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ワープゥってそれなりに強かったんだね?


 「てえええぬううううてええぬううぬ〜うぬぬぬぬぬ」



 「うわあ。こんなふうになるんだ……もう二度と人と一緒に使わない事にしよう。」


 気持ち悪いいいいいいい!他人事だと思ってええええ!ひどいー僕の扱いひどいー!


 僕とアリオールが到着したところは、どこかの玄関ホールだった。あちこちに白い像が置いてあったみたいだけど、見事に壊れている。うわー……ひとつ何千万円するんだろう……?


 アリオールの無駄なキラキラオーラにいち早く気づいたらしいワープゥが、子犬のような顔で振り返った。隣でアリオールがちっと舌打ちした。こわっ!友達でしょー!?


 「あっ!ありおりゅ様あ〜〜!」

 「ワープゥ、よそ見しないで!」


 べしっとワープゥが叩かれた。ワープゥは一番前で攻撃を受けているようだ。大きな盾を持っている。似合わない。うーん……あ、あの縦に半分に割れてる、鎧のオブジェが持ってた盾かな……色が一緒だし。

 ワープゥを叩いたサンクは、ワープゥの後ろでなんか大きな魔法陣を書いていた。絨毯なのになんでそんなにくっきり模様が……あ、[ファイア]で焼いてるのか。


 「うう…マイフィアンセ厳しいっす……」

 「うっさいこの蠅(ハエ)。[ヒール]してあげましょうか?」


 フューが悪い顔でワープゥに大きな杖を突きつけている。え、そのセリフは悪い顔で言い放つものなの!?いやまあ、ハエは暴言だと思うけども。

 フューはサンクの隣で、絨毯から生え出てくるなんかちっちゃな人、みたいなのを自分の身長より大きな杖を振り回して粉砕していた。フュー……戦えたの……?



 「ひう……フューは相変わらず容赦ないっすね……しょーせー真面目にやってるっすよ?」


 「スキルスイッチ[レーザーショット]」

(スキル[レーザーショット]

効果…赤いポインターを発生させ、その斜線上から弾が絶対に外れず当たる。

SP…15

取得条件…銃の武器でスキル無しで敵を撃つ。)


 冷たい男の人の声がした。スライス・ジャックだ。


 サンクの左胸に赤くて丸くて光るやつが発生した。あれじゃん命を狙われてるやつじゃん!サ、サンクううう!

 僕が駆け出そうとするとアリオールに尻尾を掴まれた。あー!痛いーー!


 「べっふ!」


 ワープゥが斜線上に躍り出したようで、ワープゥが攻撃を受けた。わーぷぅー死んじゃだめー!気持ち悪くて大変態だけど割と良い奴……だったかもしれない!あんま話してないから分かんないけど!でもとりあえず助けなきゃ!


 あっ!そうだアリオールが居るじゃん!アリオールならなんとかする気がする!


 僕はたぬき変身をといた。尻尾が退化したことで僕はアリオールから解放され、地面に顔面を打ち付けた。痛い!でもそう言ってる場合じゃない!


 「アリオール!ワープゥが!」

 「どうしたの?そんなに焦って。ボクらは三時のティータイムでも楽しんでいればいいじゃないか。」


 ええええええええ!?


 「と、いうか過分な戦力だよね。あんなおぼっちゃまならワープゥ一人でオーバーキルなのに。」


 おぼっちゃま…‥と呼ばれたジャックは……スライスは……うん。確かにおぼっちゃまと言われればおぼっちゃまっぽいな。


 でも、こんなにもにこにこと涼し気な笑顔、……爽やかな笑顔で殺しに来るおぼっちゃまがいるだろうか?


 世の中ってこっえっ!


 ……いやいやいやいや、そうじゃなくて、その期待のワープゥが撃たれてるんですけど!ねえ!


 「ん〜っ痛いっすぅ〜」


 全然痛くなさそうな声がした。


 「ワープゥお前大丈夫なのかよ!?」


 ワープゥが起き上がるまで[アイスシールド]で攻撃を防いでいたジュンがは!?って言いながら振り返った。そっか……僕は分かったぞ……!


 「ワープゥはゾンビだったのか!」

 「違うよ。多分本気でボクが頭をふっ飛ばせば殺せる……と思う。……殺せるといいな。」

 「ありおりゅ様あ〜そういうちょっとぞくってする所も大好きっすよ〜!」


 ワープゥがアリオールに投げキッスをした。

 アリオールが青い顔をしてスマホをいじり、毛布を取り出してくるまった。


 「なんでっすか〜〜!友達同士のちょっとした交流じゃないっすかー!」

 「そんな交流は要らない。交流自体したくない。」


 アリオールはさらにワープゥの目線から姿を隠した。あれ……? いや、でも、ほらやっぱりワープゥはアリオールの友達じゃーん。大事にしなよ、たぶんただ一人の友達なんだろうし!……たぶん他には絶対いないよね?


 「ワープゥ、大丈夫なの!?大丈夫なら手伝って!」


 サンクが必死な顔をして叫んだ。うーん。アリオールによればそんなにあのおぼっちゃま、えーっと、スライス、強くないみたいだけど。やっぱあれかな。精神的なストレス?からくる不安感かな?


 「はいっす〜!マーイフィアンセエエ〜!」


 ワープゥがピョーンっと飛んで行った。

 そういや、スライスはずっとなんにも喋ってないな?スキルスイッチ、以外。


 なんか恨みつらみ心の奥の本当の気持ちくらいは吐きそうなものだけど。


 「魔法陣できたわ!詠唱に入るからもう少し耐えて!」


 サンクはそう言って魔法陣の真ん中に立った。魔法陣は、なんか何語かよく分からない言葉が並んでいる。


 「アリオール、ね、あれ何語?」

 「フランス語。ただあのスキルは、別に何語でも良いから呪文を間違えずに魔法陣を書いて、スキル名を口で言えれば発動できる。だから、そんなにカッコつけなくて良いと思うけどね。」


 すごいつまんなそうな顔をして言われた。まだ毛布に包まっている。


 「いっそのことギリシャ語でも書いて間違えればいいのに。」

 「サンクに少しばかり辛辣じゃない?」


 すごく悪の組織みたいな顔をしているアリオールに僕は不満が溜まって言った。

 サンクいい人だよー?フランス語だって、たぶんサンクの母国語?だからだろうし。


 「何もかもを持っている人間なんて滅びれば良い。」


 ……それはアリオール自身のことなのでは……。まあいいや。なんかアリオールも辛い過去とかこんぷれっくすとかあるんだろう。


 黒い顔をするアリオールは放っておいて、僕は壊れた石像の影からサンクを見た。


 サンクの紫色の髪は光を帯びており、魔法陣もまた同じようにサンクの髪と同じ色を帯びて光っている。

 魔法陣の何語か……えーっと、フランス語だっけ?の部分はくるくる回っている。ゆっくりと。えーっと、回転寿司くらいのスピード……が汽車くらいになって……新幹線……リニア……!


 サンクはその真ん中で、自分の上半身くらいしかないミファスムロッドをしっかりと手に握り、ぶつぶつ言っている。


「……スキルスイッチ![ルクソリア・トレイター]!」

(スキル[ルクソリア・トレイター]

効果…魔に惑わされぬ誓いを立てた後、スキル[ルクソリア]を持っている相手に対して大ダメージを与える。

SP…99

取得条件…スキル[ルクソリア]を持った相手に復讐心を抱く。)



 フューが、スライスに肉薄していたワープゥを引っ張るのと同時に、紫色の光線がスライスの周りにあった上、右上、左上、後ろ上、前上の魔法陣から飛び出した。


 何の音もなしにスライスが消失した。


 「おっ……勝った?勝った?」

 「らいう!またお前は余計なことを…そのセリフはフラグが立つセリフだろうが!」


 ジュンがわざわざこっちまで来て僕を剣(鞘入り)で殴った。お、やっとアリオール以外で僕が見えている人が現れた!しょうがないけど無視されまくってたしなー。


 「……ってアリオール!?なんでお前がここにいるんだよ!?」

 「気づいてなかったの?相変わらず鈍いね、イナカモノは。」

 「ナマケモノのノリで言うなあああっ!」


 アリオールはなんていう名前なのか分からないけど美味しそうなお菓子を頬張りつつ言った。はちみつがかかってて……ふわふわしてて……表面はでもカリカリしてて……軽くて……甘い……美味し、これ。


 「それで?もう良いの?諦めるの?ボクも暇じゃないんだけど。帰って良いよね。」

 「俺じゃなくて呼びつけたフューに聞けよ……」

 「まだよ!分身体が出なくなるまで倒し続けるわ!だから……ワープゥの力が必要なの!」


 分身、体?

 フューにヒールをかけられながらサンクが言った。


 「分身体って何ー?」

 「おぼっちゃまのマジックだよ。そうだね、例えば……絨毯、大理石、ガラス、木、土……素材を人形にして自分の分身を作るんだ。弱点だってあるけど……ボクにそこまでキミ達に教えてあげる義理はないかな。」


 アリオールはつまんなそうにあくびした。

んー。なんでそこまで知ってるんだろ?あ、あれかな。倒したことがある的なあれかな。


 「アリオールは倒せるの?スライス・ジャックを。」

 「当たり前じゃん。ボクが倒せないドリーマーなんていないよ。」


 うっわすごい自信。

 サラリと九九全部言えるよ的なノリで言われたけど。すっごい自信。


 フューが小ちゃいのを倒している間に、サンクとワープゥが僕らの近くにやってきた。大きいのはさっきので一旦終わったようだ。


 「ありおりゅ様あ……しょーせー頑張ってるっすよ〜?」

 「そうなんだ。」


 アリオール冷たっ!ワープゥがスリスリしてきたのをふっ飛ばしたよ!?


 「……そ、そう、っすよ……。だから、ご褒美の一つや二つ…ふぎゃっ!」


 倒壊してる石像の欠片を壁に埋まってるワープゥに対して投げた!えええええ!

 ワープゥ、壁が崩壊して瓦礫の下敷きになってますけど!いいのアリオール!?ありなのアリオール!?と言うかよく持ち上げられたなアリオール!


 「ちょ、ええええ!?あれじゃん?フュー、[ヒール]しないと[ヒール]!」

 「いや[ヒール]したら死にますって。ワープゥさん。」


 え、そなの?


 「今ワープゥは特殊状態中なんだそうよ。なんでも、受けた効果が全部あべこべになるとかなんとか……?」


 サンクがうーんっと小首をかしげた。


 「あべこべ、というより……天邪鬼(あまのじゃく)ってとこっすかね……物理攻撃を受けたらより防御が高くなるんすよ……」


 ワープゥが瓦礫の中から這いだしてきながら言った。擦り傷があちこちについていて痛々しい。


 「はい、ワープゥ。」


 アリオールが鞄から何か取り出して渡した。


 「あ、ありおりゅ様あ〜やっぱ大好きっす〜!」

 「もう一度宇宙に打ち上げてあげようか。」


 打ち上げたことがあるのかー。


 ワープゥは貰ったそれを一気に飲み干した。すると、みるみる擦り傷とかが治っていく。


 あ、ポーションは大丈夫なのかな。なんだ、少しばかり、ワープゥ気持ち悪って思ったけど、ワープゥだって僕と同じなんだね!おんなじ、にんげ……いや僕はたぬきだった。


 「ワープゥ、ポーションはいけるんだね。」

 「え、無理っすよ?」


 えっ。いやいや、だってそれ……。

 え、え、え、え、え、え?

 アリオールから渡されて飲んで、ぷはあってして、グッドって、え?


 「らいうさん。そのなんとも言えないジェスチャーはもういいですから。ワープゥさんが飲んだのは毒ですよ。」


 ど、く!?


 「そう、タマフォーの白身の生。テクニック[毒無効]でも持ってなきゃ楽しめないけど、赤ワインとよく合うよ。ピリッとした感じがね。持ってない人が食べると10分で死に至るけど。」


 そうなんですか。なんでそんなものを持ち歩いてるんですか。赤ワイン……アリオールは僕より年上だったのかー。


 もう……意味分かんない……アリオールから離れて帰りたい…家ないけど……。


 家、欲しいな。一階がお店なの。名前は……たぬバー。たぬきだらけなの。疲れた現代社会人の心を愛くるしいたぬきで癒やします。インスタ映えも狙える。ドリーマーの憩いの場にするの。お金が無くても最低限のサービスを。終電逃したら始発までどうぞごゆっくり。

 二階は自宅。毎日もやし入りのお味噌汁を飲むんだ。

 三階は全部ガラス張りなんだ。星が見えるんだ。


 「らいうさーん。帰ってきてくださーい。」

 「だめだ意識が完全にどっか行ってる。」

 「自分の理解できないことに次々に直面して現実逃避をしているのね……分かるわ……。」


 フュー、ジュン、サンクが口々に何か言っている。


 「でも、私は現実逃避している場合じゃないのよね……そろそろクールタイムが終わるわよ……!」


 クールタイム?

 涼しい時間?


 「あ、目に光が戻ってきたな。」

 「クールタイムって、何?」


 ジュンがちょうど近くにいたので、ジュンに聞いてみた。


 「にゃ?うにゃ……クールタイムっていうのはな、技と技を打つ間の時間のことだな。」


 へー。

 その時、突然、屋敷が大きく揺れた。


 「きゃっ何!?」

 「……スキルスイッチ」

 「ありおりゅ様あ〜〜!おいて行かないでほしいっすうーー!」

 「[テレポート]。」


 アリオールと、アリオールにしがみついたワープゥが消えた。


 ……逃げた?


 むむむ……。

 確かにアリオールから離れたいとは言った。言ったけど、居なかったら居ないでまあまあ不安。


 あのアリオールが逃(・)げ(・)る(・)ものだよ?

 やばいんじゃないの?


 「逃げなきゃ!」

 「そうね!逃げ…‥らいうちゃん!出口、どこ!?」


 それはもちろん玄関扉……ふぇっ!?


 大きな、高そうな、ドアが、なんか、日向においてあったプラスチックみたいにぐにゃりと動いて、くっついて、出口、塞がったんですけど……!

 家の形も変わってきてるし!


 

……あらかた家の変形(へんけい)が終わったみたい。


 「やっと終わったわね……あら?ワープゥ、逃げたのね……まあいいけど。」


 サンクが全然よくない表情で笑いながら言った。うん。まあ、うん。ほら、ね。分かっていたことだったような気もするよ?


 ……本当はアリオール大して強くなかったりして……。


 と、考えていると、突然壁から液体がしみだしてきた。


 !?


 だんだん床にたまっていくんだけど、今、靴が、じゅわって言わなかった?


 「らいう。事態は一刻を争う。この際、多少家が壊れるのは仕方がないと思わないか?」

 「どうゆうこと!?」

 「逃げるぞ!たぬき変身で巨大化して突き破れ!」

 「何を!?」

 「壁をだよ!分かれ馬鹿!」


 うーん。いろいろと納得いかないけど……でも、さっきから靴がしゅーしゅーいってるし、逃げたほうがよさそうではある。


 「スキルスイッチ[巨大化]!マジックオープン[たぬき変身]!」

 「うわっ!スキルスイッチ[アイスシールド]!」


 ざっぱーん!


 「俺の[アイスシールド]が一瞬で溶けたぞ……この液体、相当やばいんじゃねえか……?」


 「ジュンさん早くらいうさんに乗ってください!らいうさんがもうおいていこうかなって呟いてます!」


 だって足痛いんだもの。

 大きくなってるせいか、感覚が鈍ーくなってるんだけど、なんかじんわりと痛いんだよねー。


 こういうのってさ、絶対に、見ちゃうとすごい痛くなってパニックになると思うんだよ。

 でも見たいのが人間心理、いや、たぬき心理なのだよねー。でもでも、見ない。絶対に見ないぞ……!


 「全員乗ったぞらいう!頼む!」

 「たぬううううううううううううううううううううううううう!」



 突き破れーー!


 「いっちゃええええ!らいうちゃーーん!」



 とりゃああああああ!



アリオールは気分を害したので帰りました。


●スライス・ジャックのマジック

[純白の礼拝堂]

自らのコピーを作り出すことができる。布、石、ガラス、金属、木材、土、水、炎など、視認できるものからならば何でも作ることができる。また、素材があれば大きな分身を作ることも可能。

クールタイムが存在し、一度人間サイズ以上のものを作ると、そこから10分間は作ることができない。

また、6体以上作ってしまうと正気を失い、純白の礼拝堂にずっと自分が囚われているという幻覚を見る。

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