それぞれの戦い
ジュンは、目を開けた。
そこは、先ほどまでいたところとは、全く違うところだった。
(どこだ、ここ……)
しばらく待っていると、ジュンは動けるようになってきた。
見渡しても、霧が深くて、自分が今立っている島と、その周りには海が広がっているであろう、ということしかジュンは分からなかった。
(あ。懐かしいにおい)
ジュンは、内陸部で生まれ育ったが、潮の匂いを知っていた。
海は近くにないはずなのに、よく風に乗って漂ってきていたのだ。
案外近かったのかもしれないと、今では思っている。
その町は、いわゆる田舎で、
故に、彼は都会人、に対して強い憧れを持っていた。
(俺はこの村を出る!村を出て、それで)
((それがために、この方言を捨てるのかにゃん?))
(そんなふにゃふにゃした方言じゃ、都会人に見下されて終わりに……終わりだろ、それに)
((そんなことないにゃん。みんな癒しを求めてるにゃん。なにも問題はないにゃ〜ん。))
(問題はありまくりだ、よ…)
こう幼馴染と言い合ったことがある。
(いつか……)
未だに目標は達成できてないが、標準語を身につけ、都会人のように振る舞えばいつか、願いが叶うんじゃないかと、ジュンは、思っている。
ただ、その深層心理が何を願っているかを、彼はまだ知らないのです。
ジュンは、自分の持っている剣が粉々になっていることに気づいた。
ブルームはボスだが、それぞれの街に一体ずついる竜の中で、最も弱い。当然、武器もそれ相応のものが排出される。
そのため、先ほどのスキル「アイスシャープ」で粉々になったのだ。
「……ふむ……最初の剣でスキルを使えばよかったな……」
ブルームの剣だったからこそジュンの気力が高まり、ストーンモスに強烈な一撃を与えることができたのだが、それをジュンは知らない。それに、剣をえっちらおっちら変えていたら、おそらくフューが踏みつぶされる方が速かっただろう。
とりあえず、ジュンは、最初の剣、つまりはらいうに初めて会った時から持っている剣を手に持った。
そして、改めて状況を探った。
(この霧。何かがおかしい。)
ジュンの予感は当たった。
不意に、視界の端から何かが突進してきた。
「……っ!」
ジュンは間一髪で避けた。
ジュンに対峙したのは、先ほど倒したはずの竜、ストーンモスであった。ただ、先程のものより、小さい。
「なぜだ……?」
(さっき、確実にバラバラになったところを見た。再生するのか……?いや、違う。元から、何匹も生息していたと考える方がずっとしっくりくる。)
ジュンはその時、恐ろしい考えに至った。
(俺の周りに今、らいう達がいない。つまり、バラバラに飛ばされたってことだ。)
もしもストーンモスが何匹もいたとしたならば。
(らいうが、危ない……!)
あいつは戦えないからとブツブツ言うジュンにストーンモスが突進してきた。
咄嗟に避けると、ストーンモスの無防備な背中が目に入った。そして、最初に倒したストーンモスには見られなかったスイッチのようなものも。
(あれに触れれば……!)
都会の荒波の練習として、いくつものRPGをやったり、物語を読んだりしていたジュンは、直感で動いた。
ジュンは勢いよく地面を蹴って、ストーンモスの上に乗った。
振り落とされそうになりながらも、必死にしがみつき、スイッチに手を触れた。
その途端、ストーンモスは消え、ただただ機械音が鳴り響いた。
ジュンは戦利品を確認する間もなく、霧が晴れた島を歩き始めるのだった。
《ああ、やっぱり彼は、王道に王道、見ていて気持ちが良いですね。》
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頭が痛い……うーん、どうやら、この後ろにある木に頭をぶつけたらしい。
僕はたぬき変身をといた。たぬき姿は少しばかり、目が悪くなるらしい。肉食獣なのに。夜行性なのに。猫とはちょっぴり違うらしい。
周りには、ジュンやビアンカやフューの姿はどこにもなくて、さらに言えば、ストーンモスもいなさそうであった。
なにせ、木が一本しかない。コンビニが一軒建ちそうなくらいの広さだ。そこに、僕は一人。うっすらと霧がかかっていて、緑色の元気な葉っぱに水がついている。
……僕、死んだのかなあ?
でも、アリに食われかけて崖から落ちたときは神様が目の前にいた。つまり、僕は生きてるってことか。
僕は立ち上がり、島の縁へ行くことにした。
と、その時、がくんっと島全体が揺れた。どうやら、後ろに何か、重いものが落ちたらしい。
恐る恐る後ろを見てみると、そこには、小さなストーンモスがいた。
小さな?いや、僕よりも大きい。
生きてる…
「グヲオオオオっ!」
む、無理無理!僕、そんな戦闘とか無理!
はっ!戦わなければよいのでは!?仲良くおしゃべり……茶会……!
「あのー、ストーンモスさん。ここは戦わずに、お互いのことを語り合いませんか?最近どうです?お元気ですか?」
「グワアアアアア!」
げ、元気だそうです!伝わった!?ちょっと怒ってるみたいな声だけど…
「グヲオオオオグワアアアアア!」
そうストーンモスは雄叫びを上げて、僕に向かって突進してきた。
「ききき貴社のご繁栄をますますお祈り申し上げますすすっす!」
こ、こうしょうけつれつううっ!
僕はたぬきになって、ちょこまかと逃げ回った。
ドスドスドスドスと後ろからストーンモスが迫ってくる!ひいいいっ!
ど、どうにか、どうにかしなきゃ!潰されるっ!
ストーンモスは、何でできている?
……石。
じゃあ、きっとスキル「無鉄砲」は効かない、たぶん。銃で石を撃っても、わーって跳ね返るイメージしかないし……なんか無理そうっ!次っ!
シュタタタタってストーンモスを駆け上がるのは?
……果たしてそんな運動神経が僕にあるのか?自分の心に聞いてみよう。うん、ない。
じゃあ、じゃあ……
どうしよう………。
僕はついに、ギリギリの縁のところへ追い詰められてしまった。
たぬきって、水の中泳げるっけ?
いや、そもそも僕。いや、泳げますよ?泳げますとも。
「グウガアアアオオオオッ」
「だぬっ!?」
ひいっ!?
僕は驚いて、ばちゃんっと水の中に落ちた。
そして、僕を追うようにしてドラゴンも水の中へ落ちてきた。
「ぬぬぬぬぬぬうう!?」
僕は水の中ストーンモスの攻撃をよけた。……あれは……攻撃?
一生懸命上を目指す。
「ぱはあったぬっ!たぬたぬっ!」
「らいう!?なんでそんなところにいきなり……というか溺れてんのか!」
そんな声が聞こえて、僕は波にのまれた……。
ジュンの過去チラ見せ回でした
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