ギルマスってマスのお寿司の仲間みたいだよね?
ところで、ぎるどってなんだろう?
結局、ギロチンが訛ったのか、ぎうどん…つまり、偽うどん対抗戦なのか、はっきりしない。
僕らは今、街の人に聞いた、フューが入ってる?ギルド、が泊っているホテルに向けて足を運んでいる。なんと、あの高級ホテルだったんだよー!?信じらんない!
「ぎるどってなにー?」
「お前それ、前も聞いてなかったか?」
そうだっけ?僕物覚えに自信ないからわかんないや。
「僕は何でもできちゃうすーぱーうーまんだけど、記憶力だけは自信がないんだよねえ~」
あ、自分の興味あることを除く!
……興味があることすら、あやふやな気もするけど……。
「いやそんなしたり顔で言われてもな。と、いうか……ウーマン?」
ジュンは微妙な顔をした。そして、少しばかりの間、目をつむった。
しばらくして、ジュンは言った。
「安心しろらいう。お前はウーマンじゃない。まだ、ガキだ。だから、記憶力うんぬんかんぬんで落ち込まなくて大丈夫だ」
え?え?なにそのさわやかな笑顔?まるで可哀想なやつを見ているみたいな……。
気持ち悪いんですけど。
「ジュンくん。見た目で相手を判断するのはいけないと思うわよ?」
そうだそうだ~!……どういうことなんだろう?
あ、ところで。
「ギルドって何?」
「あっ。そうね。そうよね、うん。えーっと、ギルドっていうのはつまり、大きな組織のことよ。そう、大きな組織の総称。それがギルド。……我ながらうまく説明できたわね」
サンクが自分の言った言葉に自分で感心している。
なるほど……おっきな組織だから、それをまとめる人は強い人じゃないといけないんだね?
僕も、自分が理解できたことに自分で感心した。
「で、そんなくだらない話をしている間に、フューの近くに来たみたいだぞ?」
ががががーん!くだらない……。
く、くだらない……?僕の、せっかくの発見が……?
むうう……。
はっ! と、とにかく今はフューの救出が最優先だ!
僕がショックを受けている間に、僕らはホテルのフロントへの侵入を成功させたらしい。いや、まあ、お金持ってなくてもここまでは立ち入り自由なんだけど。
僕らがじりじりと観葉植物に隠れて近づいていくと、話し声が聞こえてきた。
「ごめんなさいごめんなさい」
「うるさい。ちょっと、黙ってくれない?キミにギルドを辞めてもらうのは、最近、キミはあまりにも役に立ってないから。さっきからずっと言ってるでしょ?」
足を組んで、手をひらっと翻す。その行動の一つ一つが自信に満ち溢れていて、何というか……それはきっと、フューの劣勢を示してるんだろうな、と思った。
「納得がいきません!自分が役に立ってないって、どういうことですか!?」
「そのままだよ。そのままの意味。説明の必要はないでしょ。キミがよくわかってるはずでしょ?というか説明しなきゃわからないなら、なおさらキミ、要らない。」
突き刺す様な、声だ、きっと僕が言われたら泣いてしまう。
「……」
「要らないね。」
確かに死んだことを、確かめる様な声だ。
隣で、ゴクッと、唾を飲む音が聞こえた気がした。僕の音だったかも。
「……どういうこと、ですか。」
フューは静かに、苦しそうに言った。
「そうだね……珍しく素直なキミに最低限の施しをしようか。
キミの回復行動は役に立っているよ?でも、それ以上のトラブルを持ち込まれても困るんだ。ハイヤルギルドといい、スザーネギルドといい……キミのせいで暴動紛いの事が起こっただろう?キミが回復する以上の負傷と損害が、ボクのギルドに生まれている。
幸いにも、ボクのギルドには回復師にヒーラー、治癒士…回復ができる人たちは大勢いるからね。キミ一人いなくなっても大丈夫。そう計算して出した答えだよ。」
美少年は余裕そうな笑みを崩さず、言い聞かせる様に、言う。
「自分を、追放するってことですか。」
「追放?大げさだなあ。そういう類のものの読み過ぎじゃない?
でも、間違ってはいないかな。戻してほしかったら、その後先考えない行動を、言葉遣いを、直したらどう?あ、敬語で話しているからといって失礼がないわけではないからね?」
後先考えない行動……。
ジュンとサンクがちらっと僕を見た。え?え?僕に何とかしろって?僕、いつのまにそんな課題解決能力があるってこと、露見してたのかなあ?えっへへ~
「あれって、なんだか、らいうちゃんのことを言ってるみたい……」
が~ん!そんな風に思われてたの!?しかもサンクに!?ジュンならまだしも!?
え……改めよう、いや、その前に弁解しなければ!
「後先考えない行動、してないとは言わない!言えないけれども!でもね!無能じゃないし、無用でもないからね!?」
思わず大きな声が出た。
「……っつ、このバカァ~」
僕はジュンに口をふさがれたが、時、すでに遅し。
やってしまった、やってしまった気がする!
金髪美少年は僕の方に顔を向けて、座っているやけに豪華な椅子から動かずに、
「あ。」
と驚いたような声を上げた。
金髪の、先ほどまでフューに向けて、いや、全国の後先考えずに行動する人に向けて辛辣な言葉を発した美少年が、僕のことを知っているような顔をしたので、僕はジュンに
「?らいう、知り合いだったのか?」
と聞かれた。はー……?見覚えは、ある。あるけど……僕、名前覚えてない人、知り合いとは呼ばないんだよね。なので、うーん、知らない人だ!
美少年がジュンの方を見、目をまた僕の方に向けて、そして、目をそらした。
「……初めて、見る顔…だね。」
金髪美少年がそういったので、ジュンは転びかけた。
「いや、知り合いじゃないのかよ!お前ら!紛らわしい雰囲気だしやがって!何かを匂わせるんじゃねえ!」
美少年は顔をしかめながら、その大声に淡々と答えた。
「このボクに対して随分な言い草じゃないか。この場でキミを切り捨てたってボクは構わないんだよ?」
そこで、美少年の言葉が止まった。美少年の椅子の後ろから、僕らの前にひょこりと現れた人がいたからだ。
え、え、いつの間に距離を詰めてきたの!?怖い!
「美しいっす……!」
えっ!?僕!?
美少年の横から赤髪の少年が出てきてそう言った。美少年ほどではないが、十分に、十二分にかっこいい。顔整いだと思う。
僕…僕のこと…!?
ふふん、とうとう世界は僕の価値に気づいたのかな!?
ドキドキと赤髪の少年を見ていると、少年はサンクに寄っていった。
……ああ。サンクのことか。ちっ。そーだろーなとは思ったけど。知ってたよー知ってたよ〜何万年も前から知ってたよ〜!僕もサンクは世界一、美しいと思う。世界のお墨付きあげちゃう。
そういえばこいつもなんか見覚えあるな。もうこいつはこいつ呼ばわりでいいよ。ふん!
けど思い出せない。
「えっ!?」
サンクは、一瞬で間を詰めてきた赤髪の少年にしどろもどろになっている。
サンクでも動揺することってあるんだな~……
「あなたは、きっと、運命っす。しょーせーの、運命の人っす!……結婚しよう?」
僕は思わず吹き出した。
「なに?」
「え?いや、だって、だって、結婚しよーって、結婚しよーって!?」
急すぎない!?僕が読んだことのある絵本でも、もう少し段階を踏むよ!舞踏会で踊ったり!毒りんごを食べたり!……あれ、毒りんごを食べるのは別に恋愛に必要な段階、階段じゃないんだっけ。
赤髪美少年は、その形のいい眉をゆがめた。
「むう。これは、しょーせーらの問題っすよ。」
「……ら?……私は、その申し出を受け取った覚えはないわ。ごめんね。あなたはちょっと……ない、わ。」
ものすごく申し訳無さそうに言葉を選んだせいで、逆に華麗すぎるほど棘があるよ、サンク。
ごめん赤髪の少年。流石にかわいそうだと思った。
少年は、衝撃を受けたような顔をした。そして、言った。
「そんなはっきり普通言うっすか!?」
サンクはそーいうとこあるよなー。分かりやすくて僕は好きだけどね。
「出会って数秒じゃ、どんな人かなんてわからないし。……それに、なによりも」
サンクは頬をすっと赤らめた。かわいい。
「私、好きな人いるから。」
おっとー!?少年に会心の一撃!
僕にも!!
ショックという感じじゃなくて、なんていうんだろう。
「あ、ありおーりゅ様あ…やばいっす…しょーせーありおーりゅ様以外の人にズッキュンしてしまいましたっすうう……」
僕もそうそれ!ずっきゅんびっくりだよ。
誰、一体誰が好きなのさサンク!僕?僕かな!?どうしよう僕だったら!
少年は、美少年の前で…アリオーリュ?の前でがっくりと膝をつき、その膝にすり寄った。そうすると、周りにいた、たぶん、ギルドの人たちが騒いだ。
「アリオール様!ワープゥを右腕から外すのでしたらぜひ私を!」
「そうよ!ワープゥよりもずっと役に立つわ!」
「いえいえぜひわたくしめを!」
「何言ってるのよあなた達!」
「いやおれだ!」
はあ、とアリオール、はため息をついた。
えっと、そう、鶴の一声ってやつだ。鶴の声を僕は聞いたことないけど、その……誰かが喋って、静まり返ることを、そう言うらしいと、ことわざ辞典か何かで読んだことが、ある。
彼は、ワープゥ、の腕を掴んで引っ張り上げた。アリオーリュ、ではなくアリオール、か。そういえばそうだった。
「キミがフラれるのはよくあることでしょ?」
「そうっすね……」
とワープゥは言い、アリオールに掴まれた腕を自分の方へ引き寄せて、アリオールと顔を近づけた。
「今まででしょーせーを受け入れてくれたのは、ありおーりゅ様だけ…っすもんね?」
さっきまでアリオールの足にしがみついてえんえん泣いていた顔はどこへやら、キスしそうなくらい近くワープゥはアリオールと顔を接近させ、小悪魔のような笑みを浮かべた。
僕らは……なんとも言えない顔でただ立ち尽くしていた。今のうちにどこかに逃げれるんじゃないかな。
「……ボクは別に、キミを受け入れたわけじゃないんだけど。」
少しばかり、怒気をはらんだ声だ。ドキッ、じゃなくて怒気だ。怒気怒気。
「それでも、しょーせーは仲間に入れてもらえたことがとっても…ぐわふっ」
ワープゥが直角におられて崩れ落ちた。アリオールがお腹に拳を叩き込んだらしい。
え、え、アリオール、座ってたよね!?どうやって座ってる状態から力を入れたの!?こわっ。
「行き過ぎた冗談は身を滅ぼすよ、ワープゥ。」
アリオールがワープゥをげしげしと蹴った。
「友達じゃないっすか~これくらい許してほしいっす。」
そうだよ〜許してあげなよ〜今日だいぶ踏んだり蹴ったり状態だよワープゥ、とやら。
「さてボクは、今、少しばかり、機嫌が悪い。」
ワープゥを無視するアリオール。口元は上品に笑ってるのに、目が笑ってない。暗い。そして、どっかで見たことがあるような…人を見下す顔だ。
僕が、苦手な。
「そしてここに、良い鬱憤のはけ口がある。そうは思わないかい?」
んんん~?ちょっと、雲行きが怪しくなってきたぞ~?さっきまでののふふふんふんとした雰囲気はどこへやらいづこへと。
「はあ?いや、あの、そういう、仲なんじゃないのか?」
どういう仲?
「うるさい黙れ勘違いされる様なことを言うな。……よし。彼女だけここに残して、フュー、お子様、無礼者はこの島から追放することにしようか。」
ちっともさてになっていないが、それよりも僕には気になる部分がある。
「えっ!?ちょっと待った!ジュンが無礼者なのは明確な事実かもしんないけど、僕がお子様っぽいのも分かるけども!でもでも、追放じゃなくて左遷がいい!」
「は?」
さっきのフューの気持ちがわかった気がした。追放は響き悪いわあ。
「いや、おい待て!お前俺の事そんな風に思ってたのかよ!?というか、納得できないところそこかよ!?お前お子様でいいのかよ!?」
「うん!だってお子様ランチ頼めるし、美少女ヒーローの映画館でペンライトだってもらえるもん!」
おとくだよ。
アリオールは何故か口をパクパクさせている。
「元気の良い返事をするな!」
僕はげんこつをくらった。ううーー。
僕らの抗議むなしく、フュー、僕、ジュンの三人はどこから持ってきたのやら、ホテルの駐車場に置いてあった気球に、わらわらと現れたアリオールギルドの人達?によって乗せられて、飛ばされた。
わーい気球はじめ…
や、違う違う!!
え、え、展開急すぎるよね!?
いやいやでも、これがこの世のスタンダードなのか……?
ならしょうがないのか……?
流石に大人数には敵わなかったなー。あーって連れてかれたよ?
「うわ~!」
「らいうちゃ~ん!みんな~!」
なんとか飛び降りようとするが、もう飛び降りると痛い高さになっていた。あう。
「サンク~!僕頑張ってサンクとまた話せるようにするね~!」
「スマホのチャット機能があるけどね~……って、もう聞こえないかしら……」
サンクが何かを言っていたようだけど、気球の炎の轟音も相まって、その声は僕の耳には届かなかった。
サンクは、ギルドの人たちに両腕をつかまれてずるずるとホテルの中に引きずられていった。可哀想なサンク。僕らも十分可哀想だけど……。
アリオールはサンクに夢中なワープゥを蹴ったり殴ったりしてる……嫉妬かな?
「この気球、海に落ちたりしないよね?」
「気球は、炎の温度で高度を調節します。海に落ちそうになったら、炎の温度を上げましょう……はあ」
今まで息を潜めていた、いや、息をしてなかったフューが、久しぶりに喋った。ため息まじりだけど。声に悲壮感が漂ってるけど。
「ため息ついたって仕方ないだろう。とりあえず、陸に降りて……はっ!?」
ジュンが頭をかかえた。
「どうしたの?」
「あの街で新機能、新スキル、新装備、とってねええ~!」
お耳がキーーーンとする。この声はサンクにも届いたかもしれない。
でもさあ。流石に僕でも分かる。
「今、そういう場合じゃないと思う。」
「今そういう場合では無いですね。」
僕とフューの華麗なダブル・ツッコミが入ったことは言うまでもない。
僕だってたまにはやるのだ。
ただ……
意外と気が合うねえとフューに言ったら嫌そうな顔をされた。ひどい。
アリオールが再登場しました。
赤髪の少年の名前が判明しました。
赤髪の少年の名前はワープゥと言います。
侮れないやつです。




