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任務遂行?


 端的に言えば、パーティでは僕らは手も足も出なかった。


 だから、真正面から突っ切ることにした。ちなみにこっちは僕の案(アイデア)である!


 僕はすごく高い門をガシャガシャとゆらした。高い門……背丈的にも、値段的にも?

 足が疲れたから早く入れてほしいなー。茂みからここまで全力ダッシュしてきたのだ。ひーん、もっと体力温存しときゃあ良かったあ〜。


 「どちら様ですか?ジャック様は多忙です。それ相応の理由が無いとジャック様にお会いすることはできません。」


 やっと、屋敷の中にいる警備員?みたいな?騎士っぽいコスプレ?をした人が答えてくれた。僕なー影薄いからなー。それでも、門を揺らさ無いと気づいてくれないとは。

うーん、せっつない!


 コスプレ、だよね?コスチューム・プレイだよね?まさか中世でもあるまいしそんな恰好……いや、いいんだよ?いいんだけど。個人の自由だから。


 「昨日パーティ会場を荒らしたたぬきなんデスケドモ。実は、世界中を回って大道芸をやってマシテ。ちまたでは、ちょっとした有名人なんデスヨ。ぜひ、スライス・ジャック様にも見てもらおうと、オモイマシテ。」


 僕は、フューに何回も練習させられたセリフをかまずに言い切った。昨日……結局、パーティ会場は殆ど荒らせなかった、けど、まあいいでしょうって言ってたし。さあ!こっからは覚えてないからな~!よーし!あどりぶあどりぶ。あばらかたぶらー。かたはらいたいわー。


 「ほほう。それは、指名手配書が出回っている、このたぬきのことかな?」


 警備の人は、急にすごく見下した様な顔をして言った。

 指名手配書だ!はじめてみた!だ……だぶりゅう……WANTEDって書いてある!これで僕も一躍有名に!


 「そうでーす!そのたぬきでーす!」


 ……僕と警備の人との間に沈黙が流れた。


 「その、たぬきですよ?」

 「マジックオープン。[ホールド・アップ]」


 たっぬ!?

 僕は手を上に強制的に上げる形になった。


 「悪いな。指名手配犯は管理組合に渡さなきゃいけないんでな。」


 あー。口も動かないな?うーん。金縛り……。あ、足は動く。良かった。管理組合……かんり!?僕管理されちゃうの!?うそん。一文字変えればうどん。


 僕は槍を突き付けられた。ぬえー!すごく攻撃的だよう!


 「さあ、その馬車に乗るんだ。」


 ぬえええー!

 僕は屋敷の庭に停めてある馬車に押し込まれた。うーん高そう。と、いうか、指名手配犯を屋敷の敷地内に入れていいのかな?


 まあ、徒歩よりはいいかあ。


 ……どうしようかなあ。ジャック・サマーに直接会って談笑大作戦は早くも壊滅しそうだぞ?


 僕が考えた大作戦はこうだ。いいよね!作戦って響き!計画、でも良かったんだけど、考え、よりはなになに大作戦の方が……まあいいや。えーっと。


 えっと、考えた作戦……大作戦って言うのは、ジャック・サマーに直接会って、僕のトークでいい感じに打ち解けて、そのままサンクとの婚約を解消してもらうっていうことなのだよ!僕は一体誰に話してるのかしららしら。


 以外にも、すぐに同意してくれたのはフューだった。


 ふふふ…まあ期待を裏切ったけどな!裏切っちゃったけどな!応えたかったよう!


 「スキルスイッチ![ファイアボール]!」


 あっ!サンク!

 その時、開いている門をくぐってサンク、ジュン、フューがやってきた。ジュンは必死にサンクを止めようとしているんだけど、怒りの波動すら見えるほどサンクが怒っているために、氷が溶けていた。ホントに怒ってるときって熱が出るんだ。あ、ジュン、止めるために足元を凍らすのはなんか、感性が古いと思う。


 「うわあっ……!ってお嬢様!?」


 警備の人がサンクのスキルを避けてよろけたと同時に、僕の金縛りが解けた。やった!自由だ!お嬢様?


 「らいうちゃんを離しなさい!」


 サンクう……落ち着いて?大丈夫だよー僕。ほら、馬車の周りの草にファイアボールが当たって燃え移っててさあ?僕、馬車から出られないんだけどさあ?


 ジャック・サマーと僕が仲良くなった所で、流れるようにジャック・サマーとサンクの婚約を解消するよう説得して、で、そこで僕を見送るために出てきたジャック・サマーとサンクが直接会って、きちんと婚約を解消するっていう僕の大作戦のため、サンク達は屋敷の外、すぐ近くで待機していたわけだけど。


 そんなに僕が心配だからってあらゆるところに火を放たなくても……あちち。


 「スキルスイッチ[ウォーターボール]」

(スキル[ウォーターボール]

効果…空中に水の玉を発生させ、敵にぶつける。

SP…20

取得条件…ウォーターオペレイトで敵を十体倒す。)



 見知らぬ声がして、僕が乗っている馬車の周りの炎が鎮火された。サンクかな?いや、サンクの声だったらわかるし……男の人の声だったし。あれ?ジュンは氷しか使えないし、フューは戦闘系のスキルは使えなさそうな顔してるのに……。


 警備の人達は……遠いな。

 すぐそばで聞こえたにしては、どうにも警備の人たちは僕から遠すぎる。


 サンクたちは、四方八方からやってくる警備の人たちへの対応に追われて、今起こったことに気づいていないみたいだ。

 ……これ、やばいんじゃないの?あれでしょ、なんか強敵が出るパターンなんじゃないの?これ。



 ……。

 ここは、僕が一肌脱ぎますか!


 僕は、声が聞こえた方とは反対側からそっと降りた。いやあ、さすがに馬車の中で暴れたりしませんよ。高そうだし。これ、壊したら多分一生かかっても払えない借金を背負ったたぬきになってしまう。重荷せおったぬき。反対側なら、ちょうど炎も消えてるしね!


 馬車から十分離れまして……とりゃあああ!


 「スキルスイッ」


 いや待った!ストップたぬき!


 そもそもこの作戦は、犠牲者無しで円満にサンクがジャック・サマー……ああ、もういいや縮めてジャックで!で、そのジャックとの婚約を解消するためのものだったはず!


 今僕が暴れたら、多数の死傷者が出ること間違い無し。


 僕賢い!


 えらい!よく踏みとどまった!


 「貴君は玲……いえ、サンク様、のご友人ですか?」


 へ?


 「うん、まあ、そうだよ……えへへ、少しばかり照れくさい……ふふ」


 いやあ、照れるなあ……なんか友達ですって改まって言うのって、ちょっとにやにやしちゃうっていうかあ。


 「なるほど。スキルスイッチ[ルクソリア]。それでは、どのようなご用件でこちらに?」


(スキル[ルクソリア]

効果…対象の心を開く。恋愛竜フラウの寵愛を受けたスキル。

SP…50

取得条件…恋愛竜フラウを食らう。)


 ん、んー?なんか怪しい気が……ん、でも、うん、どーでもいいや。


 頭にもや、が。かかって。


 「え~。そのお、僕のと、も、だ、ち、のサンクのためにい、と、も、だ、ち、としてえ、頑張ろうかなあって、えへへ」


 うふふなんだかくねくねしちゃう。

 友達の部分を強調しておこう……あれ、サンクと僕って友達だよね、いいんだよねそれで。


 「では、ご友人である貴君が人(・)質(・)に取られたとあれば、サンク様は私(わたくし)に目を向けてくださるのでしょうか。」


 ……。

 …………は、い?


 人質じゃなくて狸質(たぬじち)だろうという到底見当違いなツッコミをするジュンが頭の中に出てきたけど、それは置いておいて。


 なんだって?


 「ははは、冗談ですよ。ご安心ください。」

 「あ、そうなの?なーんだ。びっくりしたあ。」


 やめてよねー。もう。

 あ、そういやこの人だれだろう。


 ……もしかしてだけど、ジャック・サマーじゃないよね。


 「……あの、ジャック・サマーさんですか?」

 「いえ、私(わたくし)の名前はジャック・スライスです。以後お見知りおきを。」


 わかった。見知っとく。


 「じゃあ、サマーさんはどこに居るか知ってる? あの、サンクの婚約者の。」

 「サンク様の婚約者は私(わたくし)ですよ?」


 ……サンク・サマー?……サンク、様?

ジャック、様!?


 あー……名前、間違えてたなー。そーだよねえ、スライス家とか言ってたもんねえ。サマー家じゃないよねえ。まったくもってだめたぬきだよねえ。


 あはははは、と乾いた笑いが半開きの僕の口からこぼれる。ああ。悲しきかな、僕の記憶力と読解力。


 「ところで、貴君のお名前をお聞きしても?」


 その心(・)地(・)の(・)良(・)い(・)澄んだ声を聞いていたら、なんだか体がぎゅってしてたのがほわほわになって、心がぎりぎりしてたのがやわやわになった気がした。

 名前を聞かれたら、自己紹介しなくちゃね!


 「あ、えー、こほん。マジックオープン![たぬき変身]!

ぬ~~~~~~でぇいっばふっ!僕の名前はっ木隠来羽(こもがくれらいう)!らいうって呼んでね!」


 今回はよりひどく顔面を地面に打ち付けちゃったな……鼻血出てないかな?いちおうこれでもめすたぬきだから……顔はちょっと。やっぱあれかな。勢いが足りなかったか。


 「わかりました。では、どうぞこちらへ。」


 へ!?これがオトナのエスコート!?

 ジャックは僕を優しい目で見ながら、屋敷の方に誘導する様に手を動かした。もう片方の手は、昨日サンクと踊った時にサンクがしてくれたみたいに、僕に向かって仰向けになっている。


 サンク……? えっと。僕、ここに何しに来てたんだっけ……。


 「あ、でも、知らない人にほいほいついてっちゃだめだっていうし……。」

 「クッキーも、ケーキも、シュークリームも、ハンバーグもあります。もちろん貴君が望めば、カレーでもなんでも出させましょう。」


 僕のお腹がぐうっとなった。そうだった。ここんとこ貧しいせいで、やっすいお店とかで硬くて味気なくてゴムみたいな肉しか食べてないんだった。あと道端の草とキノコ。あとフューが調理してくれるモンスター。


 はんばーぐ……かれー……とんかつ……もやし……!


 「行きます!」

 「はい。ぜひいらしてください。」


 いい人だよこの人!もやしくれるっていうし!


 なんか頭にピンクのもやかかった感じがするし?フラウの前に来たみたいな甘ったるい香りがするような気もするけど!なんかひどく素直な気持ちだけど!まあ、良い人だよこの人絶対!絶対に!百発百中!



スライスは良い人じゃないです。

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