冥土の土産にメイドさん?
雨がやんだあとの、人気のないブティック街を、僕は一狸でとことこ歩いていた。
逃げ出せた。割とあっさり。なんでかは分かんないけど、僕をサンクたちからひき離した後、いきなり?ドリーマー達の僕への興味は薄れてしまったのだ……まるで操られてたみたいに。賞金首って、どこかに渡さなきゃいけないもんじゃないの?
でも……サンクたちのとこに戻ろうにも、ここがどこだか分かんない。
このままだと……一生迷子だ!
どうしようどうしよう……探しに来てくれ……るとは思うけど。
あ、でも、借金持ちの僕がいないから、泊まれる宿は増えるのか。
うーん。探してもらえないかも。
……もしかしたらもうパーティに戻してもらえないかも……いやいやそんなことは…だって僕とサンクの仲だし……ジュンは何かと言ってまあ、うん?うん。フューはサンク至上主義だからサンクがイエスといえばイエス、ノーといえばノーでしょう。
そういえば馬鹿にされた直後だったっけ……。
……まあ、なんとなる、でしょう!ちょっと寂しいだけだし!直ぐに、多分、どっかで、会えるよ!
と、その時何かが足りない声が聞こえた。
「マスターのご命令で参りました。ドリーマーズワールドスマホ内蔵型アンドロイド……通称DSIA、3470番です。今後、木隠 来羽 様の安全と健康を補償いたします。」
後ろをふっと振り向くと、メイド服の美少女がその白とも青とも赤とも緑とも紫とも黄色とも言えなくないまとめ髪を揺らしてそう言っていた。その顔には感情がなく、人形のようだった。
あの色……どっかで見たような。
「確か、えっと、前、ブルームのお祭りみたいな……そう、戦うイベントで会ったよね!」
「はい。そうデータベースに記載されております。」
で、えっと、なんだって?
「安全と、健康?僕の?」
マシュマロみたいなロボットが頭に浮かぶ。
「はい。マスターは、木隠 来羽 様の身をご心配されています。」
ますたー……そんな知り合い居たかな?マスタードは……美味しい。僕食べ物は好き嫌いしないタイプのたぬき。まあ、もやしが一番好きだけどねっ!もやしのマスタード和えが食べたい。
「つかぬことをお聞きするんだけども。」
僕は内に秘めた思いを隠したまま続けた。
「ますたーって、何?……あ、ええっと……誰?」
「ご主人様でございます。」
ああ、ご主人様だからマスター……。安直な名前だなあ。なんだっけ、こういう名前のことを…確か…前…ジュンが……ああ。僕今悲しきかな、迷子。
「わたくし達のマスターは、アリオール様でございます。」
……!?
マスターって名前の人じゃないの!?
というかアリオールなの!?
……そういえばそんなことを言っていたような気もしなくもない……あの時浮かれてたからなあ……あ、そういえば。さらにその前の時、ワープゥとかアリオールとかと一緒に会ってたかも。あーー。少しばかり、そのお……記憶力が、ない。
「マスターからの伝言をお伝えします。「そろそろ死ぬか逃げるかして落ち着いたかなと思って戻ってきてみたら、キミが行方不明だってワープゥのフィアンセに泣きつかれたよ。まったく、ボクを何だと思ってるの?ワープゥにまで頼まれたから、メイドを一体キミにつけることにしたよ。感謝してほしいね。まあ、キミが彼らと離れていたほうが何かと良いから、戻って来てはいけないよ。そのメイドはそのための監視役でもあるからね。」と、マスターはおっしゃっていました。」
「声真似うまいね~……」
「録音です。」
……へ~……。
僕、三十文字以上のいろいろな情報が入ってる文、頭に入ってこないんだよね……。
「要するに、どゆこと?」
「サンク様、ジュン様、フュー様の三人とは、もう関わるな、ということです。」
は~……ええええええええ!?
「え、いや、僕嫌だよ?なんでアリオールのいうことを聞かなくちゃいけないのかも分かんないし、それに、」
それに……馬鹿とか阿呆とか頭イッてるとかくるくるぱあだとか色々言われたけど、それでも一文無しの僕と一緒に旅をしてくれていた仲間だし……一緒に居たいし……。
でも、ジュンもフューも……もしかしたらサンクだって、本当は僕と一緒に居たくないのかもしれない……。そういえば騎士とかタテショクが欲しいって言ってたっけ……。
もしかしたら人間としての最低限の生活、が嫌になったのかも……。
いやそれ以前に……僕があんまりにも……たぬきだから……。
「くうぅぅぅん……」
僕はたぬきになってちっちゃくなった。
「小さくなっているお暇はございません。このあとも予定が詰まっております。」
メイドさんがそっと言った。
何か僕にさせる気なの?
「木隠 来羽 様には、お強くなってもらう必要があります。それが、わたくしたちをつくりたもうた神の意志です。」
メイドさんが、前髪をふわりと波立たせながら僕の前にひざまずいた。
額に、3470という番号が見えた。
「DSIA3470番、只今よりマスターをアリオール様から木隠 来羽 様に移行いたします。少々お待ちください。」
スマホ内蔵型アンドロイド……?
「完了致しました。なんなりとお申し付け下さい。」
僕はたぬき変身を解いた。
「えっと、そうすると、どうなるの?」
「質問の意図を理解できませんでした。再度お尋ね下さい。」
「メイドさんが、あー……神様に作られたなら……天使?てんしちゃんがスマホ?内蔵型アンドロイドって言うから……えっとその、ええっと……」
メイドさんは顔色一つ変えずに言い放った。
「マスターがスキルの名を叫べばスマホの操作無しに、スキルの発動が可能になります。また、その呼び方はお止めください。」
それって……!たぬき状態の時でも…!たぬき語でも……!思いが届けば……!!
「たぬき中でもいける!?」
「はい。可能です。」
「やったああ!」
やっとちっちゃなたぬきの時もスキルが使えるんだ!えへへへえへへ。
「しかしながら、一つ問題があります。」
ん〜?
「試しに、スキル[無鉄砲]をそちらの木に撃ち込んでみてください。」
「スキルスイッチ[無鉄砲]!」
《スキル発動不可能ですスキル発動不可能ですスキル発動不可能ですスキル発動不可能です》
うーん。人間の時にスキルを使うのはやっぱ無理かあ……。無理なのかあ……。
しかーし!これからはたぬきの時代である!
これからはSP切れでぶっ倒れる必要なくして、スキルが撃てるんだ……!
「マジックオープン[たぬき変身]!たぬーー!」
スキルスイッチ……!
「たぬきたぬっち…!」
無鉄砲!
「たぬったぬー!」
前に突き出した前足の人差し指?いや狸指し指が淡く光った。
くるぞおおお!
いっけええええええ!
そっから僕は、後ろに吹っ飛ばされた。
あ、れ?
「このように、マスターがマジックを使用されたあとですと、反動がきつく、攻撃スキルはほぼ撃てないかと思われます。」
ええええええ……先に言ってよ〜……言われてもやってみるけどお〜……。
僕は少しばかり壊しちゃった壁から目をそらした。これが人間の状態だったら……借金が増えていたのは間違いない。
「マスターは、この世界で生きていくには弱すぎます。」
うう。
「そこで、お金を稼ぎ、自身の強化、ギルド建設、人材募集を行います。」
「でも僕、一文無しで…というかマイナスで……。」
でもでも、自身の強化をっていう部分は気になる……!
お金があったあの頃に買ったこのグローブ。
割と擦り切れていて、今にも壊れそうだ。
でも買い換えるお金も無い。
服は……変えようがないんだろうなあ〜随分前に違う服を着ようとして弾かれて、床に打ち付けた肘が傷んだ気がした。……今のままの服で我慢だ。
「お金があれば人間はすぐに寄ってくると推察されます。そのお金で雇った人間の強弱は不明ですが。」
不明なのかー。
「計画の立案のために、マスターの強さを測定する必要があります。丁度良いモンスターを探しに行きましょう。」
そう言うと、てんしち…メイドさんは、目を閉じた。
何してるのかなあ……?
僕がじっと顔を見ていると、突然メイドさんが目を開いた。
まつげは長く、目はきれいな青色だ。何か、どこか、懐かしい。
ああ、そうか、アリオールと同じ色だ……。
やなこと思い出しちゃったな。でもあの赤い方の目よりはマシなんだよな、青い方の目は。
「どうされましたか?」
「いや、何でもないよ!本当何でもないっ!」
きゅうっと全身の血液が心臓に集まるような感覚を得た。じいっと見ないで!変なたぬきだと思うだろうけど見ないで!
心臓の鼓動がちょっと速い。
「マスター。どうかされましたか?」
「本当に何でもないんだ。それで、えっと、丁度いいモンスター、は見つかったの?」
「はい。東方10キロメートル先、高所309メートルです。」
僕らは東へ歩き出した。
アリオールは一体どうして僕とサンクたちを会わせたくないんだろう?僕が駄目狸だからかだろうか?
それとも何か別の目的があるのだろうか。
ともかく、僕は一歩を踏み出さなければならない、みたいだ。
まずは、そこらへんのモンスターを一人で狩れるようにしないとね!
見直した!って言われる日が楽しみだ!
マスターがらいうに移行すると同時に、パーティメンバーがらいうとメイドさんのみになりました。
追記!:ごめんなさい!訂正入れました!雨が降りっぱなしになってました!!!あの雨の間はメイドさんでもスキル使えないです……。




