異常or日常?
少女の名前は、先ほど少女が口走っていた名……ビアンカ、だということが分かった。
ビアンカは、僕が逃げ惑いジュンが剣を振り回し、フューがやれやれと言いながら自分だけにスキル「クリーン」をかけてさっぱりしているところを見て、鬼ごっこだと思ったらしい。
「ワタシも!ワタシも入れて!」
「ビア、ビア、ビアンカ助けて〜!」
「助けてじゃねえ!」
「良いぞお〜!」
ていりゃっとビアンカがジュンを投げ飛ばす。狼の時には華麗に着地していたジュンだが、人型になると……あ、あれ?普通に着地した!?
「ビアンカ。」
「ん?なーにー?」
「あれは、いくらでも投げても大丈夫な奴だよ!」
キラッ!僕の歯と、ビアンカの目が光った。
「わーい!ビアンカと、遊んで遊んでー!」
「うわー!?投げるなー!」
よし。ジュンの怒りがうまーく流れたところで、僕はちょっと森に狩りに行って、夜ご飯用の肉を取ってくるかな!そんなことしたことないし、多分テクニックの「材料剥ぎ取りテクニック」が必要だと思うけど!
「どうしましたらいうさん。微妙な顔をして。まあ、いつもですけど。」
「夜ご飯用のお肉、どうしようかなって。」
「あー……じゃあ、しょうがないですね。自分がとってきましょうか。無能ならいうさんたちの代わりに。」
え。ちょっとまって…え?
「え、でも、フュー、戦えないでしょ?」
「そんなこと言ったららいうさんだって戦えないではないですか。安心してください。自分はらいうさんよりはずっと強いです。まあ大抵の人がらいうさんよりは強いですけど。」
そう言って、フューは森の中に姿を消した。
あっ…あー……。どーやってモンスターを倒すんだろう……?案外武闘派だったりして。
フューが拳を握って回し蹴りをモンスターにお見舞いしているところを想像した。
あの細いなよなよした体のどこにそんな力が…でもなーこの前ホテルで見たアリオールは割と弱そうなくらい細かったし。ちゃんと見てないけど。そーいうものなのかなあ。
それにしても、そっか。フューは「材料剥ぎ取りテクニック」を持ってるんだな……。つまりそれだけ人助けを……。フューは僕の怪我も治してくれたし、きっとそういう風に溜まってったんだな。
僕も、人助けをするべきだよね……。
「おいらいう!突っ立ってないで助けろ!」
ジュンの悲痛な声が聞こえた。どうやら、ビアンカにいっぱい投げ飛ばされたらしい。
いやいやー?僕は投げ飛ばされても着地とか無理だし。ポキッっていくから。
それにさっき、助けてと言うなと言った人が何おっしゃいますか。
「今度はたぬきが遊んでくれるのか!?」
ビアンカが構える。ひいっ。
「そうだ!もっとこう、安全な……そう!陣取りゲームやんない!?」
「は?どういうことだ?」
えっと、確か……こういう絵で……
「ああ。三目並べのことか」
「さんも?なんだそれ!楽しそうだぞ!」
陣取りゲームっていうのは、通常、3×3のマス目に、◯と×を描いて、一列揃った方が勝ちという、書くものさえあればできる簡単なゲームだ。
へー。これ、三目並べっていうのか。
「だが、それ三人でできないよな。」
「ビアンカとジュンで対戦すれば良いんじゃない?」
「お前………何気に俺に押し付けてるな……」
「ワタシ、たぬきと遊んでみたい!」
た、たぬきって……もしかして僕のこと!?
「もしかしなくてもお前だろう。」
こんな少女にまでたぬき呼ばわりされるとは。僕から出る溢れ出るたぬきオーラがそうさせるのか。でも僕はどちらかというと名前で呼んでほしい。
ふふふ。しかし、僕と遊びたいとはね。
僕、このゲームそこそこ自信あるんだけど!
ふっふふーん。泣いても知らないぞー!
「も、もう一回もう一回!」
「ははは、たぬきはしょうがないな〜よーし、じゃあもう一回対戦してやるぞー!」
時刻はお昼過ぎ。でも、僕はお腹が空いたのも忘れて真剣に勝負をしていた。
なぜ負けるっ!?
「らいうお前……やっぱりぽんこつだな。」
あああああっ!久しぶりに言われたああっ!
「負けたああっ!もう一回!も、う、一回!」
「えー……もうワタシ飽きたぞー。ハラヘッター!」
あ、そういえばフューが帰ってきてない……。
そう思った途端、近くの草むらがガサガサ揺れて、フューが現れた。
「あ、フュー。どうしたの?」
フューは青ざめた表情でスッと息を呑んで、言った。
「ドラゴンです!」
○×ゲームとも言います。




