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DREAMERS WORLD 〜たぬきはせかいをすくえるか?〜   作者: からかさたぬき
第1章 草木の街、ブルーム編
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キャラメイクって何ですか?


 目を開けると、白色が飛び込んできた。


 もしかしたら私は牛乳の中に落ちたのかもしれない。そうだとしたら贅沢なお風呂だ。牛乳風呂は美容に良いと聞いたことがある。


 ただおかしいのは、私が息ができていること。魚になったのか。そんな荒唐無稽なことがある?


 そして、私は一度も牛乳に入ったことも、入ろうと思ったこともないってこと。


 ただ、もしもいつの間にか、なんでかは分からないけど、液体の中に入り、呼吸をしているならば、

 「えら呼吸かあ」


 私はエラができそうな部分を触った。しかし、エラはなかった。


 そこで私はもう一回目を閉じて、また開けて、視界がはっきりするのを待った。


 そこは白い壁紙と、白い絨毯の部屋だった。どうりで息が出来るわけだ。私は肺呼吸のままだった。


 「そこ!聞いておるか!大事なセミナーの最中に寝おって!」


 私が状況を把握したところで、白ひげの赤い装束のおじいさんが、顔を真っ赤にして怒鳴ってきた。え、誰?


 周りの人たちを見ると、みんな変な衣装を着ている。いわゆる童話に出てきそうなお姫様とか、王子様とか、よく分かんないのとか、いっぱいいるなあ。みんな私を見ている……。


 あれ?これ既視感あるぞ。いつの記憶だろう?


 「聞いておるのか!そこのドリーマー!」


 真っ赤なおじいさんが私を指差した。サンタ……?


 「ふえ」

 「ふえ、じゃ、ない!」


 どりいまあとはなんだ?


 「質問」

 「なんだ!」

 「どり、いまあ、何?」


 その途端、周りの人達が大笑いし始めた。失礼だな!うまく喋れないのは、声を出す事に慣れてないからで、本当はもっと、こう、流暢に喋れる、んだぞ。たぶん。


 「はあ……。もう一回説明しなきゃいけんかの。ではきちんとセミナーを聞いていた生徒は先に進みたまえ。ここからの、新たな人生で役に立つ武器を揃えているからの。そこのへっぽこ……失礼、そこの間抜けなドリーマーくんの様に聞き落とした生徒はまたここに留まりたまえ。」


 そうおじいさんが言うと、私以外の全員が、奥の扉を開けて白い部屋から出て行った。


 そういえば私の衣装は白色だ。ベストだ。ついでにミニスカだ。ライムグリーンのライン入りだ。

 へんー。


 「さてへっぽこくん。」


 へっぽこと言われ、私の頭で狸がダンスしている。ぽこぽこ。


 「この世界では、マジックと呼ばれる能力が一人一人に与えられている。マジックはいわゆる超能力の様なものじゃ。

であるからして、」

 「質問」

 「なんじゃ?」


 おじいさんは私を見て言った。まるで今の説明でどんな疑問があるのかとイライラしているように見える。小学校の時の1+1は2だよと教えてくれた先生みたいだ。私が読んだ事があった本には一個の粘土と一個の粘土をくっつけても一個にしかならないよねって書いてあった。だから私は未だに、1+1は2なのか、それとも1なのか、それとも皆の言う通り、十なのかよく考える。


 「ちょーのーりょくって、な、に?」

 「はい?」


 おじいさんは目をパチクリさせた。


 「特別な力じゃ。」

 「たとえば?」

 「念動力とか、瞬間移動とか……ものを凍らせたり、燃やしたりだとかとかじゃが?」

 「ねんどー、りょく、しゅんか、んいど、おーって、な、に?」

 「念動力は、物体を触らずに動かせる能力で、瞬間移動は、遠く離れた場所に一瞬で、移動する能力じゃよ。」

 「なん、で?」

 「……特別な力だからじゃが?」


 おじいさんの顔が少し赤くなった。

 じゃあ、どっからそのエネルギーを得ているの?


 「エネ、ルギー、どっ、から?」

 「……さあ……」


 もう少し赤くなった。

 凍らせるってことは吸熱反応?取った熱はどこにやるの?


 「熱、はどこ、に?」

 「……さあ……」


 さらに赤くなった。


 瞬間的に移動するなんてどういう原理?空間と空間をつなげるのに空間を曲げるなんて、そんなこと人間ができるの?



 ああ、そんなことに人間の脳は耐えられるのか?



 私が言いかけた時、おじいさんは

 「……うるさーい!せっかくもう一度説明してやっておるのに、なんじゃその態度は!とりあえずスポーンしたら塔の形をしたドリーマーカルスに向かえ!そこでドリーマースマホを受け取れ!あとはヘルプでも見てなんとかしろ!」


 結構赤くなった。


 「スマホ……?」


 すぽ、ーつ?か…カフェイン?へる…めっと?

 ヘルメットをかぶりながらカフェインを取りつつスポーツをする。


 「え?」


 「とっとと行けい!」


 もうおじいさんはタコみたいになった。


 「……ふぇい……」


 納得がいかなかったが、私はおじいさんの言う通り奥の扉を開けた。


 そういえば、特になんにも教えてくれなかった。なんのための時間なんだか。変な言葉の羅列しか分からなかった。




 「やあ、いらっしゃい!なんでも武器、あるよ!一番最初の武器を選ぶんだ!大丈夫。あとで自分で購入すれば武器の種類は変えられるよ!」


 ごついお兄さんがニカッと笑った。うっ……怒らせたら……すごい怖いかも……僕、怖い。

 ……少し、自分が思った事に違和感を感じた。でも、その正体を私は探せない。たぶん、お兄さんの言語が少しばかりおかしいって事だろうか。

 そこにあったのは、何やらよくわからないが、木で作られたなにかがいっぱいあった。

 私が知っている武器といえば、銀色でぴかぴかしたやつとか、戦車とか、銃とか。

 木で作られた武器、なんて聞いたことがない。

 この細長いのはなんだろう。


 「何?」

 「ロングソードだよ。」


 ろんぐそーだ?


 「ソーダ?」

 「ソード。」


 ソード……ああ、剣。普通に日本語で言ってくれればいいのに。


 この平べったいエイみたいなのは……

 「何?」

 「……それは盾だよ。」


 今度は日本語だ。こんな木の盾じゃ守れそうにも無い……殴られても痛くはなさそうだけど。でもカフェインを飲みながらヘルメットを被ってやるスポーツに使うなら、ヘルメットがあるからいらないんじゃないかなあ。


 この月みたいなものはなんだ?


 「何?」

 「……それは、弓だよ。」


 あー。……矢がないよ?どう使うの?

 あ、これはろんぐそーどかな?


 「ろんぐそーど。」

 「………違うよ、それは投げナイフだよ。」


 似てる…長さが違うだけですごく似てる……。

 んー、じゃあこの飾りがついてるシャラシャラしたやつはなんだろうか。これが一番不思議。これで殴っても……痛そうだけど。でもなー。んんん。


 「何?」

 「…………それは杖だよ…」


 つ、え?あの、おじいちゃんとかが使ってたりとか、登山のときとか、歩行を助けるやつ?いや、うん。んんん?んー?


 わからん。


 私は他にもいろいろなぶき、というものを振ったり投げたり回したり、乗ったりしてどんなものか確かめていた。すごく真剣に確かめていた。盾は乗ったらちょっと浮いた。えっなんで?


 だから、後ろでこの、武器、の解説をしてくれている人がふるふると震えているのには気づかなかった。


 「………出てってくれ……」

 「えっ」

 「武器が何か、お前は分かっていない!」


 ふむ、武器って……確かにわからない。というか、知ってたはずなんだけど、今迷ってる。


 「何?」

 「一生涯のパートナーだよ!命を守ってくれる親友だよ、家族だよ!だからそんな風に適当に扱うもんじゃない!もうやめてくれ!お前にやる武器はない!」


 なるほど完全に心得た。合点がいった。だから、杖?があったんだな。

 そっかー、ぶきって、友達のことだったんだ……。友達はぶきとも読むのかー……。日本語は奥が深いなあ……。

 私はろんぐそーどで殴られそうだったので、その奥の部屋へ移動した。

 あれで殴られたら痛そう……尖ってるし……。というか、友達で人を殴るのか?





 その奥の部屋には、前の二つの部屋と違って、まだ人が大勢いた。

 部屋の奥の方にいたお姉さんが、私に気がついて近づいてきた。あ、優しそう。今度は怒られないといいな。あ、私、この格好の人知ってる。シスターだ。


 「こんにちは。ここは、あなたに眠るマジックを覚醒する場所です。」

 「かく、せい?」

 「目覚めさせるという意味です。さあこちらにどうぞ。」


 覚醒の意味くらいは知っている。ちょっとセリフの意味が追いつかないだけだ。なぜなら、私は今眠っていないから。一体私は何を言っている?


 ただ、ふむ。この人は話が通じそうだ。やはり先程までの人たちは沸点が低かったのだ。低すぎだ。液体窒素だ。


 私が並んだのは列の最後尾。5人くらいの、主に若者が並んでいて、みんなへんてこな服装をしている。さっき私を笑った人がいっぱいいる。笑うなら笑えばいい。人の顔なんて気にしていたら疲れる。そうだろう?まあ、友達はできなくなったけど。昔はたくさん居た気がする。


 「つぎー、前へ!」

 「は、はい!」


 列の一番先頭の男の子が呼ばれた。頬が上気している。嬉しいのかな?嬉しいのかー……。私にはよく分からない感情だ……。何をするかもわからないし。


 「あなたにはこのマジックを授けましょう。」

 「わあ……!」


 男の子は力がみなぎるポーズをした。


 「すごいです……!」


 男の子の頭上で、神聖な光が光った。何かが降りてくるみたいだ。

 男の子は優しそうなおじいちゃんと男の子の間にある石に手を差し出した。中国の、医療の、気をうつみたいに。んー。あれか。技の伝承式か。


 石がぽうっと緑色に光る。


 「うわあ!ヒール!?」

 「眩しい!すごく強いんじゃない!?」


 声と周りの拍手。そういうものなのか?


 「では次!前へ!」

 「はいっ!」


 次は女の子が前へ出る……。




 ……飽きた。


 だって同じことの繰り返しだから。最後のセリフが地味に変わるだけなのである。

 なのになんでみんなあんなに楽しそうに拍手してるんだろう?私には分からない……。


 マジック、ってみんな違うのかなあ?石が赤とか青とか、紫とかピンクとか、時々石が消えたりとか。白く光ったりとか。ぺかぺか光るのを見てるだけ……それを見て、ひ、とか、げーわくほーじゃね!?とか叫んでいる観衆。


 うーん。何が違うのだろう?


 「違うの?」

 「え?」


 あー。伝わらなかったか。


 「みんな、のマジック。」

 「ええ、そうですよ。」


 シスターさんは何事もなかったように頷いた。


 「あれ、どうやって決めてる?」

 「神の啓示です。あの神子様が読み取られます。」


 神様……ああ、あのシツレイな女の人ね……。みこ…おじいさんだけどな…巫女なのに……。

 あっという間に私の番。あれ、どうすればいいんだっけ?

 なんだかみんな決まる前から笑っている。


 「あ、さっきの。」

 「あのへっぽこちゃん、どんな能力かなあ?」

 「まだ出てないのって召喚能力とか?ミミズとかしか出せないんじゃね?いや、ミジンコとかかも」

 「なんにせよしょぼいマジックなのは間違いないよねえ。」


 しょーかんのうりょくってなんだろう?しょーかん。商館?外交官?

 


 少しばかりぽけーっとした顔をしていると、いつの間にかマジックを目覚めさせるのが終わったらしい。私は何もしなくて良かったのか。助かった。

 そのままぽけーっとしたまま神子さんを見ていると、神子さんは困ったように頭を掻いて、言った。


 「石に向かってマジックを使いましょう。」

 「……どうす、る?」

 「思い浮かべるのです。マジックを使いたいと願うのです。神の御心のままに。」


 んー……マジックマジックマジックマジック……

 名前ペンしか出てこない……


 「やっぱりへっぽこだから、できないのよ。」

 「へっぽこだからなー。」

 「へっぽこちゃあんがんばれ〜!」



 へっぽこ……へっぽこ……へっぽこ……ぽこぽこぽこ〜狸〜たぬき……。


 "僕"の頭の中に、ノートに書いたたぬきが鮮明に思い出された。


 ぽふんと音がして、"私"の視界が少しばかり低くなった。


 「……」


 また、とても部屋が静かになった。


 「あのー……鏡見ます?」


 先ほどの優しいお姉さん(シスター)が鏡をすっと出してきてくれた。


 私は鏡を見た。


 そこに写っていたのは……


 たぬきだった。


 "うん、僕たぬき好きだよ。"


 「マジック[たぬき変身!]

たぬきに変身する。素早さがおよそ十倍になる。攻撃力が三倍になる。ただし、スマホの使用不可。

また、常時、変身用武器以外の武器の携帯不可。防御力がある装備の装着不可。また、たぬき状態以外でのスキル使用不可。」


 まったく、意味がわからない。理解、できない。


 「たぬー、たぬたぬー……」


 だめだたぬしか喋れない。


 "僕"は人間の姿に戻った。良かった戻れて。……あれ、今なんか、鏡に一瞬写った自分が変だったような……?気のせいか。


 「やっぱりへっぽこだった……たぬきとか。」

 「絶対炎食らったりドラゴンに食われておしまいだな。」

 「うんうん。」


 その部屋にいた全員に、へっぽこ認定をされてしまった……。へっぽこ……。使い方間違ってると思うんだけどなあ。


 でも、ま、いっか。狸好きだし。人間やめれたし?神様はきちんと願いを叶えてくれたのだ。


 「さあ、皆様。お待たせいたしました。今日からの新しい人生を是非、楽しく過ごしてくださいね。」


 新しい人生?え、なに?私死んだの?


 「では、いってらっしゃいませ。貴方方に神のご加護がありますよう……」


 疑問は全て吹き飛んで、

 私達、じゃない。

 僕らは光に包まれて、やがて意識がまた飛んだ。



 私は……何かを忘れて、何かを得て、そして何かを失った。


三話目です。

らいうは、特に現実の木隠は、本当に無礼なやつです。一般常識の欠落。


続けて読んでもらうには、最初の三話が肝心だと、聞いたことがあります。

いかがでしたでしょうか。読んでもらえてたら嬉しいな……よければリアクションお願いします。


マジックについて

マジックとは一人一人に固有の能力の事です。

夢の世界……つまりドリーマーズワールドに入る為には、神様と謁見する必要がありますが、

その際に願った3つのお願い事から、最も強い願いが参照され、割り当てられます。

願いがそのまま形になるパターンもあれば、その願いを叶える為に必要な鍵となるパターンもあります。

どのマジックも効果は強力ですが、一方で何かしらの制約が存在しており、

[たぬき変身]を持つ彼女の場合は、強力な装備が使えなくなる、というものになっています。


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