」


アリオールの周りにたくさんのパネルが現れた。アリオールの周りに風が発生し、渦巻いている。うわー……涼しい。その風で、先程ビアンカが積み上げた草が舞う。なんだかすごい人みたいになったな。


いち、に、さん、よん、ご……合計5枚。それぞれにピクトグラムのような絵が書いてある。



「[クリエイティブ・バトルスタジアム]!」


アリオールが、叫びながらそのうちの一枚を押した。それは、闘技場のような絵が書かれたパネルだった。

(スキル[クリエイティブ・バトルスタジアム]

効果…バトルスタジアムを作成する。バトルスタジアム内では、モンスターやドリーマーを1キルするごとにHP、SPが全回復し、あらゆる状態異常を回復する。

SP…30

取得条件…1000回ドリーマーキルを行う。)


アリオールの不思議な行動に少しばかり引いている僕とは対象的に、ジュンは目をキラキラさせている。フューはもっと青ざめた。ビアンカはハラヘッタハラヘッタハラヘッタと呪詛のようにつぶやいている。


僕の微妙な視線が自分に向けられていることに気がついたのか、ジュンはこほんと咳払いをして冷めた目を取り繕い始めた。


と、その時、地面が揺れた。


岩の壁が地中から突き出してきた!?

僕危うく、この岩に天高く突き上げられるところだったよ!?


完全に岩の壁に囲まれた円形の空間が出来上がったのはそれから十分後のことであった。


光源は、上にぽっかりと空いている穴から降り注ぐ陽の光のみ。

まあ、この穴が相当大きいから真っ暗ってわけじゃなくて、ちょっと薄暗い程度なんだけど。だけど〜……なんだか端っこの方にはモンスターがいそう。


「闘技場って言う割には、観客席も何も無いんだな。」

ジュンがアリオールに皮肉るように言った。


「うるさいな。キミたちがただただ打ちのめされるだけの闘いなんて、誰が見に来ると思う?ああ、そういうのが趣味な人は来るかもね。」

口角を上げながらアリオールは言った。え。

「そういうのが趣味なのはアリオールじゃないの?」

僕が尋ねると後ろの美女たちが目を釣り上げた。


「アリオール様を呼び捨て!汚らわしい下賎の分際で!」

ひいいいっ!

僕はビアンカの後ろに隠れた。

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい


「あいにくと、ボクは男を痛めつける趣味嗜好を持ってなくてね。一瞬で終わらせてあげるよ。」

と、言うことは、女の子を痛めつける趣味趣向はあるのかな。サンクが心配。


あ……ジュンから、ブチッて音が聞こえた。


ジュンもきっと、サンクにアリオールがなんかしたと思ったに違いない。


「一瞬だと?」


あ〜そこ?そこかあ……。

ジュンがポケットからそっとスマホを取り出して、後ろ手で操作している。


そして、叫んだ。


「スキルスイッチ[アイスフォール]!」


ふ、不意打ちだ!汚い!未来の勇者っとかイタイことを叫んでいた人がとる行動じゃないよ!?


空中に無数の氷が発生し、アリオールを一斉に襲った。なんだかこの前よりも威力が増している気がするけど……気のせいかな?


不意打ちによって、アリオールにダメージが入ると僕は思った。と、いうか、僕だったら死ぬと思った。


しかし、

その期待…もとい、

願望…もとい、

心配は失われた。


(テクニック[正義の盾]

効果…一分以内に1ダメージも与えていない敵から攻撃を受けたとき、1スキル分無効化する。

上級…「守護神に愛されて」

取得条件…攻撃をせず、攻撃され続ける。)

そんな文字列が、僕の視界に入ってきた。


え。つまり……

アイスフォールによる攻撃が収まった頃、アリオールはよろっとする演技をしていたが、持ちこたえたような顔をした。ただし僕は見ていた。ニヤッとアリオールが笑うのを。


うわあ。そういうことですよねーだよねー。


というかー。そんな演技をしても筒抜けなのに……。どういう作戦?


つまりは、アリオールがこっちに攻撃するまで、こっちの攻撃は届かないってことかあ。それにしても……。

「わざわざ演技までしなくても……」


「「はっ?」」


ジュンとフューが同時に僕を見た。ん?


「僕だってそれくらいの事は分かるよ。」


アリオールにとんでもなく馬鹿にされている気がするっていうのはね!


「いや、そうじゃなくてだな……どういう意味だ?」

はい?

「え、えーっと。一ダメージも入んないんでしょ?」

「……どういう意味ですか?」

「えっ!?だって無効化って…そういうことじゃないの?なんか一スキル分無効って書いてあるじゃん。視界に。」

もう消えちゃったけど。


「はあ?」

何故かはてなマークをいっぱい浮かべているジュンとフューとは別に、アリオールはスッと顔を引き締めていた。あの、マッドサイエンティストみたいなニヤニヤ笑顔ではなくなっていた。

「ねえ。」

「?」

アリオールは真っ直ぐ僕を見据えて言った。なんだあ!?やんのかあ!?

よーっし、ビアンカおねが、いや、ビアンカはお腹が減ってて今頼みごとできる雰囲気じゃないな。ごめんやっぱり見逃して。


「キミは、ボクが今使ったテクニックが、分かるの?」

「うん。だって視界に浮かんでくるもん。」

アリオールの顔色が少し悪くなった気がした。いや、顔が厳しくなった気がした。


「は?は?

なんで早く言わねえんだよ!?」

ジュンが目をまん丸くして僕をゆらした。

「え〜ぇ〜みんな見えてんじゃ〜ぁ〜なぁ〜いのぉ〜お〜」

揺らされた僕は少し酔った。それくらい、ジュンは激しく僕を揺さぶった。ひどい。そんなにもたぬきの中身が見たいのか?


「見えてるか馬鹿!スキルの性能もテクニックの効果も、使った本人しか分からねえんだよ!」


ふーん。ん?

「つまり…らいうさんは…」

「「チートキャラ……」」

二人の声がハモった気がした。ジュンとフュー。

ふむ。

ちーと、とは何であろうな?チーズの仲間?

「チートって何?」

「その質問に答えるのは、キミがボクに勝ったらにしようか。」

アリオールがすっと剣を抜きながら言った。

別にアリオールには聞いてない。


「ルール変更だ。ボクとキミの一対一戦に変更。そちらが勝ったら変態(ワープゥ)ご執心の少女は返す。」

「ありおーりゅ様あ……!プリンセスサンク、返しちゃうんっすか……!?」

ワープゥの言葉はアリオールによって無視された。ワープゥ死んでなかったんだ?


「この島からの脱出も手助けする。ただし、こちらが勝ったら」


キミを、ボクのギルドのサブリーダーにする、と。


僕を見て、彼は言ったんだ。


まだ皆はこの世界を、自分に都合の良いゲーム的な夢だと信じていて、まだそれは覚める気配がないのです。

らいうがいくら強い何かを持っていても、彼女の頭では宝の持ち腐れなのを、彼らは後々知ることになるのです。

それでも一緒にいてくれる人を、らいうは大切にするべきです。

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