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持ち物って何ですか?


僕は目を覚ました。

暗い。

電球のスイッチ……僕が住んでいるのは、おんぼろアパートだから電球なのだ。何か(化物とか)、出そうなアパートだ。LEDの方が長期的に見ればお得だって聞いたことがあるからそうなのかなって僕は思うんだけど、電気関係はよく分からないので何も言わない。


とりあえずスイッチ……スイッチといえば……スキルスイッチ…?

……なんだっけ、それ……


んー、スマホの明かりで探せば良いかな?

僕はその時、不思議な感じがした。何かが、僕を見ているのだ。

何かいるって言ったのが、

ほんとになっちゃった!?

「たぬー……」

僕は怖くなってドアを探した。


ところが、壁は木の表面を触っているかのようにザラザラとしていて、いつものすべすべの壁じゃなかった。

なんだかいつもより目が悪くなった気もするし。うーん。


「あー、やっぱり、出られないんだよあのモンスターたん、略してモンスたん。」

「どうするリルちゃん、どうやって助ける〜?」

「えー、助けるの?メンドー。」

丸い感じのぴょんぴょんした声と、優しい温かい声がした。

ぴょんぴょんした声は、本当にめんどくさそうだ。

「え〜」

優しい温かい声は、何か不満を込めた声で、それに対して抗議した。


ぴょんぴょんした声は、慌てて言い繕った。

「面倒だって言っただけだよ?んー……とりあえず木、燃やす?」

だ……だめダメダメダメダメ!恨まれるよ!木に!

植物の恨みはすごいぞー。僕、アパートの前の雑草を抜いてたら蜂の巣見つけたことあるもん。怖かった。確かあのときは、そう、大家さんから借りてたテレビ壊した罰として、草むしりをさせられたんだった。


「ん〜。木がかわいそうじゃない〜?」

「ルイのヒールで癒せば良いじゃん?」

「それでも〜間に合うかどうか分かんないじゃん〜?……」

なんか使えるスキルないかなあとリル?の方が言ったような気がした。しばらく何も声は聞こえなかった。


しかし……モンスターがどこかに挟まってるんだな……。クマロスみたいな強いモンスターだけじゃなく、可愛いモンスターもいるのかなあ。もんすたんって言ってるくらいだから、可愛いに違いない。可愛いなら、僕も助けてあげたいけど。怖いのは嫌だなあ……。

ここがどこだか分からない上にそのモンスターちゃんの場所も不明。無理だろうなあ。


そうだ!何か使えるスキルがあるかもしれない!さっきの子たちも同じようなこと言ってたし。

……スキル?何を言っているのだ僕は。

……ああ、スキルか!

僕はスマホを探した。

ない。ポケットに入れたはずなのに……?

と、いうかポケットがない。

手の感触は、まるで近所で飼われている犬を撫でているみたいな感触。


「あっ!リルリル、ロープ持ってた!」

「お〜、それが使えそうだね〜」

ロープ持ってるってどんな偶然なんだろう。


ほらモンスたん!とリル?の方が言った。

と、同時に、僕は何か細いもので叩かれた。

「゛ぬっ!?」

痛くて思わず変な声が出た。

なんだろう……?


その細くて長いものはなんだかロープのような質感をしていた。

なんだかは分かんないけど……これ、たどっていけばあの明るいとこまで出られるかも!動かないし、蛇では、ない、と思う。

よし。

僕は細長いものにつかまって登っていった。


そして、突然眩しい光に包まれた!


「゛ぬっ!?」

「わっは!もんすたん出られたんだねー!おめでとー!」

「お腹空いてる〜?クッキー食べる〜?」

光に慣れてくると、二人の人影が見えた。

よく色が分からないけれど、なんだかどこかで見たことがあるような人だ。

そして僕を見下ろしてもんすたん、モンスターさんと言っている。

……。


…………。


……………………。


僕……イコールモンスター?

僕は慌てて手を見た。明らかに人の手ではないことは確かだ。

おお……?ぬいぐるみみたいな手だ……。つまり、僕はいつの間にかたぬきになっていた、と……。

「たぬううう!?」

「さっ、イベント達成だよね!リルリル報酬楽しみ!!」

「イベントって……いくらお金に困ってるからって〜、リルちゃん、そんなに欲を出さないの〜。」

いべんと?いべんとって……クリスマスの時期じゃないよなあ……今。


と、とりあえず元に戻りたい!元に!うーーーーっ……えい!


僕は青い空に向けて両手、正確には両前足を伸ばした。


ぽふんと気の抜けた音がして、僕の視界が高くなった。

「お、おーーー!戻れたーー!そっか、こうやって戻るんだ!こう、こうするんだね!?」

僕はもう一度にたぬきに変身した。

そしてもう一回人間になった。

「モンスターさんすごい〜!」

「もんすたん人間になった!?」

「いや……もともと僕は、人間で。たぶん。……それに!モンスターじゃなくてたぬき!」

リル?と、ルイ?は顔を見合わせた。

そして、森からたくさんの鳥が飛び立った。



僕は耳をふさぎつつ言った。

「そんなに驚くこと、なの?」

魔法みたいな力の"マジック"をみんな持っているんだよね?

「そっか〜!たぬきさんだったんだねえ〜」

「え?え?え!?たぬきって!?

なんでたぬきになるの!?なんで!?

と、いうかいうか!あれのどこがたぬきなの!?」

僕は肩をリル?に揺すられた。

「え、え、え、と、な、ん、でで、だ、ろー」

「リルちゃん!そんなにゆすったらたぬきさんの中身が出ちゃう〜」

僕は中身が出たたぬきを想像し、そこらへんの草むらに……。

「うええええ……」

「きゃ〜!?たぬきさん大丈夫〜!?」

モザイクかけなきゃ。モザイク。地獄絵図だよ。


「えっと。僕が、もらった。……授かった?だっけ?」

「スキル?ねえそれスキル?マジックではないよね!?かわいいモンスターちょっと羨ましいけど、無双できないよね!?」

むそー?

「ん、でね、そのマジックっていうのは、たぬきに変身、化けることができる能力、らしいんだよ。」

どやあ。

「え、たぬきじゃないよね?……どこに使うの?」

「リ、リルちゃん〜!」

うっ……リル?の言うとおり、である。たぬきかわいいけど。かわいいんだけど!戦闘力は低いというのを緑色のモンスターで知った僕である。たぬきだから。たぬきだよ。たぬきだからね。

「いいのいいの。僕も使い道わかんないし。よくわからないの。」

「そうなの〜?」

ルイ?が首をゆっくり傾げた。

しばらく僕と、リル?とルイ?の間に沈黙が続いた。


先ほど驚いて飛びだった鳥たちが戻ってきた。鳥かあ……空を飛んでみたいなあ〜。狸鳥。

「えっと、もんすたん……じゃなくて……うーん、たぬたぬ?飼い主はいないの?」

リル?が聞いてきた。飼い主かあ〜。お母さんは今海外だし。雲の上。飛行機の中。ジュース配ったりしてると思う。

お父さんにいたっては……どこで写真を取っているのやら。

「うーん。いない。」

「そっか。じゃー、一人でここまで来たの?」


一人で……ではないな。サンクと…あと、男の子。短気くん。名前は…えーっと…すっかり、少年という名前が僕の中で定着していたため、本名が思い出せなかった。


「名もなき少年と、サンクっていう美人と一緒にいたよ?」

「そして捨てられたんだね?かわいそうに。」

「リルちゃ〜〜ん!?」

ルイが再度、リルに咎める様な声を上げた。そうか僕は捨て狸か。たくましく生きていかなきゃなあ。

「ええっと。たぬたぬ。」

「ほい?」

「……やっぱり、その二人に会いたいよね?」

どうも、僕への話し掛け方が妙に動物向けなのがとっても気になるけど。そう言われると。


「いや、いいかな。」

「一秒考えた末の答えがそれ!?いいの!?嫌なの!?」

「リルちゃ〜ん〜」

リル?の声がわんわん頭の中で響く。ちょっと、少しばかり、おまつりさわぎ……かも。


「嫌ってわけじゃないんだけどねー。別にわざわざ会いに行くほど仲良くもないし。」

「案外たぬたぬ……たぬたぬクールだね!?」

リル?が叫び疲れて喉が疲れたとため息をついた。

「驚きがいっぱいだよ……。」

「リルちゃん。はい。お水。」

「うわーい!ありがとっ!さすがルイ!」


リル?はルイ?からペットボトルのようなものを受け取りゴクゴクと飲んだ。おお……。美味しそう。

僕も喉乾いたなあ……。お腹もすいてきた。


あ、れ?あの水どこから……?

そういえば、あの変な緑色のゴムトカゲを倒したお金って何処にあるんだろう?綺麗に三等分されて僕の取り分の中にも入っている……的なことは機械音声みたいなので、確認済みなのに……?さっきから動いてもチャリの一音も鳴らないよ?


「たぬきさん?なんで自分の服をゴソゴソしているの?」

「もしかしてスマホ落としたー?リルリルも良く無くしちゃうんだよねえー、でも大丈夫!直ぐにドリーマーカルスに行って」

「いやスマホはあるんだけどね。」

「あるんかーい!」

リル?は楽しそうに、ツッコミを入れた。

「お金がポケットに入ってない。」

僕はスカートのポケットを裏返して言った。


しかし、リル?もルイ?も反応は薄かった。

「へー。」

「ふーん。」

普通だよねえ?と二人に言われた。

……へ?

「え?みんな常に金欠なの!?」

「いや違う違う。今や時代はキャッシュレス決済だよ!」

リルがスマホをかっこ良く構えて言った。お〜!

「キャッシュレス決済!」

「そう!キャッシュレス決済!」

「いえーい!」

「うえーい!」

「フー!」「ハー!」

「いやっほい!」「ほほいのほい!」

「……」「……」

意味もなくテンションが上がった僕らは疲れてそこに座った。

疲れていないルイ?がスマホを持って僕の隣に来た。

「このアプリだよ〜」

それは、リュックのようなマークが描かれたアプリだった。

「これ?このリュックみたいな。」

「そう〜それ。そこに〜お金とか。獲得したドロップアイテムとか〜。買ったものとか、ご飯とか〜。上限があるのが〜ちょっと〜だけど〜。」

ルイがうーんって顔して言った。

「テクニックとかスキルとかでリュックはもっと詰めこめるようになるらしいけど。なんかケチくさいよね。最初からいっぱい持てた方がいいのに!」

「ええ〜っと。リルちゃんはこんなこと言ってるけれど、定期的にいらないものを売れば〜リュックはあまり、いっぱいにはならないから〜安心して。」

「ほへー。ありがとう」


さ、リュックを確認してみようっと。


「ドキドキ。わくわく。」

うわー。少なっ。ご飯とかっていったじゃん!入ってないよ?

ふえーん……お腹すいたよ〜……。うっうっうっ。

「ご飯とかって何処で手に入るの?」

「んー……ご飯屋さんではね〜、ドリーマーの冒険に、よりよい効果を発揮するもの、が食べられるよ〜。お腹を満たすだけなら、料理スキルと、材料剥ぎ取りテクニックを獲得して、自分で調理するのがいいと思う〜。あっ、でも、材料剥ぎ取りテクニックは料理スキルの特典だったかも?どうだったっけ〜?」

「リルリルわかんなーい。ルイがご飯作ってくれればリルリルはなーんもしなくてもいいもんね。」


つまりは……お腹すいた状態でそれを探さなきゃいけない、と……?

あっ!でもお金がある!お腹いっぱいになってから探せばいいじゃんね!

「じゃあじゃあ、悪いんだけど、ごはん屋さんが何処か教えてくれる!?」

「いいよ〜」

「もちのろんだよ!」


ああ〜……みんないい人ばかりだなあ〜良かった〜。人という字は、人と人が人人してなってるんだよ。


「どうせなら、街の近くまで一緒に行くよ!人助けポイントも貯まるし!あ、そういえば自己紹介してたっけ!?リルリルはリルだよん!」

「人助けポイント?」

「そうそう〜貯めると、おしゃれな服や、割引クーポンとかに引き換えられるの〜。私はルイ。よろしくね〜。」

それはいいものだ!


「ここで見れるんだよ〜」

また新しいアプリ。これで何個目ー?

「よくこんなに覚えてられるねえ?」

「そりゃあ……使ってれば慣れるよ。最初に言われたこと、難しくなかったから、だいたいぜんぶ覚えてるしヘルプだってあるもん。あ!本当に困ったらそこらへんの人に聞けば、人助けポイントがその人も貯まるし、ウィンウィンだよー!」

ウィーンウィンウィンウィンウィンウィン!

良い制度だね!人助けポイント!

でもどういう仕組みなのかなあ?きっと僕には理解できないくらい、複雑な仕組みなんだろうなあ……。


あれ?


今更だけど、スマホからどうやって三次元の……お水とか……ものを取り出したんだろう?


リルとルイはなかよし。こどものころから。

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