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チュートリアルってなんですか?


僕は目を開けた。

なんだか、頭がとてもスッキリしている。今なら、学校の算数のワークだってぜーんぶ終わらせられそうだ。


それに、心もとても軽い。何かから開放されたみたいだ。そう、ついでに言えば、口も軽い。口が軽いって言うと、何というかすぐに秘密をバラす人のことだけど、そーじゃなくて、んん、なんというか、舌がよく回る?饒舌感が半端ない。


「アメンボ赤いなたちつてたぬき」


あと、変わったといえば、そう、頭が回らない。簡単な単語、とか、ことわざも出てこないー。


頭に手をやると、珍しく髪の毛が一本に結わえられていることに気づいた。


というか、ふわあああー、眩し。ここどこー……。今何時ー?

ええっと……まって、うぬー……。


確か、僕はトイレ掃除をして、そのとき6時くらいで、


家に帰って……


あ、鍵をなくしたんだっけ。


で、えーっと……公園で、女の人に出会って、その時……午後6時過ぎ……くらい?


でも、周りは明るい。太陽の光が眩しい。

しばらく散歩してみようかなあ。


……ちょっと待った。もし今が明日なら、つまりは、そう、鍵をなくした日の次の日なら、僕は2日連続で遅刻した高校一年生なのでは?


それはまずいことなのでは?


いやでも、もしかしたらまだ今の時刻は朝の5時なのかもしれない。そしたら学校は一番乗りだ!ただ、問題があるとすれば、


「とりあえずここがどこだかわからない事だなー。」


僕は時計を探すために、また、ここがどこだかを探るために、辺りを見回した。ふふん、探偵。


そして、変な服を着ていることを知った。

白いワイシャツに、襟のついたこれまた白いベスト。ただし、襟の部分にはライムグリーン色のラインが引いてある。袖は短く、下も短い。ミニスカートにニーハイソックス。ニーハイは黒。そのいずれにもライムグリーン色のラインが付いてて……あ、このマーク見た事ある、何かなー?


ふむ……これを可愛いと思う感性は僕も持ち合わせている。ただ、もっと不思議なのは、これを着てても暑くもなく、寒くもない、ということ。うーん不思議。不思議すぎて90度に折れ曲がりそう。


僕が立っているのはコンクリートっぽい、だけど薄橙色の道路の上。両端の土はのびのびと育った雑草たちが覆っている。幾つか木も立っているなあ。木でかいなー。マンホールの蓋が熱くないから、夏ではなさそう。おしゃれなマンホールだ、鉄じゃない。ちなみに僕はマンホールの蓋で目玉焼きを焼いたことがある。もちろん、ちゃんとフライパンの上に卵は落としたよ?直接落としたら食べられないもん。夏はガス代が節約できて、僕は好き。これは昔の話。小学生の時の話だ。

「美味しかったなあ……目玉焼きい!?」


その時、僕の近くでガサガサっと音がなった。草が身長くらいあるから怖いんだよう!

僕は全身に鳥肌がたった。まだ心臓がばくばく言ってる。痛い……。


音がなったのはこの雑草たちからかな、と思って、近くの雑草に怖いもの見たさで近づいた。

「びゃあああ!?」

何か、黒い影が草むらから飛び出してきて、僕は尻餅をついた。ほんとに怖いもの出てきちゃった!


「なになに!?」

「ガウルルルルル……」

僕を見つめる二つの瞳。

僕は慌てて後ずさった。

「ガガガガガガアバババババババ………」

「ガウルルルルル……」


僕はもっと後ずさった。


毛並みは黒色……。硬そうな黒。

口には鋭い牙が多く並んでいて、口の中は血のように赤い。

絶対あの牙、草食じゃないよね……。

……どちらにせよ……勝てないのは間違いない……。


なんせ僕、人間だし……。


そういえばさっき、狸になったなー…

……!狸なら化れるんじゃない!?

こう……すっごく強〜い生き物に化けて……


「無理だねー」

僕は耐えきれずに、立ち上がって走り出した。

「ガルウウウウウウ!」

「びゃああああ!?」

絶対これ追いかけてきてるよーーー!


逃げられないのは間違いない……!どこかに隠れ、隠れたい!隠れよう!


僕は視界の端に明るい店をとらえた。

コンビニだ!?あそこに逃げ込めば……大丈夫か……?人もいるし!

しかし、謎の影の方が早かった。


「ダメだった〜!」

僕はうつ伏せに寝っ転がった。何故なら、上に重いもの、つまりは謎の影が乗っかったからだ。

熱い息が首にかかる。

これ……僕は……食われる?


「いやああああだああああああたべないでえええええええ!美味しくないすごくまずいものすごくまずくて反吐がでるよおおおお!だから食べないでえええ!お腹壊すよおおおお!」


僕がこんなに叫び、のたうちまわっても謎の影は爪を背中に食い込ませて僕を抑えようとしてくる。

今更たぬきに変化しても……さらにダメそうである。

一瞬で食べられそうだなあ〜……。

僕、今友達(武器)も無いし……。

確かに願いはないと言ったけれどもさ、かと言って食べられていいというわけじゃない!


あれ、願い?願いって、なんで僕、今願いの話なんて。


というか今それどころーじゃないっ!

痛いだろうなあ……食べられるの……。

「ガウルルルルル……」

「誰かー!助けてー!」

僕は喉が裂けそうになる程叫んだ。



「スキルスイッチ![聖剣装着]!」

そんな声が聞こえて、僕の前髪がふわりと浮いた。

そして僕にかかる生暖かい赤い液体。

くんくんくん……鉄の匂い……?

うつ伏せになっている僕の隣に、狼のような頭が転がった。


……。

「ぎゃあああああああああ!!」

僕が起き上がると、狼の胴体らしきものがごろんと僕の背中から転がり落ちて、地面にドシャっと落ちた。


「ふゃあ……」

涙で視界が曇る。だというのに、鼻水も汗も出ない。

「大丈夫?」

手を差し伸べられ、僕はその手を掴んで立ち上がって……少年の顔を見て、また叫んだ。

「かへっ!かへりちが!返り、血があああああ!?」

「あー、わかった、わかった、まだこの世界に入ったばっかなんだ、キミ。」

「ぎゃあああああああああ!!」

「人のことをいきなり指差して悲鳴を上げないでくれる?失礼だね、助けてあげたのに。」

「ぎゃ、え?」


目の前にいたのは、金髪の美少年だった。僕よりもだいぶ身長が高い…ええっと、僕が150cmくらいのはずだから……2…00?……まあありえるか、な……?

悪戯っ子のような笑みを浮かべているが、持っているロングソードは少年の方っぽの赤い瞳のように、血にまみれていた。


……真っ赤である……。


やっぱり…殺したのは…この少年で……


「ひんぎゃあああああ!」

僕はその美少年から全速力で離れた。殺される!あれだよくある、たまたま殺人現場見て殺されるパターンだ!友達に借りた本に書いてあった!


「すごく失礼だね……相変わらず。」

僕は少年が来ないように手を伸ばして……あれ、僕の手が赤い……。


ひゃ、ぎゃ、ぐえええええ!?


「ちょっと落ち着いてよ……。ボクだってまだキミに会いたくなかったのに。」

美少年は呆れたようなため息をついて言った。


逃げよう。とりあえず逃げよう。全速力で!

僕がくるりと反転して逃げようとすると、僕の手を掴まれた。痛い。ふりほどけない!


「は、離して!!」

「なんかその言い方だとボクが悪い人みたいじゃないか。別に何もしないよ。話を聞きたいだけ。」

僕が手を振り切ろうとすると、美少年は何かを企むような笑顔で言った。


「え?はあ……。」

僕は生返事をした。


「本当に殺しをしたわけじゃない。ね、その証拠に血だって消えてるでしょ?ブラックウルフだって、ね?」

ぶらっくうるふ?黒い狼……。でもそんな名前の動物いたっけ?僕が知らないだけかな。

でも確かに、美少年の言う通り血は消えている。


「なんで……?」

「ここが夢の世界だからだよ。死体も、腐ったものも、美しくないものは勝手に消える。」

ほお……?ふーん?血って腐ってたっけ……?いや、血は新鮮。赤かったし。


「そーなの……」

「うん。」

ふーん??

僕が考えこんでいると、少年はロングソードをカチッとしまった。あ、ロングソード…あれ?立派。すごい、立派。お兄さんのとこのより随分と立派。


美少年の青と赤い瞳が僕をじいっと見る。別に、美少年に対して何も感じないわけではない僕は、少し照れる。


しばらくの間の後、少年は息を吸い込んで、何かを言おうとした。

「どうして」

と、そこに、赤髪の少年が美少年に飛びかかった…誰?いや、というか、そもそも美少年のことも僕知らんけど。


「ありおりゅさまあ〜!見つけたっすう〜!」

「ちっ…しまった。ねえ、キミ。話の続きはアリオールギルドでしよう。次は邪魔の入らないようにするから。待ってるよ。」

……はあ。

よく分からないまま、ささーっと美少年は消えてった。


ぶすったれた顔の赤髪の少年が、僕の方を見た。む。なぜ睨む。

そして、その口が開いたかと思うと、矢継ぎ早に僕に向けて、マシンガンみたいに言葉を吐き出した。


「ところで、あんたのマジックは何っすか?多分っすけど、何か補助系のマジックっすよね。ブラックウルフを倒せないんじゃ、攻撃系のマジックなら意味がないっすから。というかありえないっす。補助系統のマジックならギルドの引く手数多だろうっすけど……アリオール様のギルドに入るつもりなんだったら、ブラックウルフ程度は余裕で、一撃で倒せないときついっすよ。最低でもチェーンベアくらいは倒せないとだめっすね。ドラゴンに挑むには弱すぎるっす。それとも、アリオール様が欲しがっている、回復系だとでも言うんすか。どれくらい回復できるっす?SP回復持ってるっす?それとも強化とかできるっすか?ねえ?どうなんすか?」


えー……どう返せばいいのだろう?僕は今の質問一つも覚えてない……。よくわからない言葉を喋っているようにしか聞こえなかったよ?


とりあえず愛想笑いしとこう。

「あー、うん、えーっとね……うーん」

「ああ、もしかして本当に回復系っすか?…最悪っすね。それで、SP回復もできて強化もできちゃう系なんすか?」

「え、それは違う……と思う?」

「ああそう。それなら良いっす。」


赤髪の少年は、ちょっと考え込むような態度を取った。大義名分がどうとか、そんざいをまっしょうとか…え、存在を?聞き間違いだよね。うん。


「ま、回復、使えるようになったらギルドに入りやすくなるらしいっすから、回復スキルでも取るように頑張るがいいっす。多分、今のあんたの状態で受け入れてくれるところなんてないっすから。あ、それと、アリオール様のギルドに入るなんてこと、考えないで欲しいっす。」

言葉の洪水をばーっと僕に浴びせた後、

赤髪の少年は僕に背を向けて一瞬でいなくなった。え、え、どこいった!?忍者!?

あれ?なんだか失礼なことを言われた気もする。


……気のせいかな。で、えーっと、何をしようとしてたんだっけ?

その時、見覚えのあるアホ毛の男の子が目の前を通り過ぎていった。えーっと、どこで見たんだっけ……?なんだか白いイメージ……。


ま、いっか。

何をすればいいのかもわからないし、黒い犬に絡まれたり、不良に絡まれたりして、ここは怖いところだし。あの男の子についてってみようっと!

僕は歩き出した。


登場人物が、一気に4人に増えた!

セリフが多くなると、個人的には読みやすくなります。でも書いてて楽しいのは地の文だったり。

このタイミングでここに降り立ったのがこの子じゃなければ、ここでブラックウルフをマジックで倒して、チュートリアル完了でした。

主人公の背は縮んでいます(130cmまで)。それを彼女が知るのはもっと後の話。

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