乗り物酔い?
「ここまで、来れば、大丈夫、でしょう……うえ。」
「降ろして……」
「お前ら乗り物酔いに弱すぎねえか?電車や飛行機、船よりはマシだと思うけどな。」
本当だよまったくもうっ!
僕の乗り心地そんなに悪くないと思うんですけど!ぷう。
「そうは思えませんが……生い立ちの違いじゃないですか……?」
「まあ確かに俺の昔の移動手段は馬、」
あー。馬か〜。いいよね、馬。結構早いんでしょー? 僕の方が早いけどね!
「牛、」
……ん?あんまり聞かないけど、まあ牛車とか、あるし?
「やぎ、ひつじ、さる、狼、熊……」
KUMA!?
え、熊って、あの熊?
「ね、サンク聞いて!ジュンが熊に乗ったことがあるって」
「今……気持ち悪くて……それどころじゃ……うっ……」
サンクはまた草むらに潜っていった。
「とりあえず手近な乗れそうな動物に乗って移動してたからな……流石に巨大たぬきはいなかったが。ああ、らいうよりも乗り心地が悪かったのは虎だな。まず目的地に行ってくれねえし。」
はーん。
「つまり僕はオンリーワンでナンバーワンってことだね?イヌ科だけにね?」
「もっと、普通の乗り物には乗らないのですか……自転車とか自動車とか電車とか船とか……おえっ…そんなものに乗れるわけが……うえっ。……中二病ムーブは今は抑えてください……。」
つまり熊は手懐けた事があるんだ、ジュンは。意外とすごいやつだったかもしれない。
結局フューとサンクの吐き気が止まるまでに小一時間ほど必要とした。
……僕の乗り心地ってそんなに悪い?もう少しばかり、改善しようかなあ……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「どうして止めたのよ!なんで逃げたの!あのまま続けていれば勝てた……かも…しれなくないけど……」
「サンク~やられたら借金地獄だよ?借金つらいよ?」
経験者は語るよ。うう。
「それでも、もう少しで、もう少しで何かが……」
「サンクさん。そもそもこの勝負は、婚約破棄をめぐる勝負でしょう?負けるリスクがあるなら逃げるべきです。」
それに、とフューは付け足した。言っていいことなのか、少しばかり迷っている風に。
「……貴方の願いは本当に、彼を殺すことなのですか。」
「そ、れは……」
目を泳がせるサンクに、フューが続ける。
「貴方が、人を殺して幸せになれるようなタイプだと、自分には、思えませんが。」
ううーん、確かに……?
サンクはどんな時に幸せそうだったっけ?
可愛いものを見たとき、大活躍だったとき、美味しいものを食べたとき、あ、あと、占い屋さんに行ったとき……
「……わたしのわがまま聞いてくれるんじゃなかったの!?」
サンクが牽制するように、フューをキッと睨む。その顔は、必死で、取り憑かれてるみたいで、少しばかり、だけ、怖かった。
けど、サンクも、そうなのかもしれない。
どこか怯えている、みたいな顔にも見える。
サンクは僕は睨まなかったけど、でも、その言葉は、表情は、さっき1回否定した僕すら貫いた。
……サンクを連れて、戻るべきかな……?
「……たとえ嫌われてでも止めますよ。貴方の命を無駄にするような選択なんて。貴方、刺し違えてでも彼を殺そうとしていたでしょう。」
僕は何も言えなかったけど、フューは言った。
「そん、なの……」
サンクは気まずそうに言葉を失って、勢いも失って、ふらっと、その場に崩れ落ちた。あああああ。えーっと、えーっと。なにかなにか……あ!
「そうだドラゴン!ドラゴン倒しに行こう!倒して、強いやつ手に入れて、それで、あれだよ!あれ!」
「リベンジ?」
サンクが少しばかり顔を上げた。そうそれだよ!
「そう、そうよ、ね。まだ勝負はついてない、ドラゴンで装備の強化も見込める、何にも諦めることなんてないじゃない!」
「そうだよその意気だよサンク!」
サンクがいつもの調子に戻った!
フューが後ろで少しばかりほっとしたような、寂しそうな?顔をしたのが見えた。でもすぐに何かを考えはじめてしまった。
僕とサンクが手を取り合って踊っていると、その肩をジュンにたたかれた。
「おい。」
「何?」
ジュンはああっとため息をついた。
「まだ神殿壊れたままなんだぞ?どうやってジャックの目を潜り抜けてフラウを倒すんだ?神殿が壊れているということは、どこにドラゴンがいるか分からないってことだぞ?」
「すっごい都合よく ここに現れたりするかもじゃん?ブルームみたいにさー?」
何やら考え込んでいたフューがえっと言いながら振り返った。
「ブルームが街中に出たのですか?」
「ううん。開けた森の奥のとこで。」
「ああ、らいうさん勘違いされていますね。草木竜ブルームは森が神殿なのですよ。」
そうなんだあ、え。
えええええ!?ここまでで、なんか、半年近く?経ってからの新事実!
「まじか……知らなかったのか……。まあ、そういうわけで、ドラゴンを神殿以外で見つけるのは難しいってことだな。」
ううううう。
ミファスムも、きっと、神殿は山でーす(笑)とか言われちゃうんだろうなあ。
あっ!そうだ!
「神殿が壊れたなら神殿を直せばいいんじゃないっ?」
ドヤ顔っ。手の甲を頬の隣にやって超見下し顔!
「なんだよその顔……。というか直すって…そういうのはそういうのが得意なやつがやるものだろう?」
ふふふ。なら僕は得意だよ?昔作ったような気がする虎のオブジェは、くりーちゃーと言われたもん。きっとクールの仲間だよ!
「議論するより行動するのはナイスの如し!早速行ってみよ〜!マジックオープン[たぬき変身]!」
僕はたぬきに変身して走り出した!行け行けたぬき〜!!
「ら、らいうちゃーん!?待ってーー!」
「ナイスの如しって意味崩壊してませんか?ジュンさん。」
「は!?いや、あいつの台詞が崩壊してるのは日常茶飯事だろ!そんなこといいから追いかけるぞ!あいつ、何かをさらに壊しかねん!」
失礼なこと言われた気がする……けどまあいいんだ!
たぬたぬたぬー!
フラウがミファスムの山に出た事を、らいうはすっかり忘れています。
サンクは通常の時なら思い出せたかもしれませんが、今は心がざわざわしてるので無理です。
フューは、なんでスライス・ジャックが倒れたまま追ってこないのかについて考えていました。
スライスはマジックの反動でダウン中です。




