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あなたの夢はどんな夢?


「ここ一週間ほど、正体不明の睡眠ガスが毎晩発生している模様です。」「連日多くの人が道端で睡眠状態に陥っています。」

「警視庁の発表によりますと、現在調査を進めているとの事です。」「それってつまり、何も情報は得られてないってことですかー?」「素行の悪い若者が減るなら願ったり叶ったりですね笑」


「政府は夜間の外出をなるべくひかえるようにと国民に…」


今日は、一日中晴れ。降水率0%、か……時間は、

「あー。……少しばかり、良くない。」

私は女子高校生であり、今日は入学式。もやしをむしゃりつつ、テレビを見やる。もやしはうまい。


春休みとは罪なものだ。

私は昨日目覚まし時計をかけ忘れた。テレビを点けて、今が何時か気づいた。

端的にまとめれば、終わった。そう、終わったのだ。大事なことだから三回言う。終わったのだ。

テレビのスイッチを消して、玄関の扉を少しばかり、開けたけど、スマホのデジタル表示が虚しく、私に目立たずひっそりと、高校生活終了のお知らせを告げている。無駄に長いこの髪の毛が、吹き込んできた風にあおられる。ボサボサだ。

ああ、やっぱり少しばかりは、目立つだろうな。

………。

……………。

……諦めよう。

入学式の始まりまではあと35分。全速力で走って、踏切に引っかからなければ30分。

よし間に合わない。部屋に戻って、これからの身の振り方を考えるべきだ。

……いいや。二度寝するか。仮病と偽って。

……もう少しきちんと考えよう。

学校に行かない、恵がお節介にも電話をかけてくる、仮病がバレる。演技はうまくないほうだと自覚している。


とりあえず私はドアの鍵を閉めて、スカートのポケットに入れて、何も考えずに歩く。とにかく歩く。ま、どうせ頑張ったって間に合わないし。諦める。行こう、と思ったことが大事。この長い生涯、諦めも大事。

アパートの階段を降りて……角を曲がり……住宅街を走り……近道に工場の駐車場を抜けて……大通りに出て……

そして踏切に引っかかる。ほらね、急いだって無駄だった。

私を排水溝の黒い穴が見つめている。

カンカンカンカン…。

踏切の音がうるさい。

当然ながら、まわりに歩いている高校生はいない。

別に、それは走っている高校生が他にいるという意味でもない。

つまりは、私しかいないという意味。後は犬の散歩をしている老人くらい。

踏切が開いた。

すごい走れば、間に合うかもしれない。………もしかしたらだけど。

もしかしたらなら、頑張んなくていいや。

あと1分。

私はのんびりと歩いた。



その三時間後、私は何人かの生徒とともに職員室で、パーマがかかっているおばさん先生に怒られていた。割と遅刻する人いるんだな。私よりは早かったみたいだけど。

「入学式早々遅れるなんて!私の教員生活の中で一度たりとも見たことがありません!あなたたちにはトイレ掃除を命じます!」

えー。

「絶対毎年言ってるよな…」

「なー…」

隣で他の遅刻者がコソコソ話している。

「そこうるさい!!いいですか、トイレ掃除ですよ!」

「はーい」

私達はトイレ掃除用モップと、ゴム手袋とバケツを持って職員室を出た。職員室の前を通った数人の女子達がクスクスと私達の事を笑った、気がした。


二時間半前……。

私は一生懸命歩いたのだ。

そして、入学式をやっているだろう体育館にカツン、と足音を響かせて、悠々と堂々と入場した。きっと、堂々としていればなんとかなるもんである。別に私遅れてませんよと涼しい顔をしていたほうが目立たない、はずだった。ちなみに、私の前にいた人たちはコソコソと入っていった。

「であるからして……!?」

校長の話の途中。校長が話を止めた。何をしてくれてるんだ。そのまま話し続けて欲しかった。

私含め遅れた人たちは何事もなかったフリをして、そっと適当な列の後ろに並んだ。

クラスわかんないし。

そして怒られた。

……。


中学校から一緒の恵が、職員室に呼ばれた私を待っていた。

「大丈夫、らうっち?帰ろー!」

私はかけられたその言葉よりも、恵の手の甲に書いてある変な絵が気になった。丸に、三角が突き刺さっていて、女子トイレのマークみたいだ。丸の周りにはもう2回丸が描いてあって、まるで三角から伸びた手を繋いだようなフォルムをしている。

「ん?これ?あー、最近流行ってるおまじないだって。面白い夢が見れるんだってさ。」

別にずっと書いてなくてもいい、一回だけ書けばいいらしいんだけどねと言っている恵の声が、なんだか不思議に聞こえた。

宗教勧誘みたいだと思った。

恵に、トイレ掃除を命じられた。と言って先に帰ってもらった。

恵は待つよー!と言ってたけど、私はすっぱり断った。


私はまず、一番近いトイレに向かった。

トイレのドアを開ける。

掃除するって言っても、あんまり汚れてなさそうだ。意味がない行動はしたくない、けど、命じられたからには、目立たない行動を心がけなければ。だって出る杭は打たれるし、異端は群れから追放されるからだ。


とりあえず私はそこら辺のモップをばちゃっと水を張らせたバケツにつけて、ばちゃっとモップを床において、ばちゃばちゃと掃除をし始めた。

トイレの外は騒がしく、数人の人間が集まっているようだった。帰りの会はずいぶん前に終わったはずだ。どうしたのだろう?

そっとトイレのドアを少しばかり開けて見てみると、人だかりができていた。真ん中にはお人形みたいな美人。んー?外人か?ハーフか?

ふむ……。

私はトイレのドアをそっと閉めて、もう一回モップで床をばちゃばちゃし始めた。はあ。

「……」

だんだんと日が傾き始めてきたが、まだ扉の外は騒がしい。

「……」

オレンジ色の光がトイレに差し込むなか、私は黙々とトイレ掃除。と、いうかトイレ掃除ってこういうことでいいのか?適当に始めたけど終わり際が分からん。

「……」

……この調子だと私は帰れないんじゃ……それは嫌だな。


焦りがそれを引き起こしたようだった。

「うわっ!」

水を組み替えたとき、バケツを落として、中身をすべてぶちまけた。

…あーあ。

…これはこれでいいや。

拭くのも後ででいいや。

しばらくして、外から悲鳴が聞こえた。外、とはトイレの扉の外だ。

どうかしたのか?美人が増えたのか?

掃除を終わろうとした私がそっとドアを開けると、みんなが爪先立ちで立ちながら逃げていた。

「?」

「きゃーーー!?」

「うわーーー!?」

「いやー!?びしょ濡れーー!」

大勢の上履きが水に濡れていた。

あ……まさか。…まあいいか、バレなきゃ問題ない。

私がキーッと音がなるドアをそっとしめると、すぐにそのドアは勢い良く開けられた。

「誰もいない……?」

「え、こわ!」

「え、なに、幽霊?」

「お前見てこいよ」

「嫌だよお前見てこいよ」

前にたむろしていた人たちは、怖がって私がいるトイレから離れていった。

ふう〜…大勢の生徒の目が私に突き刺ささるとこだった。危ない危ない。セーフ。咄嗟に掃除用具入れに隠れててよかった。

このままバレないようにそーっと帰れば……。

「これは何事ですか!」

先程私を怒った先生が、さっきたむろしてた人たちの一人に連れられて目を吊り上げてやってきた。うっ。

困った。掃除用具入れから出れない。



学校からの帰り道、畦道の上を近くの球団の練習チームが駆け足で私の側を通り過ぎていく。私は道を開けるために少しばかり左に退いたのだけど、何故か左には道がなかった。

「……わ」

そして、私はお昼の雨で濡れている草むらにゴロンと寝転んだ。

黒いカラスが電灯の上に止まって、寂しそうにないている。

「あー……」

一体、私自身のどこが悪いのか。

いんや、悪いところなんて知らない。反省なんぞしていない。何も悪くない。私は何も悪くない。

雲が、灰色の雲がオレンジの光に照らされてふわふわと漂っている。

「はあ」

悪い、ことしてる。かもしれない。


人並みになれるように、私だって少しばかり頑張ってはいるのだ。

……真面目に走ってないし、トイレ掃除は適当だけど。まー。そういうものだ。世の中、中途半端にやったほうがうまく回る。何かに執着するなんて、みっともない。これが持論だ。何事も適当に。真面目にやったって評価されるのは一部。そうだろう?

結局はいつも()()()()()者が全てを手に入れるのだ。

ただただ、なぜ結果的に素行不良になるという所はまあまあ悩んでいる。できる限り平坦に完璧にを心がけているのだが。だって何も変哲の無い日常が一番幸せだろうからな。


夕陽が川に反射して、眩しく輝いている。


いつまでも寝っ転がっていてもしょうがないので、私は鞄を持って、家路を歩いた。

今日の夕飯はどうしようか?んー、キャベツのお味噌汁がいいだろうか?……あーあ。この時間じゃお得品は買い占められているだろうな…最近味噌汁人気だし……あの先生が長いことあのトイレの前に居座るから……。ああ、結局はあの踏切が開いていれば……。

「はあ……」

原因は私のせいだが、それは認めたくない。いや私の仕業以外の何物でもないのだけれど、とりあえず今は誰かの仕業にしないと心が押しつぶされそうだった。

……いや、だから、私のせいじゃない!

「もう……いいや……」

スーパーなんて寄らずに、家に帰ってもやし食べよっと。栄養の偏りがあるか…?いや、あのもやしには豆がついていたはず。だから大丈夫だ。

その時私は、人にぶつかった。

「……わ。」

「きゃああ!?」

私が顔を上げると、そこにはサラリーマン風の女性がいた。女性は尻餅をついている。でも、サラリーマン風の格好をしているのに……野球帽をかぶっているのはどうにも奇妙だ。もっと他にいい帽子はなかったのだろうか?

「あ……」

私は目を合わさないように早足で通り抜けようとした。面倒が降りかかる予感しかしない。私はとっとと家に帰ってもやしを食べるんだ。


女性は私の手をがしっと掴んだ。久しぶりにこういうふうに掴まれた!怖い!

そして凄い剣幕でまくし立てるんだ。

「ちゃんと前を見て歩かないとダメじゃないですか!それとも地面に友達でもいるんですか!?あと」

「友達は、いません。」

すこしひねくれた回答。地面にいないだけで、たぶん、どこかには、いるんだろう。

私が帰ろうとすると、女性にとうせんぼされた。動きはや……今、だって私の後ろにいたじゃん。

「ちょっと待って下さい!」

「……?」

女性はニヤリとして言った。

「友達がいないんですか?」

私の沈黙をYesと取ったのかNoと取ったのか、女性はニンマリと笑った。コロコロとよく表情が変わる人だ。

「今の自分にご不満は?」

……ないと言ったら嘘になる。

私がもしもすごく足の速い人だったら、今日の朝も間に合っただろうし、私にもう少しコミュ力があれば、あの上履きを濡らしちゃった生徒と笑って友達になれたかもしれないし、私がもう少し要領がよかったらトイレ掃除だって早く終わっただろうし、私にもう少し運があったなら、踏切に引っかからなかったかもしれないし、私がもう少し注意深い人間であったなら、バケツの水をひっくり返したりなんかしなかっただろうし、私がいっそのこと人だかりの中心にいた美人だったならば、


全て、今日の所業の全てを許されたかもしれなかった。


と、いうかそもそもの話、目覚まし時計をちゃんとかけてる人であれば……。

ただ、この初対面の女性に、とっても怪しい女性にこんな事を言うのは何だかおかしい気がしたし、そして何よりも。

私の角砂糖一個くらいの大きさのプライドが許さなかった。

「……別に、ない、ですけど。」

「あっそうですか。じゃあいいです。」

女性は手をひらひらさせて私から離れていった。なんだったんだろう?


よくわからなかったし不気味だったけど、でもとりあえず私から離れてくれたので今のうちに早めに帰ることにした。もやし、もやし。

道中はあまり人気がなくて、街灯の明かりに蛾が集まっている。

私が住んでいるアパートはあまり新しくない。

いいや…少しばかり見栄を張った。すっごい古い。

ギシギシ音が鳴り、次の瞬間にはとれてしまうのでは、と心配になる、錆びたステンレスの階段に足を置いて一歩づつ登ると、私の家……私の部屋が見えてきた。

鍵を開けて、中に入ろうとする。お腹空いた。もやしを早くお腹に入れて、眠ろう。そう、鍵を開けて……

鍵を……


あれ?

あれれれれれ?

私はカバンをあさる。珍しく、サーーーっと血の気が引いた。地面から足が離れたみたいだ。

ポケットもなんどもひっくり返す。

もう一回鞄を、今度は教科書類も、プリントも、筆箱も何もかもを取り出して逆さまにして振る。

うそ、だ……いや、探せばあるに違いない…!

えっと、朝、すごくすごく急いでて、確か確か、えーっと、制服のポケット、上制服のポケットに、入れた?

私は必死でポケットをひっくり返す。

ポケットというポケットをひっくり返した私だけども、どこにも見つからない。何故か朝食べ途中だったもやししか出てこない。

あー……もう私は駄目かもしれない。見つけたもやしを食べつつ考える。

……どうしよう。

……明日からどうしよう。

……とりあえず今日どうしよう。もう一つの鍵…持ってればよかったかも。

……あー。


立つのに疲れた私は、角を曲がって、家々の温かい灯が灯った冷たい道路をとぼとぼ歩き、公園にやってきた。

公園なら、ベンチもあるし、街灯の明かりもあるから、もっと鍵が探しやすいと思ったのだ。……ふう。……まだ私は諦めてない、とりあえず諦めてもどうしようもないっていうのが本音である。家に入れないのはすごく困るし。

人にはこうやって話したことのない流暢さで、自分と話す。自暴自棄になって、ブランコを思いっきり揺らす。

キッコ、キッコと予想外に響く音にビビり、私は漕ぐのをやめた。

私はもう一回鞄を開いて、一つずつ物を取り出した。


今日貰った少しばかりしわくちゃなプリント。授業がないのに持っていった教科書。新品の筆箱。筆箱の中は、新品のシャープペンシルに、少し角が丸くなった消しゴム。傷がついた定規。

でも、どこを探しても、どこにも鍵を、私は見つけることができなかった。


「最悪」

私は物をリュックに入れて、ノートを取り出した。

その時、ガサゴソと目の前の草むらから音がした。

なんだろう?野犬か?

イヌはイヌでもたぬきだった。

何もすることがない私は、そっとたぬきの絵を描いた。丸い耳と、サングラスみたいな模様の顔。そしてもふもふの太い尻尾。たぬきの顔はすごく悲しそうに見える。

そして、なんだかシャーペンが勝手に動いて、たぬきの横にあの変な模様を描いた時、

「どうかしました〜かっ!?」

突然、そんな、とても明るく、とても呑気な声が私の耳に届いた。

「あっ…………」

えーっと、そう、えー。

「誰?」

「素直かーい!っていうか、そうじゃなくてですね、言いたかったのはそれではなく、別に私はツッコミをしたかったわけでもなくっ」

つっこみ……?

みんながよく言ってるアレの仲間か。

「こみけ」

「違います!ボケとツッコミ漫才の基本!」

「ああ、」

漫才か。この人、漫才師だったんだ。どおりで変だと。

「変じゃないですうう!って、だから違いますってあーーーもうっ!そんななんとも言えないようなつんまらない掛け合いがしたいわけじゃなくって!」

さっきあったばかりの女性は服装を整えていった。そんな変わりはないように見えるんだけど、なんでわざわざ整えたのか。

「良いですか、あなたは今、[絶望]しましたね?」

「……は?」

「鍵がないことに[絶望]しましたね?」

「……へ?」

「そしてあなたは、一瞬でも、今日一日一瞬でも思った……」

私は首をひねった。

「こうなればいいのにな、です!」

コウナレバ、イイノニナ?


「つまり、あなたの願望、欲望、空想、妄想、すなわちいいい!」

そして女性は一際大きな声で叫んだ。

「夢!」

女性は変に大袈裟な動作で私に向かって大きな声で叫んだ。関節大丈夫かな。

夜の公園で、一人の女性が、おかしな動作をしながら大声を出しているのはとても奇妙であった。それに、テンションについていけない。怖い。夜とは、静かにするものであろうよ。

女性の帽子が落ちた。女性の髪が、不思議な…なんとも言い難い色の髪が、青や緑や赤や黄色…人が思いつく限りの色が生まれ、消え、そして混ざり合うような色の、混沌とした髪色の髪が……地面についた。

そりゃあ、少しばかりは誰だって思うだろう。

「ん」

「私は、それを叶えて回っている……神様、なのでえす!」

神様、くらいは知っている。祝福あれえ〜って雲の上に乗って後ろから後光が差してて、羽が生えている人だよね。

「それは観音様と混ざっていますね。」

「…そう。」

「あ、はい。……いやそうじゃなくて!私は、神様なので、あなたが心で考えていることなど全てお見通しなのです!!そこを驚いてください!」

「私はあなたの願いを、叶えてあげられます!叶えて欲しいですか?」

人生そんな都合よくいくわけないよ。何言ってるの?

「いきなりのマジレス!心にダメージ125!」

あー。心の声が聞こえるのか。便利でいいな。口を動かすのは面倒だから。

女性は心臓を抑えてかがんだ。こういうときは救急車だっけ。救急車呼ぶか。

「そして真面目に看病された!これはイタイ!私の!心が!イ、タ、イ!」

叫んでいた女性は何事もなかったかのように立ち上がって私に笑いかけた。その微笑みは、神様のような慈悲に溢れた笑顔ではなく、まるでこれから新品のおもちゃが家に届くかのような……無邪気な子供のような笑顔だった。


「ねえ。誰しもが、自分の感情を抑えて、抑えて生きています。

そんなの、間違っていると思いませんか。

人はなりたい自分になる権利がある。あるに違いないんです。

もっと美人になりたいだとか。

もっと料理が上手かったらだとか。

もっと足が速かったらだとか。

あの人の隣にいれたらだとか。

人々が自分の欲望のままに生きる世界を作る。それが私の使命。」


霧のように消えてしまいそうなくらい色がないのに、目だけが妙に赤い。頭の中で、ゆわんゆわんと赤い目が揺れる気がした。

「……よく分からないけど、すごく壮大な話だっていうのは少しばかり、分かった気がする。」

久しぶりにこんなに長い言葉を発した。言葉を発しなくていいのに、発した。とても無駄な行動だ。

「それだけわかれば十分です。今までだって、あの世界に入った人の中で、私の思想が理解できる人などいなかったのですから。」

女性は自分の言葉に納得しているかのようにうんうんと頷いた。

ふーん。


「さあ、あなたの願い、あなたがこうなればいいな、と思っていることを三つ、三つ教えてください!あ、でも、願い事をいっぱいにする、とか、永遠に僕の願い事を叶えてください。とかはだめですよ!」

……三つね……。

ぐいぐいくねくね迫ってくる女性の顔を見ながら私は考えた。

真面目に考えた。

平坦で完璧……は願いたいとは思わない。私が求めているものは、もっとこう、別のところにある気がする。

もやし天国も……お金を払わないと農家さんが潰れるから本望ではない。誰かお金持ちがもやしをたくさん買って、私に提供してくれるような事は、あるはずがない。

人に言いづらい願いはあるけど、それは黒歴史だから言えない。

唯一ひとつだけ…絶対叶わない願い……。

「人間を、やめたい。」

「えっ!?」

そんなことってあります!?あなた人間じゃないんじゃ……と私は少しばかり失礼なことを言われた。

「3つないんですか!?というかそんな願いで良いんですか!?」

でも、いきなり言われて、三つも願い事でる?出ないでしょ?私は出ない。それに人間面倒じゃん?髪をとかさなきゃならないし、毎日お風呂に入らなきゃいけないし。

「えー……もうすぐ6時半なのに、困ったなあ……」

「?」

私の態度を何かよくわからない意味で受け取ったのか、女性は勝手にペラペラ喋った。

「時は金なりですよ?早くしないと怒られてしまいます。」

詳しいことはわからなかったけど、神様が、怒られる。神様も大変なんだなということは伝わった。

「しょうがありません。この手はあまり使いたくなかったのですが……。あなたの深層心理からあなたを構築します。」

深層心理から。人間やめたいっていう願いは通じたのだろうか?無かったことにされてないか?

私をその目が見つめる。それは、私を見てるのではなくて、私じゃない何かを見ている気がした。

「ええ。そうですよ。」

女性は"僕"に向き直って言った。

今度は、神様の顔だ。

不思議と、後光が指しているように見えた。そして、すごく、神秘的な感じがした。

夜の公園という事も相まっているのかもしれない。多分、光の元は蛾がたかる街頭だ。


「改めまして……。

私は、夢の神様です。

あなたの願いを、かなえます。

マジック、オープン、なんちゃって。

[ドリーマーズ・ワールド]!」



私は意識が遠のいた。抗おうとするのだけれど、まるで重力には逆らえないみたいに、

私、は落ちていく。女性の赤い瞳が、やっぱり、妙に頭に残った。

完全に落ちる前に……私、は、女性の声を聞いた。

「では……おやすみなさい。また会いましょう。ドリーマーズ・ワールドで。」


異世界に入ったあとの方がワクワクして好きなのですが、どうなんだろ、現実パートは好きな人いるのかな?

次はチュートリアル編です、ゲームをはじめる時は一番キャラメイクが楽しい。

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